“宙飛ぶ船“かのような幻想的な情景、蜃気楼の仕業です。秋から冬にかけての風物詩の仕組みは?

今シーズン一番の冷え込みとなった山口県では、船が宙に浮かんでいるように見える”蜃気楼”が観測されました。この幻想的な現象が起きる原因を解説します。
瀬戸内海で蜃気楼が発生 船が海から宙に浮いたように見える
ウェザーニュース
瀬戸内海で蜃気楼が発生 船が海から宙に浮いたように見える

今日10月30日(月)朝は放射冷却が強まり、西日本では今シーズン一番の冷え込みとなったところが多くなっています。

この冷え込みによって、山口県下関市から瀬戸内海を見ると、船が宙に浮かんでいるように見えました。これは”蜃気楼”が発生していたと考えられます。

蜃気楼による“浮島現象”

今回、船が宙に浮いたように見えていたのは「浮島現象」と呼ばれる現象で、蜃気楼の一種です。蜃気楼は、太陽光線が密度の異なる大気を通過する際に屈折して、すこし離れたところの景色が、実際とは違う形に見える現象です。

光は大気中の密度に差がない時は真っ直ぐ進みますが、密度に差がある場合は、密度がより高い方(温度が低いほう)へと進む性質があります。このため、船や島などが逆さに見えたり、伸びて見えたりするのです。

下に像が作られるため、浮いて見える

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蜃気楼には「上位蜃気楼」と「下位蜃気楼」がありますが、今回の浮島現象は「下位蜃気楼」によるものです。放射冷却の影響で海面付近の空気が冷やされ、比較的暖かい海との温度差が大きくなったため、屈折が発生したと考えられます。

今朝の下関は12.7℃と今シーズン一番の冷え込みとなりました。海面水温は20℃以上と比較的暖かく、上の図のように光が屈折し、実景の下に像ができたものと考えられます。遠くに見えた船は小さく実景が低いため、その上の空や背景まで下に映りこむので、浮いているように見えるのです。

蜃気楼は冷え込みが強まり海水温との温度差が大きくなる秋〜冬にかけての季節風物詩と言えそうです。

写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)タチトさん

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