観客いれた開催は「矛盾したメッセージ」 専門家の提言に組織委は?(東京オリパラ)

「無観客開催は、会場内の感染拡大リスクが最も低いので、望ましいと考える」という考えを示した。
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東京オリンピック・パラリンピックで観客をいれるのは、感染予防対策に協力する市民への「矛盾したメッセージ」になるとして、「無観客開催が望ましい」とする有志の専門家が提言書が6月18日に発表された。

提言は、新型コロナ対策に関する専門家ラウンドテーブル座長の岡部信彦氏や、政府の分科会の尾身茂会長ら、有志の専門家の連名。組織委員会と新型コロナ対策本部宛に出された。

提言では「ワクチン接種が順調に進んだとしても、7月から8月にかけて感染者および重症者の再増加がみられる可能性がある」と指摘。

「観客の収容方法等によって、テレビ等で観戦する全国の人々にとって、『感染対策を緩めても良い』という矛盾したメッセージになるリスクが発生する」と危機感を示した。

そのため「無観客開催は、会場内の感染拡大リスクが最も低いので、望ましいと考える」という考えを示した。

観客を入れる場合は、次の3点を考慮するよう求めた。

・観客数について、現行の大規模イベント開催基準よりも厳しい基準の採用

・観客は、都道府県を越えた人々の人流・接触機会を抑制するために、開催地の人に限る。さらに移動経路を含めて感染対策ができるような人々に限る

・感染拡大・医療逼迫の予兆が探知される場合には、事態が深刻化しないように時機を逸しないで無観客とする

提言は、観客を入れた状態で深夜帯の試合が実施されていることは、営業時間短縮や夜間の外出自粛を要請されている市民にへの「矛盾したメッセージ」となると指摘している。

こうした状況がテレビで伝えられることで、人々の警戒心を自然と薄れさせたり、感染対策への協力を得られにくくしたりするリスクがあると訴えている。

岡部氏は記者会見で、この点について、観客数を制限してスポーツやイベントが実施されている点も踏まえながら「五輪はスケールが違う。普通のJリーグやプロ野球とやり方も違う」と指摘。

「制限を持ってやっていくということをうまく説明をしないと、『片っぽで自粛を求めて、もう一方で人が集まって来る』という議論になる」と注意を促した。

提言書はオリンピックについて「規模や注目度において通常のスポーツイベントとは別格」と表現している。

組織委の中村英正MOC(メイン・オペレーション・センター)チーフは会見で「オリンピックが持つ価値を理由に自由に許されるということではなく、コロナ禍で大きな注目を集めるからこそ、より一層気をつけるべきだという責任が問われている」と説明。

「観客の数だけではなく、行動ルールも含めて丁寧に説明していきたい」と述べた。

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