食品ロス防ぐファミマの「涙目シール」、フリー素材として誰でも使えるように。「社会全体で食品ロスを減らしていければ」

食品ロスを防ぐファミリーマートの「涙目シール」がフリー素材に。誰でも自由にお店で使えるようになりました。
おにぎりなどに貼られた「涙目シール」
おにぎりなどに貼られた「涙目シール」
Sumireko Tomita / HuffPost Japan

「たすけてください」と、うるうるとした瞳に涙を浮かべるおにぎりのイラストの「涙目シール」を知っているだろうか。

ファミリーマートが2025年3月から全国の店舗で展開してきた食品ロス削減の取り組みだ。

販売期限が迫った商品に20円、30円などの値下げを表示した涙目シールを貼り、食品ロス削減を実現してきた。

ファミリーマートは10月22日、「社会全体で食品ロスを削減するきっかけになれば」とこのシールのフリー素材化を発表。パンや魚、肉、ケーキなどのデザインも加わり、様々な店舗の運営者が自由にダウンロードし、使えるようになった。

フリー素材化した涙目デザインのシール。自由にダウンロードして使うことができる
フリー素材化した涙目デザインのシール。自由にダウンロードして使うことができる
Sumireko Tomita / HuffPost Japan

「涙目シール」って?年間約3000トンの食品ロス削減見込み

ファミリーマートは食品ロス削減のために2021年7月から、販売期限が迫った商品に「ファミマのエコ割」として値引きシールを貼る取り組みをしてきた。

より多くの消費者に「エコ割」に参加してもらうために2024年、「たすけてください」と涙を浮かべるおにぎりのイラストで消費者に直接訴えかける「涙目シール」をスタート。

実証実験で、購入率が5ポイントアップしたという結果を得て、2025年3月に全国展開を開始した。これを全店で実施すると年間約3000トンもの食品ロス削減につながるという。

全国各地の店舗で導入した結果、2025年4~9月の中食の廃棄量は前年同月比で5%削減した。

「涙目シール」を貼る様子
「涙目シール」を貼る様子
Sumireko Tomita / HuffPost Japan

ファミリーマートによると、消費者からは「こんな表情で見つめられたら、思わず助けたくなる」「買ってあげなきゃと心を動かされて購入しました。お得というメリットだけでなく、廃棄から救える喜びに近い感覚も」との声が寄せられている。

同社では、涙目シールの導入のほか、様々な食品ロス削減対策を行っている。「てまえどり」の推進や、サラダなど惣菜の包装に工夫を加え内部を真空状態にし、食品を長持ちさせるという取り組みも。

結果、2025年上半期の食品ロスは、2018年比で32.0%減を達成した。今後も取り組みを強化し、2030年に50%削減、2050年に80%削減することを目標としている。

フリー素材化&新キャラ登場の理由は

フリー素材化された涙目デザイン
フリー素材化された涙目デザイン
ファミリーマート

農林水産省によると日本では現在、年間で約464万トンの食品ロスが出ている。

涙目シールの導入により得られた確かな食品ロス削減の効果を、ファミリーマート社外にも広め、社会全体でさらにロス削減を進めるためにも、同社は涙目デザインのフリー素材化を決めた。

ファミリーマート・サステナビリティ推進部の大澤寛之さんは10月22日、都内で開かれた会見で、フリー素材化の理由について以下のように語った。

「非常に膨大な量の食品ロスがでている中、涙目シールを使うことで、この取り組みが世の中に広がり、社会全体で食品ロスを減らしていければと思います。フリー素材化にあたり、小売店やレストランなど様々なお店に使ってほしく、デザインも増やしました」

おにぎりやケーキ、魚など5種類の「涙目デザイン」は、ファミリーマートのウェブサイトから自由にダウンロードできる。

ファミマの商品以外の弁当や肉、魚のパッケージに貼られた「涙目デザイン」
ファミマの商品以外の弁当や肉、魚のパッケージに貼られた「涙目デザイン」
Sumireko Tomita / HuffPost Japan

導入店舗は、フリー素材のイラストにあわせて、例えば「半額」や「〇〇%引き」「〇〇円引き」など値下げ幅を自由にデザインし、使うことができる。

シールだけでなく店内に掲示するポップやポスターを作ることも可能。シールとして使いたい場合は、ファミリーマート店舗にあるマルチコピー機を使って印刷することもできる。

目黒区のパン屋などから導入スタート

涙目デザインのシールを貼った食パンを持つ青木目黒区長
涙目デザインのシールを貼った食パンを持つ青木目黒区長
Sumireko Tomita / HuffPost Japan

涙目デザインのフリー素材化にあたっては、目黒区と連携し、普及を推進していく。

目黒区ではこれまでも食品ロスを削減する取り組みを進めており、ロス削減の取り組みを実施する「めぐろ食べきり協力店」への登録店舗から涙目シールを導入する。

22日から、パン・ケーキ・弁当などを売る店舗や区役所内レストランなど6店舗で開始し、さらに導入店舗の輪を広げていく。

連携に際し、目黒区の青木英二区長は会見で、「食品ロス問題は他人事になってしまいがちですが、皆で力を合わせることで削減していける。消費者の感情に訴え『助けてあげたい』と思わせる涙目シールがブレイクスルーになるのではないかと思います」と話した。

連携は目黒区からスタートし、ファミリーマートは今後、各自治体や企業などにもアプローチし、取り組みを広げていく予定だ。

(取材・文=冨田すみれ子)

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