89歳で博士号を取得。20年かかって夢を叶え「人生で最も喜ばしい」

70歳に近い年齢でキャリアを終えた時、もう一度学生に戻って夢を追うことを決めた

「夢を追いかけなさい」――89歳のマンフレッド・シュタイナーさんがその言葉に従ったのは、70歳近くになってからだった。

そして9月、シュタイナーさんは約20年かけて物理学での博士号を取得し、10代の頃からの夢を叶えた。

シュタイナーさんは 「子どもの頃からの夢でした」「ずっと物理学者になりたいと思っていた」と喜びを語っている

マンフレッド・シュタイナーさん
マンフレッド・シュタイナーさん
via Associated Press

10代、物理に心を奪われる

現在アメリカ・ロードアイランド州に住むシュタイナーさんは、オーストリアのウィーンで生まれ育った。

物理に興味を持つようになったのは10代の頃で、アルバート・アインシュタインとマックス・プランクついて読み、物理学者に憧れたという。中でも物理の「正確さ」に強く惹かれた

しかし、シュタイナーさんが高校を卒業したのは戦後の混乱期。生き抜くためには医学を学んだ方がいいと、叔父と母から言われた。

シュタイナーさんはその言葉に従い、物理ではなく医学を選択。1955年にウィーン大学で医学士の学位を取得した後、アメリカに移住してタフツ大学やマサチューセッツ工科大学で血液学や生物学の研修を受けた。

その後、ブラウン大学で血液専門医としての職を得て、1978年には同大学の教授に。1985年から94年まで医学部血液内科長を務め、2000年に医学のキャリアを引退した。

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70歳、夢を追う

医学の道に進んだシュタイナーさんだが、物理学を学びたいという思いは消えなかった。

約30年の医学のキャリアを終えた時、シュタイナーさんの年齢は70歳に近かった。それでも、物理を学びたいとマサチューセッツ工科大学に学生として戻り物理学の授業を受講。大学院は、通学時間を短くするためにブラウン大学に編入した。

健康上の問題を抱えていたシュタイナーさんは自分のペースで学び続け、そして2021年9月に論文の審査に合格した

博士号取得が決まったことについて「やり遂げることができました。人生で最も喜ばしい出来事です」とAPに語っている。

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89歳、夢を追うことを勧める

10代から夢見ていた物理学者だが、シュタイナーさんにとっては博士号取得はゴールではない。

今後も研究を続けるつもりであり「まもなく90歳になりますが、物理学を死ぬまで続けたい」と語っている

70歳で夢を追い始めたシュタイナーさんは、若い世代に自分のやりたいことをやって欲しいと願っている。

「若い人たちには、なんであろうと夢を追うことを勧めます。そうしなければ、必ず後悔します」

そしてその気持ちは、若者に対してだけではない。シュタイナーさんは自分と同じ高齢の世代に向けて、次のように語る

「もし夢を持っているなら、それを追い求めた方がいいと思います。言葉にしたことがないかもしれないし、潜在意識の下に埋もれている夢かもしれません。大切なのは高齢になってからの日々を無駄にしないことです。高齢の人には多くの知力があり、それは若い世代にとって利益になります。年齢を重ねた人たちには経験があり、多くの場合歴史は繰り返します」

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