LGBTQ「隠して生きて。そちらの方が美しい」幸福実現党所属の下野市議が発言。「差別するつもりない」と釈明

当事者がひっそり生きているのはいいが、存在を公的に承認する制度には反対――この姿勢に対し専門家は「性的マイノリティが直面している差別や抑圧を強化する」と指摘します

栃木県下野市の石川信夫市議(幸福実現党)が2022年6月、市議会の一般質問で、LGBTQの人たちについて「できたら静かに隠して生きていただきたい。その方が美しい」などと差別的な発言していたことが分かった。

石川氏はハフポスト日本版の取材に対して、「わざわざ公にしなくても良いのでは、という意味だった。差別するつもりはない」と釈明している。

石川信夫市議(栃木県下野市公式サイトより)
石川信夫市議(栃木県下野市公式サイトより)
栃木県下野市公式サイト(https://www.city.shimotsuke.lg.jp/0211/info-0000007757-0.html)より

「隠した方が美しい」

問題の発言があったのは6月10日の市議会定例会。石川氏は、栃木県が9月から導入する予定だった性的マイノリティカップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ宣誓制度」について反対の立場から質問した。

その中で石川氏は自らを「差別主義者ではない」と断ったうえで「男性同士で同居しようが、女性同士が同居しようが、それは一向に構わないと思います。ただ、こうした制度を設けて社会に認めさせる、こういったことが果たしていいのかどうかということに対しては、大変疑問を持っております」と話した。

そして、LGBTQの人たちについて「静かに隠して生きていっていただきたいなっていうふうに思うんです。そのほうが私は美しいと思いますし、社会に混乱が起きないというふうに思います」と述べた。

これに対し、答弁に立った下野市の広瀬寿雄市長(当時)は、「いまだ多くの性的マイノリティーの方々が、その人権を守られ、心から安心して暮らせる状況ではないという現状が見受けられます」との認識を示したうえで、「パートナーシップ宣誓制度」について「誰もが自分らしく生きることのできる社会の実現を目的とする取組の一つとなる」と答えた。

石川氏は再び質問に立つと、市長に対し次のように疑問を呈した。

「市長は、人権と言いますけれども、人権の上に神権っていうのがある、神様の権利があるんだっていうことを忘れちゃいけません。差別をしているんじゃない、区別をしたんだと、男女を区別をしたんだということ、これを忘れてはいけない」

そのほかにも「様々な社会問題が起きています。男性が女性トイレに入るとか、お風呂に入るとかっていうふうな問題が起きています」などと発言した。

広瀬氏は「いろんな人の立ち位置を、立場を、考え方を認めることによって社会が進む」などと応じた。

石川氏は「幸福実現党」の県本部代表で、今年4月の市議選で2期目の当選を果たした。

議会での発言の意図などについてハフポスト日本版が電話で聞いたところ、石川氏は「議会でも言っているように(LGBTQの人たちを)差別するつもりの発言ではない」と答えた。

「隠して生きてほしい」という発言が差別やいじめを助長するのではないか、という記者の指摘には次のように回答した。

「制度として認めさせるまでやらなくてもいいんじゃないですかということを言っています。隠してというか、静かに人生を送られたらいいんじゃないか、わざわざ、そういうものを公にしなくてもいいんじゃないですかってことを言ってるんです」と述べた。

日本では、法律上の性別が同じ者同士の結婚は認められていない。婚姻平等の問題についても、「(結婚を認めてほしいという人も)いますけれど、そこまでしなくてもいいんじゃないですかっていうのが、私の考えです」と述べた。

宗教的な理由から反対

石川氏は政治団体「幸福実現党」の県本部代表だ。幸福実現党はLGBTQの権利擁護に否定的な立場をとっており、2022年3月には『同性パートナーシップ条例』が東京都などの自治体で広がりを見せていることに対し「同性婚の法制化に道を開く可能性がある点、極めて慎重でなければならない」とする主張を公式サイトに掲載している。

この記事では、「宗教政党として、LGBTQへの行き過ぎた配慮や同性婚の法制化は神仏が男女の性を分けられた本来の趣旨から外れてしまうと考えています」とも説明している。

石川氏もパートナーシップ制度を含めたLGBTQの権利擁護政策に反対しており、ハフポスト日本版の取材に対しても「宗教的な背景からだ」と認めている。

差別や抑圧を強化する

当事者がひっそり生きているのはいいが、その存在を公的に承認する制度には反対、と主張する石川議員。

一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣氏はこの姿勢について「性的マイノリティに対する差別や抑圧を助長する発言だ」と指摘する。

「政策へ直接影響する可能性がある議員という立場で、『静かに隠して生きていただきたい』と発言することは、まさに性的マイノリティに対する抑圧に加担する行為だと思います」

「これは、『あなたたちは公的に認められるべきではなくて、影で生き続けるべき存在だ』と言っているようなものです。差別や偏見を解消するのではなく、むしろそのまま被害を受け続けるべきだ、というような態度で、非常に問題だと思います。議員としての資質が問われるべきです」

「昨今、旧統一教会が注目を集めていますが、今回の石川議員の発言も、『宗教』が関係してくるものだと思います。 いつまでも性的マイノリティの権利保障が進まない背景に、こうした強固に差別的な認識を持ったさまざまな宗教団体と政治の繋がりがある、という現状に目が向けられてほしいと思います」

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