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2019年04月27日 13時11分 JST | 更新 2019年04月27日 13時12分 JST

“こうあるべき”を超える世の中になってほしい。26歳の編集長が問いかけたいこと

「連帯」を表明することが、世の中を少しずつ変えていくと私たちは信じている。

桜色が街から消えたと思ったら、代々木公園にたくさんの虹色がひしめき合う季節がやってきた。

東京では厳しい寒さが終わり、裸足にサンダルで夜のコンビニにも行てしまうようなちょっと「チルい」4月の終わり、私たちは“平成最後の東京レインボープライド”にはじめて出展する。

私たち、というのはメディア「Palette(パレット)」の編集部で、普段はTwitterで性のあり方やフェミニズム、多様性について漫画で紹介させてもらっている。

LGBTQのためだけのメディアじゃない

「LGBTQのためのメディア?」とよく聞かれるのだが、私、編集長の合田がつくりたいメディアは、いわゆる「LGBTQ当事者向け」のノウハウやエンパワーメントを主題としたメディアではない。

「レズビアンが彼女を作る方法」や「ゲイバーデビューの心得」などについては既に先輩メディアが記事を書いているので、2018年に新参者として現れた私たちがそれと同じものをつくる必要はないと思った。

そして何より、セクシュアリティやジェンダーの問題において変化していかなければならないのは「当事者」以上に「まわり」だと思っている。「いや、甘い。多少肩身が狭い思いをしても当事者が自分次第でなんとかする問題だ。当事者がもっと強くなればいい」と考える人もいるかもしれない。実際に強く自分の力で道をひらいてきた方は、特にそう感じるかもしれない。

しかし「当事者」が苦しい思いをしながら、ときに偏見や差別を受け入れ独力で解決していこうとするよりも、多様な人が自分らしく過ごしやすい、柔軟で強い社会をつくっていく方がたくさんの人にとって良いのではないかと思っている。そして、掘り下げれば同じ課題にぶつかる人同士の「連帯」によってそれはより早く、より良く、変わっていくのではないかと思う。

今回はその「連帯」について考えていることを書いていきたい。

「みんなちがって、みんないい」。頭ではわかっているけれど……

冒頭の漫画でも描いたとおり、私には20代のレズビアンの友人が多く、女性同士のカップルの知り合いもたくさんいる。そして彼女たちからよく聞くのが「レズビアンやバイセクシュアルの女性で、定職についていない人も多い」ということだった。

実際に自分をLGBT等の性的マイノリティに該当すると感じている人と、シスジェンダー・ヘテロセクシュアル(心の性と生まれたときの身体の性が一致している人、異性愛者の人)だと自認している人との間には賃金格差があるといわれている。※

私は学生時代から「就職活動のために有利な大学へ行き、いい大学に受かるために塾や高校の授業でいい成績をとり、内申表を良くして…」という“就職からの逆算のようなルート”の存在を感じている。

そのルートについてはここでは意見を述べないが、「自分とは異なる存在」に対する無意識の偏見や差別などが起こりやすい学校生活で「生きづらい」と感じてしまう「LGBTQ当事者」のなかには、学校生活にうまく馴染めず、この“就職からの逆算のようなルート”を通らない人も少なくないだろう。

「みんなちがって、みんないい」と小学校ときに習ったし、頭では理解しているものの、ここで生まれた溝が巡り巡ってこの賃金格差を引き起こす理由のひとつになっているのかもしれない。

また、レズビアンの友人カップルの所得が低いのは、彼女たちが「女性」だからという理由もある。これはシスジェンダー・ヘテロセクシュアルの女性でも同じことだ。

家事や育児がまだまだ女性のものだと考えられているなか、女性のビジネス現場での活躍は男性のそれと比較してもまだ小さい。

漫画に描いた既婚者の友人は「今後の出産や育児が理由で辞めてしまいそうだから」と、責任を持たせてもらえなかった。彼女が実際に結婚するか、子どもを持つか、そして育児はどのようにパートナーと分担するかには関係なく、そこにあるのはただ「彼女が女性だから」という理由だった。

「Palette(パレット)」は、どんな性のあり方(身体的に女性として生まれる、とか、同性愛者であるなど)の人であっても平等に扱われる世の中を目指している。それを信念にメディアを運用してきた。

その文脈において、たとえば「ゲイ」であることを理由に差別を受けている人と「女性」であることを理由に所得が低い人は連帯できると考えている。「Palette(パレット)」はそういった、掘り下げると同じ課題にぶつかる人同士が、自分だけでなく互いの支援者になり得る場所だとも思っている。

“こうあるべき”を超えていきたい

自分で会社を立ち上げた女性たちの中にも、女性ということを理由に男性とビジネスをすすめるのが困難だったり、セクハラを受けたり、まるで重い鉛の下駄を履かされているような思いで前進している人もいる。

こんなことを書くと「いや、それは甘い。実力がないことを、女性で生まれたことのせいにしているのではないか」と思う人もいるかもしれない。「私も女性だけど、全然差別を感じないよ」と言う人もいるかもしれない。

それぞれ環境も関わる人も感じ方も違うが、実際に「女性だから●●」「男性だから●●」という偏見に基づいたやりとりは存在する。でなければ、編集部の仲間が身体測定のときに「あなたは女性だから、事務職ですかね?」とバイアス盛り盛りの質問されることはなかったと思うし、同性愛の元同僚が異性愛者だと決めつけられて「風俗で楽しまなきゃ男じゃない」と言われることもなかったと思う。

今まで差別に気がつかなかった人やそれを何とも思わなかった人が、まるで「差別などどこにもない」というような発言をすることは、差別への加担にもなり得る。どれだけの差別者を擁護し、被差別者をいなかったことにしてしまうかわからない。

「Palette(パレット)」編集部のメンバーは6人。愛すべき仲間が集まっているが、当然あり方は人それぞれ違う。全員が「LGBTQのいずれか」というわけでもない。毛先を緑色に染めているフェミニスト、障がいを持つ美術大学生、キャラクターに恋をしているイラストレーター、起業家で同性愛者、など。

ただ、私たちは同じ想いを持っている。「自分も“一般的”ではないのかもしれない。しかし、自分だけじゃなく誰もが、生きていく中で感じる偏見や差別、そして世の中の“こうあるべき”を超えていけるような世の中になってほしい」と願っている。誰かが偏見や差別にさらされているときに他人事ではいられない、アライ集団なのだ。

これが私たちが大切にする「連帯」であり、メディアの軸だったりする。

もし「Palette(パレット)」のコンテンツに触れることがあったら、この「連帯」の話を思い出していただけると嬉しい。直接は自分に関係がないことでも、実は掘り下げるとあなたに関係ない話ではないかもしれない。そしてその「連帯」を表明することが、世の中を少しずつ変えていくと私たちは信じている。

筆者

 「Palette(パレット)」は東京レインボープライド2019で、似顔絵やグッズを販売予定。詳細はこちら。

【参考】
※特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ 共同研究:国際基督教大学 ジェンダー研究センター(略称:CGS) 『LGBTに関する職場環境アンケート2015』より