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2019年11月18日 15時04分 JST | 更新 2019年11月18日 20時14分 JST

「これはイランの少女たちだけの物語ではない」少女たちの“罪の向こう側”にあるもの

イランの少女更生施設を撮ったドキュメンタリー映画『少女は夜明けに夢をみる』。来日したメヘルダード・オスコウイ監督にインタビューしました。

(C)Oskouei Film Production
「少女は夜明けに夢をみる」

舞台はイランの首都・テヘランの少女更生施設。
収容されている少女たちが犯した罪は、殺人、強盗、違法薬物使用ーー。

イランの少女更生施設のドキュメンタリー映画『少女は夜明けに夢をみる』が11月2日、日本で公開された。

少女たちはなぜ罪を犯してしまったのか。作品では、彼女たちの言葉で明らかにされていく。貧困や家族からの虐待や性的暴行…。彼女たちの罪の背景にある社会の暗闇が映し出される。

メヘルダード・オスコウイ監督は「少女たちの物語は、イランだけではなく世界中で起こっている」と私たちに語りかける。日本にも性的虐待を受けたり、家庭に居場所がない少女がいる。

日本に来日した監督にインタビューをした。

HUFFPOST JAPAN
メヘルダード・オスコウイ監督

浮浪罪で収容された少女・ハーテレ。父親はコカイン依存症。母親からは虐待を受けていたという。叔父から性的虐待がきっかけで、家出をした。

オスコウイ監督はそんな彼女にカメラを向け、質問をしていく。

監督「君の夢は?」 ーー ハーテレ「死ぬこと」

監督「まだ若いのになぜ?」 ーー ハーテレ「疲れたの」

監督「何に?」 ーー ハーテレ「生きることに」

他の少女たちもハーテレのように、カメラの前で自らの境遇を語っていく。

監督によると、施設で出会ったほとんどの少女たちが過去、トラウマとなるような性体験や男性によって傷付けられた経験を持っていたという。

そのため、撮影では少女たちとの信頼関係を最優先した。彼女たちがカメラの前で居心地が悪そうにしていたらすぐに撮影を中断してしたと監督は振り返る。

(C)Oskouei Film Production
「少女は夜明けに夢をみる」

実は、オスコウイ監督が更生施設をテーマにした作品を発表するのはこれが初めてではない。監督はこれまでも少年の更生施設を舞台にした2つの作品を発表している。

なぜ更生施設をテーマに作品を撮り始めたのか。

祖父と父親が政治犯として刑務所に投獄されていたことが背景にあると監督は話す。イランが現在のイスラム共和国体制になる前の王政時代のことだった。

「当時から、自分と同い年くらいの若者が刑務所でどのような生活をしているのか興味がありました」と監督。

映画の道を志したのも少年時代だった。

「15歳のとき、父親が破産して生活が苦しくなったことがきっかけで、入水自殺をしようとしました。直前になって思い留まることができましたが…。

その時に経験した『誰も私たち家族の声や痛みに耳を傾けてくれなかった』という感覚が、私の映画監督としての原点です。『自らの声を社会に届けられない人のために映画を作ろう』と思いました」

(C)Oskouei Film Production
少女は夜明けに夢をみる

塀の内側は「安心できる場所」

映画で印象的なのは、意外にも少女たちの明るい表情だ。雪合戦をしたり、歌を歌ったり、ふざけあったりする少女たちの様子は、ここが更生施設だということを忘れさせる。

厚い壁に囲まれた施設は暗くて閉鎖的だが、少女たちにとってこの場所は同じ傷を持つ仲間とともに、安心して過ごせる場所なのだと監督は言う。それほど「外」の世界は、彼女たちにとって過酷なものなのだ、と。

日本では、少年院を出た少年(少女も含む)が再び非行・犯罪に手を染める傾向が問題となっている。法務省が発表した2018年版の犯罪白書によると、少年院を出てから5年以内に再び少年院もしくは刑務所に入った少年の割合は21.6%にも及ぶ。

映画に出てくる彼女たちは退所後、どうなったのか。尋ねると、監督は表情を曇らせた。イランでも更生施設を出た少年少女たちの再犯は問題になっているのだという。

「少女の数人はサポートを得て、大学に行きました。でも、ほとんどの少女は、どこで何をしているかわからないのです。残念ながら、またドラッグに手を染め、路上で亡くなった少女もいるとも関係者から聞きました」

監督によると、イランには更生施設出所後、少女たちの社会復帰をサポートする団体や仕組みがほとんど無いのだという。

「更生施設と社会の間に、少女たちをサポートする場所を作らないといけないと感じます。サポート団体やサポートファミリーのようなものをもっと充実させなければ、この悪循環は続くと思う」と監督は語る。

(C)Oskouei Film Production
少女は夜明けに夢をみる

監督は、罪を犯した人が復帰しやすい社会を作る必要性についても言及した。

日本でも、逮捕された芸能人へのバッシングや過去の出演作品の自粛などが、元犯罪者が社会復帰をしにくい社会の風潮を作っていると問題視する声もある。

監督は「人間誰しも、何かしらの罪を犯してしまった経験があるのではないでしょうか。他人を許せない社会はどこか病んでいるように感じます。他人を許せないならば自分のことも許せない。許すことを覚えなければ、社会は生きづらくなるばかりです」と言葉を強くした。

もちろん、犯罪には被害者がおり、加害者の反省と更生は厳しく求められるべきだ。一方で、犯罪を「自己責任」で片付けるのではなく、貧困や暴力など犯罪に至ってしまった社会的背景にも目を向けたい。

インタビューの最後、監督は「イランの少女たちの物語は、世界で起こっている物語でもある」と訴え、日本の観客にメッセージを送った。

あなたの国にも、こんな少女たちがいるかもしれない。彼女たちのことを見てください。そして助けてください。もし一人一人が努力すれば、苦しい状況にある少女たちが少しでも救われるかもしれないから…

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メヘルダード・オスコウイ監督