これからの経済
2021年02月22日 07時26分 JST

「毎年買って、毎年捨てる」をいつまで続けますか? アパレル業界が挑む「安さ」以外の価値

大量生産・大量消費が問題視されるファッション業界で、「新しく作って、売る」以外の価値創造に挑むブランドを紹介します。

作って、売るーー。アパレル業界の当たり前を覆すようなビジネスモデルが、芽吹きつつある。 

ユニクロを率いるファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、大量に作って売るファッション業界のサイクルについてこう提案した。

「一番大事なことは、自分の気に入った服を長く愛用するということ。今年買った服が去年、2年前に買った服に合うことなんじゃないか」

「そういうことを、小売業、ファッション産業と一緒にやっていきたいと考えている」

 

大抵のものはポチッとすれば手に入れられる時代。大量生産・大量消費が問題視されるファッション業界の片隅で始まっている、「安さ」以外の価値創造に挑むブランドを紹介する。

 

セールが常態化する中、10円単位の工賃交渉に意味はあるか?

10YC提供
10YCのメンバー(左端が下田さん)

「『新しく作って、売る』だけではないビジネスのモデルが広がれば、大量に作ってセールで売るというファッション業界の仕組みが変えられるかもしれない」

『10年着続けられる服』をキーワードに、2017年に創業した10YCの代表、下田将太さんはこう語る。

創業前には、大手アパレル企業と縫製工場を仲介する仕事をしていたという下田さん。

大きなブランドと取引すれば、成績も上がり、動く金額も大きい。仕事は純粋に「楽しかった」と振り返る。

だが、ある時を境に自分の仕事に疑問を感じるようになった。

買ってもらうことばかり気にしていて、買ってもらった後のことを考えて仕事をしていただろうかーー。

下田さんは言う。

「僕らは、現場で十円単位の工賃の交渉をするんです。でも、そうやって作られた商品は、お店ではけっこう頻繁にセールで1割、3割、と値引きして売られている。自分がやっている工賃交渉は本当に正しいのだろうか、と考えるようになりました」

作り手、売り手、買い手ーー。3者が豊かになれる仕組みはないだろうか。

 

服の適正価格を知っていますか?

「生地4237円、裁断・縫製4431円、附属491円 製品コスト9165円 販売価格19095円」

10YCのオンラインショップには、一つ一つの商品にこんな数字が掲載されている。製造の各工程のコストを公開しているのだ。

10YC公式サイト
10YCの商品ページでは、サプライチェーンの情報や各工程のコストを公開している。

当然、サイズが異なれば生地や縫製の値段が変わってくるため、同社ではサイズが上がれば値段もアップする。

例えば、フード付きスウェット「深緑 / 10YC Zipup Hoodie生地」。Sサイズの生地や縫製などの製品コストは9165円で、販売価格は19095円。染色や縫製を行った工場も記載されている。

下田さんは「知ってもらうことで、良くなるかもしれない」と期待する。

「服を作るのにどれくらいコストがかかるのか。知って納得した上でお金を払ってくれる消費者が増え、自分たちのような発注元が増えれば、工場は工賃交渉をするようなブランドを断っても生活ができるようになります」

10YCが公開している工場には、同じ意識を持つ別のブランドからも問い合わせがいくという。

「そうやって、業界全体が変わっていけばいいなと思います」

 

ファッション業界の仕組みを変える

 今、10YCが力を入れようとしているのが、いったん売った服の「リフォーム」だ。

10YC公式サイト
10YCのカラーリフォームの例

きっかけは、店先での会話だったという。

「サイズアウトで着られなくなったというお客さまがいて、『どうするんですか?』とお聞きしたら、『メルカリかなぁ』と…。自分たちに返してくれたら、何かできそうだなと思ったんです

もともと、10YCには色あせや黄ばみ、染みなどが付いた服を染め直すカラーリフォームのサービスがある。

さらに、10YCで買ったけれど着なくなった服を下取りしてリメイクし、古着としてもう一度販売するーーというビジネスモデルも考えている。

「新しいビジネスモデルが広がれば、ファッション産業全体の仕組みが変えられるかもしれない」

下田さんはそう期待する。

 

コロナ禍で消費者意識も変化

無印良品
「ReMUJI」

「良品計画」(本社・東京)が展開する無印良品も、「服を長く、大事に着てもらう」ことを掲げている。

2015年には、回収した古着のうち状態のよいものを仕分け、色を染め直すことで新しい商品として再生する「ReMUJI」をスタート。「回収された古着の中に、まだ着られるものがあったことに気づいたのがきっかけ」と担当者は語る。

手を加えることで、着られる古着はReMUJIとして再生し、それが難しいものは服の原料にリサイクルして活用する。

無印良品は「アンチ消費社会」をコンセプトに、地球環境や生産者の暮らしに配慮した自然素材と生産工程のムダを省いた「わけあって、安い。」商品にこだわってきた。

コロナ禍で消費者の変化も感じているという。

担当者は「安いから、という理由でうわついた消費をしない。かしこい消費をしたい、という気持ちが芽生えているのではないかと思う。そして、その消費行動から起きる環境への影響についても見つめ直す機会が増えているのではないか」とみている。

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