地熱資源大国の日本。その活用が未来のエネルギーを支える一端となるか

日本のエネルギー自給率はわずか11.8%。ロシアによるウクライナ侵攻によって、改めて海外にエネルギーを依存する危うさが浮き彫りになっている。そんな中、現在注目されているのが地熱資源の活用だ。

ロシアによるウクライナ侵攻によって、改めて海外にエネルギーを依存する危うさが浮き彫りになっている。

日本のエネルギー自給率はわずか11.8%。もし軍事侵攻が終わったとしても、厳しい制裁が継続し混乱が長期化することは確実で、原油価格の高騰は来年にかけて日本の経済と家計を直撃するだろう。さらに、輸入化石燃料だよりの現状では「2050年カーボンニュートラル」の実現もおぼつかない。

そんな中、現在注目されているのが地熱資源の活用だ。温泉天国・日本といえば多くの活火山があり源泉も豊富。実はアメリカ、インドネシアに次いで世界3番目の地熱資源大国なのである。しかし、その活用はというと、わずかだ。そこにはどんな壁と可能性があるのか。

今回、BS11「報道ライブ・インサイドOUT」という番組の特番で、地熱資源の取り組みが行われている大分県と熊本県を取材した。

別府名物、地熱の蒸気で食材を蒸し上げる「地獄蒸し」
別府名物、地熱の蒸気で食材を蒸し上げる「地獄蒸し」
筆者提供

地球のマグマがボイラーとなる地熱発電

大分県別府市といえば蒸気が地面から吹き上げる温泉地がおなじみだが、まさにあの風景こそが地球のエネルギー。地熱資源の豊富な大分県にはすでに多くの地熱発電施設があって、九重町にある「九州電力八丁原発電所」は国内最大規模の地熱発電所である。

地球はマグマの近く、深さ30~50キロで1000度ほどになる熱の貯蔵庫だが、それをエネルギーに利用するには深すぎて難しい。しかし、日本には九州、東北などに「地熱地帯」と呼ばれる地域があって、そこでは数キロの深さのところに1000度前後のマグマ溜りがある。

そのマグマ溜りが地中の水を加熱することでできた「地熱貯留層」に届くように井戸を掘って、高温高圧の蒸気・熱水を取り出し、蒸気の力を使ってタービンを回し発電をするのが地熱発電の仕組みである。

八丁原発電所
八丁原発電所
筆者提供

それでは実際にどれだけ発電しているかというと、八丁原発電所では1号機、2号機合わせて最大11万キロワット。一般家庭で3万7千世帯分となる。井戸の側に行くと、ザーザーと蒸気や熱水が地下から噴き出す音が聞こえる。

「今日は機嫌がいいですね」と九電の担当者さん。

自然エネルギーと日々向き合い、資源が枯渇しないよう工夫しながら発電をしていると、まるで生き物相手のような気持ちになってつい愛着がわいてしまうのだそうだ。

地下水を枯渇させないように、蒸気を取り出した後の熱水を再び地下に戻す施設に行くと、「今日は(戻した熱水を)よく飲んでいるなあ」という具合で擬人化がとまらない。

地球のマグマがボイラーとなる地熱発電はCO2をほとんど排出しない純国産エネルギーだ。また風力や太陽光といった他の再生可能エネルギーと比較しても天候・昼夜を問わず安定した発電が可能でもある。

こうしたメリットにも関わらず、なぜ日本で地熱発電が広がらないのだろうか。

安定供給できるまでの技術的なハードル

熊本県小国町わいた地区では古くから地熱を利用して人々が生活をしている。大量の蒸気がひっきりなしに地面から湧き上がり、幻想的な風景がひろがる小さな村だ。燃料費ゼロ円。

冬でも家の中はポカポカというこの地で生まれ育った石松裕治さんは、なんと自ら小型の地熱発電所を設置した。そこで発電した電気を売ったり、余った熱を地元農家の野菜乾燥施設に提供したりしている。

石松裕治さんとわいた地区にて
石松裕治さんとわいた地区にて
筆者提供

「もともと実家が農家で、大根を洗うパートさんの手を温めるために温泉を掘ってみたら予想以上に熱水が出たことがきっかけでした。でも、いざ発電所を設置してみたら、なかなか安定しなくて、ようやく軌道にのるまで2年くらい。今でこそ地元の主要産業である林業の乾燥作業に導入したり、コーヒーの焙煎所といった新しいビジネスチャンスも生まれたりしましたが、最初は本当に心が折れそうでした」

地熱発電はその規模に関わらず、開発して安定供給できるまで技術的に実に様々なハードルがあるという。そもそも井戸を深く掘ることで莫大な予算がかかる上、地中深く掘削しても思ったような熱水に当たらないなど、ギャンブル的な側面もあるのだ。また、既存の源泉への影響に不安を感じる地元の人々の理解を得るのも難しいケースが多く、細心の配慮が必要となる。

さらに地熱地帯のほとんどは国立公園の中にあるために開発が難しい。いざ開発となると、環境破壊ではないかという反対の声も多く、なかなか進まないのが現実だ。

大手ゼネコンの大林組は2021年7月に大分県九重町に地熱発電を利用した水素製造実証プラントを開設した。施設が山間部にあるため発電できたとしても送電網への接続が困難なことから、電気を水素に変換することで「運べるエネルギー」にした。

「最初は環境破壊ではないかと地元の方も不安に思われていましたが、何度も対話を重ねて信頼関係を築くことに時間をかけました。現在、地産地消燃料として、水素ステーションや地元の企業で利用されています。今では町の皆さんも地元産のクリーンなエネルギーが九州各地とつながって役にたっているととても喜んでくださっています」

安定供給が可能な再生可能エネルギーとして大いに期待され、中小企業も含めて参入が増えているものの、一方で開発の難しさからなかなか広汎な活用が進まない地熱発電。経済産業省は地熱発電量を2030年までに3倍にする目標を掲げているが、施設建設にともなう環境破壊への不安や、掘削のギャンブル性といった課題とどうバランスととるのか、正直まだ壁は厚いと感じる。

しかし、資源の少ない日本において、世界3番目の地熱資源大国であることが未来への大きな可能性であることは間違いない。今後、日本のエネルギーを支える一端となるかは、国や大手企業、大学などの研究機関がタッグを組んで、いかに迅速に技術開発を進めていくかにかかっていると感じた。

(文:長野智子 編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版)

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