移民の大量受け入れで逼迫するニューヨーク市。国境で「他の都市を検討して」というチラシ配布へ

ニューヨーク市は2022年4月以降、9万人超の移民を受け入れています
バスに乗り込む移民たち=2023年5月、アメリカ・ニューヨーク
バスに乗り込む移民たち=2023年5月、アメリカ・ニューヨーク
New York Daily News via Getty Images

アメリカ最大の都市ニューヨーク市が、移民の受け入れで揺れている。エリック・アダムス市長(民主党)は「受け入れ余地がない」として、メキシコとの国境を越えてアメリカに新たに入国する移民に対して、「定住先としてニューヨーク市以外の都市を検討ください」と提案するチラシを配る計画だ。ニューヨーク・タイムズなど現地メディアが報じた。

ニューヨーク市は2022年4月以降、9万人超の移民を受け入れてきた。住む場所やサービスを提供してきたが、現時点で5万5000人が市の保護下にあり、これ以上の受け入れは難しいと訴えている。

移民に住まいを提供する教会などには対価を払うと話すアダムス市長=2023年6月、アメリカ・ニューヨーク
移民に住まいを提供する教会などには対価を払うと話すアダムス市長=2023年6月、アメリカ・ニューヨーク
Newsday LLC via Getty Images

ニューヨーク・タイムズによると、ニューヨーク市では、希望するすべての人にシェルターを提供しないといけないという市の規則がある。アダムス市長は7月19日に市役所で開いた記者会見で、「市内には十分な受け入れ余地がない」と述べたという。

受け入れ態勢が逼迫しているため、子ども連れの家族に住まいを回すことを目的に、シェルターに身を寄せる一人暮らしの移民について、市は60日が経過したら再申請を求めることを決めたと報じている。再申請をした際に、住む場所が確保される保障はない。

この市の動きを受け、現地のホームレス支援団体は19日に問題点を指摘する声明を発表。「ニューヨーク州は市とともに、シェルターの居住者が市内で生活できるようにする法的義務を負っている。滞在を制限するのではなく、市はシェルターの収容能力に対処する政策を実施すべきだ」とコメントし、合法性について調べるとしている。

市が新たに入国する移民向けに配布するチラシには、これまでの受け入れ状況の説明のほか、「ニューヨーク市は家賃が高いです」「食費や交通費、その他の生活必需品にかかるお金も、ニューヨーク市はアメリカ全体で最も高いです」と記載。その上で、「定住先としてニューヨーク市以外の都市を検討ください」としている。

ニューヨーク市が移民に対して「別の行き先を考えて」と提案するチラシ
ニューヨーク市が移民に対して「別の行き先を考えて」と提案するチラシ
The City of New York

ロイター通信は、テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)が移民受け入れにおける負担を、対立する民主党の牙城となっているニューヨーク市に転嫁するため、何千という移民をバスで送り込んでいると報じている。

注目記事