大坂なおみ選手、うつ病を公表。「勇気ある行動」とスポーツ選手らが称賛

全仏オープンの棄権を発表した。「トーナメントや他の選手、そして自分自身のためにも棄権したい」。大坂なおみ選手がこれまで感じてきた不安について語りました

メンタルヘルスを守るために全仏オープンで記者会見をしないと発表したテニスの大坂なおみ選手が、同大会の2回戦棄権を発表した。

同時に、大坂選手は2018年からうつ病を抱えてきたことを公表し、記者会見をしないと決めたのは、大会前に大きな不安を感じていたからだと説明した。

5月30日に開かれた全仏オープン1回戦で、パトリシア・ティグ選手と対戦した大坂なおみ選手
5月30日に開かれた全仏オープン1回戦で、パトリシア・ティグ選手と対戦した大坂なおみ選手
Tim Clayton - Corbis via Getty Images

他の選手や自分のために棄権

大坂選手は5月30日に開かれた全仏オープン1回戦でルーマニアのパトリシア・ティグ選手と対戦して勝利。

コートでのインタビューには答えたものの、事前の発表通り、記者会見には現れなかった。

そのため、主催者側から1万5000ドルの罰金を課され、さらに今後も続くようであれば四大大会の出場停止もあると警告された

記者会見をしない――大坂選手の決断には賛否両論が起きていた。

SNSなどで「あなたの決断を支持する」と多くのサポートが寄せられた一方で、ラファエル・ナダル選手が「スポーツ選手は記者会見で答える必要があると思う」と答えるなど、大坂選手の気持ちを配慮しつつも、記者会見の重要性を語るスポーツ選手もいた。

この状況に、大坂選手は「数日前にメッセージを投稿した時に、このような状況になるとは想像しておらず、意図もしていませんでした」と、新たなメッセージを投稿。

その上で「トーナメントや他の選手、そして私自身の心や体の健康のためにも棄権したい。そうすればみんなが全仏オープンに集中できます」と、棄権を発表した。

無防備だと感じ不安になっていた

大坂選手は、今回の全仏オープンで記者会見をしないと決めた理由を、次のようにつづっている。

「私は決して、何かの邪魔をしようとしたわけではありません。しかし発表のタイミングが理想的ではなく、メッセージをはっきりと伝えられていませんでした。そしてもちろん、私はメンタルヘルスを些細なこととして扱ったわけでも、この言葉を軽い気持ちで使ったわけでもありません」

「私は2018年の全米オープンから長い間、うつ病を抱えてきました。それに対処するのはとても大変でした」

「私を知っている人は私が内向的だと知っていると思います。そして私の試合を見たことがある人は、私がよくヘッドフォンをしていることに気づいたのではないかと思います。ヘッドフォンをすることで、私は不安をまぎらわすことができるのです」

「テニス記者の皆さんは、とても親切です(そして私の発言で傷いた素晴らしいジャーナリストの皆さんがいれば、心からお詫びします)。しかし私は人前で話すのが得意ではありません。そして世界中に発信するメディアの前で話す時、私は大きな不安の波に襲われるのです。いつも大きな不安を感じ、できる限り良い回答をしようとしてストレスを感じるのです」

「そしてパリではすでに、私は自分が無防備だと感じ、不安になっています。だから、自分を守るために記者会見をしない方がいいと思いました。それをトーナメント前に発表したのは、ルールには古すぎる部分があるということを強調したかったからです」

大坂選手は最後に、「全仏オープンの主催者にはすでに謝罪文を送っており、トーナメントが終わった後に、選手やプレス、ファンのために何ができるかを主催者と話し合いたいと思っている」と述べている。

2021年の全豪オープン決勝の前に、ヘッドフォンを調整する大坂なおみ選手(2021年2月20日)
2021年の全豪オープン決勝の前に、ヘッドフォンを調整する大坂なおみ選手(2021年2月20日)
Darrian Traynor via Getty Images

選手たちもサポート

自分の気持ちとうつ病を公表した大坂選手。彼女の行動に、スポーツ選手を含む多くの人たちが応援のメッセージを投稿している。

テニスのレジェンド、ビリー・ジーン・キング氏は、「自身の真実とうつ病の苦しみを公表した大坂なおみ選手、とても勇気がある行動です。今最も重要なことは、彼女に必要な場所と時間を与えることです」とツイートした。

同じく元テニス選手のマルチナ・ナブラチロワ氏は、「アスリートとして、私たちは自分の体をケアするように言われますが、メンタルや感情面は忘れられがちかもしれません。これはただ記者会見をするかしないかという問題ではありません。なおみ、全てがうまくいきますように!私たちはあなたを応援しています」とサポートを表明した。

NBAのステフィン・カリー選手も「このような決断をさせられるべきではない。しかし権力のある人が守ってくれないときに、正しい方法をとっていてなんて素晴らしいんだ。心から尊敬する」と、大坂選手に敬意を表している。

また、テニスのココ・ガウフ選手も、大坂選手のツイートに「強いあなたでいてください。あなたが公表した繊細さに敬意を払います」とコメントした。

勝つか負けるかの世界に身を置いているスポーツ選手。不安やプレッシャーの感じ方は、選手ひとりひとり違う。

今回の大坂選手の決断は、スポーツ選手のメンタルヘルスをどう守るかという疑問を、主催団体やメディアを含むスポーツ界全体に投げかけたという点で大きな意味がある。

大坂選手が棄権を発表した後、フランステニス協会のジル・モレットン会長は「なおみが全仏オープンを棄権したのはとても残念です。我々は彼女にとっての最善を願い、なるべく早く回復してほしいと願っています。そして彼女が来年のトーナメントに戻ってくれることを楽しみにしています」という声明を発表。

さらに「四大大会とWTA、ATP、ITFは、すべてのアスリートの心と体の健康を守り、選手たちが我々のトーナメントでの経験をより良いものにするために尽力します。それにはメディアも含まれます」とも述べた。

一方でモレットン氏は会見では声明文を読むにとどめ、記者からの質問には答えなかったという。

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