「見境ない絨毯爆撃みたい」打首獄門同好会、音楽業界への政府対応に苦言

「皆真面目に技術と経験を身につけて仕事に就いてる人達で、家もあれば守るべき家族もいる、真っ当な社会人ですよ」
打首獄門同好会:大澤敦史(ギター・ヴォーカル、中央)、河本あす香(ドラム・ヴォーカル、左)、junko(ベース・ヴォーカル、右)
打首獄門同好会:大澤敦史(ギター・ヴォーカル、中央)、河本あす香(ドラム・ヴォーカル、左)、junko(ベース・ヴォーカル、右)
Kaori Nishida / HuffPost Japan

「どうも行政主導の規制においてまで変化の兆候が感じられないのは、それはどうなんだ」

緊急事態宣言が発令されたことを受け、人気バンド打首獄門同好会が、政府の対応を疑問視するツイートを投稿。コロナ禍で苦しい状況に置かれる音楽業界の関係者やファンの間で共感が広がっています。

打首獄門同好会のツイートは、ギターヴォーカルの大澤敦史さんが担当しています。

3回目となる緊急事態宣言の初日を迎えた4月25日、バンドの公式ツイッターで、「昨日今日の自分の心情と妙にリンクする、興味深い記事がありましたので紹介しつつ せっかくなので、あらためて個人的に思うところを書いてみました。読みたい人だけ読めばいいじゃない、的な長文テキスト画像貼り付けスタイル。」と投稿しました。

ツイートには、新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に陥る音楽・エンタメ業界の現状や、感染拡大防止の対策を重ねたにもかかわらずその取り組みが評価されていない問題などを報じる記事が共有されていました。

大澤さんはツイートで、今の思いをつづった2枚の画像を投稿しました。

2020年に開催した公演や、21年のツアー公演中、感染者やクラスター発生の報告がないことについて「そりゃ我々とて、感染対策には徹底して万全を尽くしてきたという自負はある。だがそれにしたって、この結果は来場者皆様の理解と協力なくしては成り立たない。心から感謝したい。皆様、本当にありがとうございました」と感謝を述べました。

観客同士で必ず一定の距離を取り、マスク着用を必須とし、声をあげないよう感染防止策を徹底したことに「同じく苦境に立つ観光業界や飲食業界でもこれほど厳しい縛りは見ない」としつつ、感染防止という観点において「この方法論は正しかったと認めるほか無い」としました。

その上で、大澤さんは「ただ惜しむらくは、この実績がちゃんと世間にフィードバックされているかという と、残念ながらそこはまったく感じられない」とつづり、こう続けました。

どうも行政主導の規制においてまで変化の兆候が感じられないのは、それはどうなんだ。(中略)めちゃくちゃ良好な結果が出ている のに、なんかむしろ締め付け厳しくなってきてる気がするのはなぜなんだぜ

行政の対応策がだんだん見境ない絨毯爆撃みたいになってきて心配ですね。感染リスクの高いも低いも関係なくまとめて無双しちゃってる感あるもの

音楽業界で生計を立てる音響や照明、その他関係者の人たちを挙げて「皆真面目に技術と経験を身につけて仕事に就いてる人達で、家もあれば守るべき家族もいる、真っ当な社会人ですよ。来年お子さんが大学進学控えている会社員のお父さんとか全然普通にいます。彼らの生活を守らせてもらえないのは大変困る」と訴えました。

ツイートに対し、リプでは「激しく同意です」「自粛と一言で制限されている事に、それを仕事としている人間が多く居る事を忘れないで欲しい」「ライヴ関係者と参加者みんなが必死で心の支えを守ろうとしている」などの声が寄せられ、反響が広がっています。

コメント全文

大澤さんがツイートの投稿で共有したコメントの全文は以下の通り。

「新型コロナウイルスが憎いツアー」の2021年公演、おかげさまでファイナルを除く10本が無事に終了した。と言っても「感染対策」的な意味も含めて全て無事だったかどうかの結論は、終わって間もない公演もある分もう少し先になる。ただ少なくとも今のところ、2020年中の開催5本も含めて「感染者が発生」ましてや「クラスターが発生」などの報告は受けていない。素晴らしいです。皆様に拍手。

いや本当素晴らしい。大丈夫?実は何かあったけど誰か隠してるとかない?とか思わず疑ってしまうくらい。しかし各公演とも動員は数百人、もし本当に集団感染とか起こっていたとしたら人数もそれなりの規模になるはず。SNS全盛の世に噂も立てず我々の目をもかいくぐり、口裏を合わせ隠し通すことなど不可能だろう。実際に本当に何も起こっていない、と考えるのが自然だ。素晴らしいです。

