「私はこの勝利を受けるに値しない」東京五輪の金メダリストを苦しませるインポスター症候群とは?

栄光が選手に取ってプレッシャーになることも。アメリカのスニサ・リー選手が、不安発作とインポスター症候群苦しんでいることを告白しました。

成功がプレッシャーになり、アスリートたちを苦しめる時もある。

2021年の東京オリンピックの体操女子・個人総合で金メダルに輝いたアメリカのスニサ・リー選手が、大会以来、不安発作と「インポスター症候群」に苦しんでいるとESPNのインタビューで、明かした。

東京オリンピック体操女子・個人総合で金メダルに輝いたスニサ・リー選手(2021年7月29日)
東京オリンピック体操女子・個人総合で金メダルに輝いたスニサ・リー選手(2021年7月29日)
Tim Clayton - Corbis via Getty Images

インポスター症候群とは

インポスター症候群とは、周囲の人の評価ほど自分の能力は高くないと感じる症状で、まるで自分自身を詐欺師のように感じることもあるという。

リー選手は金メダルで注目される存在になり、大会後はアラバマ州のオーバーン大学に進学した。

2月に開催された大会では、1万3000人以上の観客を前に、段違い平行棒で自身初の10点満点を記録するなど、大学体操界でも活躍している。

しかし実際は、大会後ずっと自信の欠如に苦しんできたという。

東京オリンピックの体操女子個人総合では、リオ大会で4つの金メダルを手にしたシモーン・バイルス選手が、有力な優勝候補と見られていた。

その期待通り、バイルス選手は予選を1位通過。ところがその後メンタルヘルスの不調を訴え、「自分を守りたい」と個人総合の決勝を棄権した。そしてバイルス選手不在の決勝で、リー選手が金メダルに輝いた。

リー選手は新たなヒーローになったものの、「私はこの勝利を受けるに値しない、と自分自身に言い続けた」とESPNに語っている。

「インポスター症候群のような感じです」「とてもつらくて、ここにきた最初の数週間は、モチベーションを上げるのがすごく大変でした。体操をやりたくなくて、嫌いになっていました」

オリンピックの金メダルで、リー選手を有名人になった(2021年8月8日)
オリンピックの金メダルで、リー選手を有名人になった(2021年8月8日)
MediaNews Group/St. Paul Pioneer Press via Getty Images via Getty Images

リー選手が出場する試合のチケットは売れ、会場は多くの観客で埋まった。周りの反応や期待に応えなければいけないというプレッシャーも、リー選手に取って大きな負担になったという。

「試合で不安発作を起こしていてもおかしくありませんでした」「今シーズン最初の試合のいくつかで、私はボロボロでした。集中しようとしている時に、絶えず私の名前が叫ばれて、『スニサ、一緒に写真を撮っていい?』『サインしてくれる?』と言われました」

好意から注目だとはわかっていても、気持ちをコントロールするのが難しく、試合前に体が震え「私にはできない」とコーチに伝えた時もあったという。

リー選手は3月12日の試合で今シーズン2番目の成績で段違い平行棒に勝利し、オーバーン大学の2位に貢献したものの、Twitterには「毎日が、最良の日ではない」とつづった。

リー選手のツイート:毎日が、最良の日ではありません。次のSEC(サウスイースタン・カンファレンス)チャンピオンを目指します

声を上げるアスリートたち

メンタルヘルスはスポーツ選手たちにとって重要な問題であり、 さまざまなトップアスリートたちが、リー選手やバイルス選手のように声を上げてきた。

テニスの大坂なおみ選手は、2021年の全仏オープンでうつ病を公表し、試合や記者会見の前に不安を感じると明かした。さらに、2022年3月のBNPパリバ・オープンでは会場からの野次に涙を流し、観客の言葉が選手にどんな与える影響を伝えた。

また、オリンピックで2つの金メダリストを取ったスキーのミカエラ・シフリン選手は、2022年2月の北京オリンピックで2回連続で転倒した時に「これまでの15年、自分は正しいことをやってきたのだろうかと疑念を抱いた」と述べている

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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