黒人選手だけ、メダル授与を飛ばされる差別対応が波紋。アイルランド体操団体が声明「職員『悪意のない間違い』」

2022年3月のイベント動画が拡散。体操団体「問題の職員は、起きたこと自体は容認しがたいことだと完全に認めていますが、意図的ではなかったと強調しています。『ミスに気づいてすぐに対応を修正し、この選手が会場を去る前に確実にメダルが贈られるようにした』と職員は話しています」

アイルランドの体操競技団体が2022年に開いた子供向けイベントで、他の選手と同じように並んでいた黒人の選手にだけメダルが渡されなかった様子を捉えた動画がSNS上で拡散し、物議を醸している。

アイルランドの競技団体は9月22日、動画の拡散を受けて声明を発表。動画が示すような事実があったと認めた上で、選手の両親から差別被害の訴えがあり、調査を実施したことを明かした。

問題のシーンが起きたのは、2022年3月にアイルランドで開かれたGymSTARTのイベント。1200人以上の体操選手が参加し、3000人以上の観客が集まった。

拡散された動画では、職員が横一列に並ぶ選手たちの首に順番にメダルをかける様子が映っている。職員は黒人の選手だけを飛ばして、その次の白人の選手たちにはメダルをかけているのが確認できる。

メダルを渡されなかった選手は戸惑った様子で職員に目をやり、周囲の選手も異変に気づいて動揺するような姿が見て取れる。

飛ばされた際、職員と黒人の選手の間で何かやり取りがあったのかは確認できない。動画では、職員が後から黒人選手にメダルを渡すようなシーンも見られなかった。

一連のシーンや職員の行為について、アイルランドの体操競技団体は声明で次のように説明している。

「問題の職員は、起きたこと自体は容認しがたいことだと完全に認めていますが、意図的ではなかったと強調しています。『ミスに気づいてすぐに対応を修正し、この選手が会場を去る前に確実にメダルが贈られるようにした』と職員は話しています」

「職員はまた、彼ら曰く『悪意のない間違え』に対して深く後悔を示しており、選手とその家族に対面で謝罪する機会を求めました」

声明によると、謝罪の申し出は家族側に断られたが、職員は謝罪文を出したという。

声明ではまた、競技団体の方針や手続きに則って、両者が「Sports Disputes Solutions Ireland」による調停に移行し、2023年8月に合意に至ったとも伝えている。

この動画に対してアメリカ体操界レジェンドのシモーン・バイルス選手も反応。動画が投稿されたXの投稿に返信する形で「見て心が痛んだので、彼女に短い動画を送った」と選手とやり取りしたことを明かし、「どんなスポーツや他の何においても、人種差別が入り込む余地はない!!」とつづった。

アイルランドのアフリカ系団体「ルーツ イン アフリカーアイルランド ネットワーク」も9月23日に声明を発表。

一連の問題が起きたことに懸念を表明した上で、競技団体の対応の遅れを次のように批判した。

「この問題が起きたのが2022年3月ですが、競技団体がこれに言及する声明を出したのは昨日(9月22日)です。このような事態への遅れた反応や対応は、個人に対する不公正な取り扱いの一因となり、不平等と排除の感情がはびこることになります」

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