ラグビーW杯、日本代表優勝の夢はいかに

初めてのアジア開催、地元日本開催…として大いに盛り上がっているラグビー・ワールドカップもいよいよ、日本代表のベスト8進出を賭け、大詰めだ。
TOYOTA, JAPAN - OCTOBER 05: Michael Leitch of Japan thanks to Japanese supporters during the Rugby World Cup 2019 Group A game between Japan and Samoa at City of Toyota Stadium on October 5, 2019 in Toyota, Aichi, Japan. (Photo by Kaz Photography/Getty Images)
TOYOTA, JAPAN - OCTOBER 05: Michael Leitch of Japan thanks to Japanese supporters during the Rugby World Cup 2019 Group A game between Japan and Samoa at City of Toyota Stadium on October 5, 2019 in Toyota, Aichi, Japan. (Photo by Kaz Photography/Getty Images)
Kaz Photography via Getty Images

ラグビー・ワールドカップ日本開催100日前イベントに出席した際、元日本代表の五郎丸歩さん(現・ヤマハ発動機)は優勝予想について訊ねられると、力強く「日本」と答えた。するとメディアやスポンサーが集まった会場から笑いが漏れた。

五郎丸さんはすかさず「今、笑いましたね。でも前回大会、誰が僕らが南アフリカに勝つことを想像しましたか」と畳み掛けた。会場はしんとなった。五郎丸の言葉がまったく嘘ではなかったと証明するかのように、日本代表は快進撃を続けている。

初めてのアジア開催、地元日本開催…として大いに盛り上がっているラグビー・ワールドカップもいよいよ、日本代表のベスト8進出を賭け、大詰めだ。

それにしても感慨深い。

日本開催決定がなされたのは2009年7月28日と10年も前のこと。

これはイレギュラーに2015年大会開催地と同時に決定されたからだ。日本ラグビー協会など関係者以外、これに実感を持てたメンバーはいなかっただろう。後に組織委員会が発足、東京外苑前にある秩父宮ラグビー場、右手のプレハブで活動が始まる。

2015年、本大会の日本国内エージェンシーである電通社内にさえ「ラグビー部」という組織が存在しなかった時期、日本における開催都市が発表される運びとなった。発表はラグビーの国際組織「ワールドラグビー」が本拠地を置くアイルランド・ダブリンで行われた。

私は組織委から請け負い、ダブリンに向かった。総会が開かれるウエストベリー・ホテルに初めて入ったのは2月12日のこと。ワールドラグビーの広報、ホテル・スタッフそして中継を依頼したNHKのメンバーと打ち合わせを重ねた。

27日に再びダブリンに戻り、迎えた発表当日の3月2日、同ホテルのボールルームから東京・明治記念館へと新国立競技場を含む12開催都市発表の映像を届けた。ダブリンは朝から雪がチラつき、用意した衛星中継車に影響がないものかと肝を冷やしたのもちょっとした思い出だ。

同年、同じく明治記念館では2015年のイングランド大会に向けた日本代表決起集会が開かれ、あの平尾誠二さんの姿もあった。7月だったと記憶している。

私よりも2つ年上である平尾さんを目の当たりにし「この年齢でこの格好よさは卑怯だな」と思ったほどだ。それほどの体躯と凛々しさを兼ね備えていた。

翌年10月、急逝の報を耳にした際は「ありえない」と漏らした。癌が見つかったのは15年の秋だったとされる。ラグビー関係者なら誰もが、今大会の日本代表の躍進を、平尾さんに見せたかったと思うことだろう。

時効だろうから告白すると、この集会の後、隣の会場で森喜朗元首相を中心としたラグビー議員連の集会も行われた。メディアには非公開。森元首相は「みなさん、新しい国立競技場でついにラグビー・ワールドカップが行われるんです!」と嬉々として乾杯の音頭を取っていた。

新国立競技場の設計案撤回が安倍首相から発表されたのは、このわずか一週間のちのこと。組織委は、代行地決定へと奔走することになった。

新国立と東京スタジアムの収容人数の差異から、220万枚をさばいた2015年大会と異なり、今回は180万枚のチケットしか用意できず、大会の興行収入が危ぶまれた。だが、この盛況により、ほぼソールドアウト。関係者は胸をなでおろしていることだろう。

「ラグビーのワールドカップ日本開催、いったいどうなってしまうんだろう」と気を揉んでいたひとりとして、日本代表の躍動も加わり、本当に感慨深い大会だ。

しかし現実は、今のところ、結果は何ひとつ変わってはいない。

2015年の前回大会も誰も予想すらしなかった、南アフリカ相手に大金星を挙げた。それのみならず、同組のサモア、そしてアメリカにも勝ち、日本はW杯の大舞台で3勝を挙げた。

だが、スコットランドに45対10の大差で屈し、ボーナスポイントの差で、ベスト8入りを逃した。

前大会、日本が入ったプールBの順位は、1位が南アフリカ、2位がスコットランド、3位日本、4位サモア、5位アメリカとなる。

今回、日本がスコットランド戦でボーナスポイントを献上し負けた場合、「おそらく」だが、プールAは、1位アイルランド、2位スコットランド、3位日本、4位サモア、5位ロシアと、恐ろしいほど似通った順位となる。

もちろん、日本がスコットランドに勝てば、日本が1位通過。負けたとしても7点差以内であれば、ボーナスポイントの差で日本が2位に入る。

日本相手にあれだけ粘りを見せたサモアを、スコットランドは零封している点も侮れない。

日本代表選手の心に隙があるとは到底思われないが、13日にラグビーの歴史が変わるか。ワールドカップ、日本優勝の夢を、まだ観続けたい。

注目記事