そりゃ我々とて、感染対策には徹底して万全を尽くしてきたという自負はある。だがそれにしたって、この結果は来場者皆様の理解と協力なくしては成り立たない。心から感謝したい。皆様、本当にありがとうございました。

そもそも2020年の春、まだほとんど感染対策の具体案が示されなかった時期に、たしかにライブハウスで集団感染は発生した。今思えば「飛沫」が大きな引き金となる性質上、こと音楽の現場は特に相性が悪すぎた。結果論ではあるものの、あれは起こるべくして起こってしまったことだった、というのは認めざるを得ない。

ただその代わりと言ってはなんだが、この業界は実に早く、厳しく、キッチリと規制のメスが入ることとなった。必ず一定の距離を取り、親友同士だろうが恋人同士だろうが席は離す。マスク着用を必須とし、声なんて無論あげられない。そりゃまいったさ、同じく苦境に立つ観光業界や飲食業界でもこれほど厳しい縛りは見ないし、言ってしまえば内容的にウチの業界がイチバン相性悪い。

この制約に当初業界内は「いや、そんなんでは商売が成り立たない」と悲鳴をあげることになったが(まあ実際のところこの方法論では採算が取れないのが未だ悩みの種だが)だが我々はそれに承諾することにより、この状況下でも少なくとも経営は続け、来るべき夜明けまで業界の延命措置を続ける選択肢を得られたわけである。

そして。これがどの専門家の方により構築されたガイドラインなのか正確に存じ上げないのだが、結果的に「感染防止」という観点においては、この方法論は実に正しかったと感じる。認めざるを得ないのは複雑な心境だが、なにせ結果が出ている。実際に我々のみならず他アーティストのより大規模イベントにおいても、また類似したガイドラインを求められているスポーツ観戦などにおいても、その動員規模の大きさに関わらずクラスター発生の話は長らく耳にしない。正直もうちょいちょい「ちゃんと守ってもダメだった事件」が出てくるかもと覚悟していたが(それによりガイドラインの改正等が何度か発生するドタバタをも覚悟していたが)それすらも杞憂だった。

繰り返しになるが、こと「感染防止」という観点においては、この方法論は正しかったと認めるほか無い。ここまで見事に成功例を量産されてしまったら、否定する余地が無い。このガイドラインに基づいて運営されたイベント引っくるめたら、その成功例と呼べる人数はもう数十万人か、もしかしたらもうひとケタ多いかもしれない。もはや「人を集めても、やり方次第では全く問題ない」という新しい価値観 は、十分に立証されたと言えるのではないかと思うけどどうなんだろ。

ただ惜しむらくは、この実績がちゃんと世間にフィードバックされているかというと、残念ながらそこはまったく感じられない。実際、未だ「人が集まる」と言えば 「そんなことをしたら間違いなく感染が広がる」と答えをあげる人が大多数であろう。しかたない、普通に考えたらそうなる。正直なところ、ガイドラインに従ってきた側の立場にいても「価値観を覆された」くらいに驚いている次第だ。

だがしかし。ひとまずそういう一般的な認識が簡単に変わらないのは百歩譲るとして、しかしだ。どうも行政主導の規制においてまで変化の兆候が感じられないのは、それはどうなんだ。そもそも専門家を集めガイドラインを構築し、我々に遵守を求め、それに基づく結果が量産されるに至るまで、主導してきたのはあなたがた行政側ではないか。キチンと成果を出した側なんだから、キチンと結果をドヤ顔で広めて認識をアップデートしていってほしい。めちゃくちゃ良好な結果が出ている のに、なんかむしろ締め付け厳しくなってきてる気がするのはなぜなんだぜ。

というか、行政の対応策がだんだん見境ない絨毯爆撃みたいになってきて心配ですね。感染リスクの高いも低いも関係なくまとめて無双しちゃってる感あるもの。多人数の酒の席がヤバイって話から始まったのはわかるとして、いつのまにかお一人様だらけの全席カウンター牛丼屋まで制限くらってるのはどういう事なんだぜ。この様子じゃ、我々の業界の認識をあらためてもらうなど遠い話になりそうだ。

うんまあ、それじゃ困るんですけどね。音楽業界と言えばアーティストの事しか言及しない人は多いんだけど、実際は音響、照明、会場運営、事務スタッフ、関係者の方がアーティストの数より全然多いし、皆真面目に技術と経験を身につけて仕事に就いてる人達で、家もあれば守るべき家族もいる、真っ当な社会人ですよ。来年お子さんが大学進学控えている会社員のお父さんとか全然普通にいます。彼らの生活を守らせてもらえないのは大変困る。せっかく低リスクで運営できるシステム作りに従ってきたんだからさ、せめてそれで仕事できるようにしていってほしいですわ。よろしくお願いしますよほんとに。

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