使徒襲来?夜空に出現した「スプライト」の撮影成功。「地球が襲われてるみたい」の声も【画像集】

撮影した藤井大地さん「これまでも何度も狙っていて、今回は久しぶりに視野の中に収まりました」
藤井大地さんが11月12日未明に撮影に成功した「スプライト」
藤井大地さんが11月12日未明に撮影に成功した「スプライト」
Twitter/dfuji1

夜空に突如として出現した真っ赤な光。人や動物の形のようにも見える。その瞬間を撮影した写真がTwitterに投稿され、「地球が襲われてるみたい」「エヴァンゲリオンに登場する使徒のようだ」と話題になっている。

■落雷と同時に発生する「スプライト」とは?

『天気』第53号に掲載された図表より。スプライトの発生高度などが示されている
『天気』第53号に掲載された図表より。スプライトの発生高度などが示されている
日本気象学会

これは、落雷と同時に発生する発光現象「スプライト」だ。落雷と同時に雷雲から宇宙空間に向かう放電により、地表上空50km〜90kmで窒素分子が発光する現象だ。発光時間は0.1秒足らずのため、目視するのは困難だという。

日本気象学会の機関誌『天気』第56号の記事によると、スプライトの存在が確認されたのは1989年。ミネソタ大学の研究チームがロケット搭載観測機器のテスト中に偶然撮像に成功したという。シェイクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」に登場するいたずら好きの妖精にちなんで「スプライト」と呼ばれるようになった。落雷と同時に発生する発光現象はスプライト以外にも「巨大ジェット」や「エルブス」なども見つかり、『天気』第53号の記事に図表が掲載されている。

■「未知への扉はいつでも誰の上にも開かれています」と撮影者

今回、スプライトの撮影に成功したのは、平塚市博物館学芸員の藤井大地さん(@dfuji1)。これまでも関東地方の上空に出現した火球の動画など、数々の天体撮影に成功している。

11月12日午前3時すぎに、神奈川県平塚市内の自宅から望遠レンズを北西の空に向けて撮影した。この時間帯は北陸地方で雷雲が発生していた。中部電力パワーグリッドの公式サイトのデータでも、石川県沖の日本海で落雷が発生していたことが確認できる。

使用したカメラはソニーの「α7S」。シグマのレンズ「105mmF1.4」を装着した。シャッタースピードは1/30秒、ISO40000の超高感度だったという。ハフポスト日本版の取材に藤井さんは「望遠では狙った場所になかなか出現しません。これまでも何度も狙っていて、今回は久しぶりに視野の中に収まりました」と振り返った。スプライトの目視は難しく、肉眼で光っていることはわかったが、形までは分からなかったという。

スプライトの写真に2万件を超える「いいね」が集まるなど多くの反響があったことについて問われると、「見上げればそこは宇宙で、未知への扉はいつでも誰の上にも開かれています」「ぜひ皆さんに空や星に興味を持っていただけると嬉しいです」と話していた。

■撮影した藤井さんとの一問一答

——意図的にスプライトの撮影をしたのでしょうか。それとも偶然、スプライトの発生の瞬間を押さえられたのでしょうか?

意図的に撮影しました。自作の広角カメラを運用しており、動体検知で平塚と富士で撮影し、三角測量の原理で流星の高度や軌道を決定しています。このカメラからだいたい発生している位置を確認し、望遠カメラを向ける方向を決定しました。実はもっと高倍率の望遠鏡でも狙っていたのですが、残念ながら視野の中には入りませんでした。

——スプライトは落雷と同時に発生していましたか?

北陸地方で同時に発生していました。

——スプライトの発生時間は0.1秒以下と言われています。藤井さんご自身は今回、肉眼でも観測できましたか?

肉眼で光っていることはわかりましたが、形はわかりませんでした。ただかなり明るいものなので、これまでにスプライトの形を見た、という方もいらっしゃるようです。

——藤井さんはこれまでも何度かスプライトを撮影されていますが、今回の撮影で特に苦労した点はありますか?

広角の動体検知では写るのですが、望遠では狙った場所になかなか出現しません。これまでも何度も狙っていて、今回は久しぶりに視野の中に収まりました。

——今回の投稿に1万6000件も「いいね」が集まるなど反響を呼んでいることをどう感じていますか?

身近にスプライトが見られることに驚かれた方が多かったようですね。スプライト以外にも面白い天文現象や気象現象はたくさんあります。見上げればそこは宇宙で、未知への扉はいつでも誰の上にも開かれています。スプライトはカメラがないとわかりにくいですが、肉眼でも楽しめるものもたくさんあります(11月19日は月食が控えています)。ぜひ皆さんに空や星に興味を持っていただけると嬉しいです。

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