「子どもはヒキガエルが好き」そんな看板が話題に。都立公園に設置された理由は?

大人に対しても「無理のない範囲でカエルに興味を持ってほしい」という気持ちを込めたそうです。
光が丘公園の池の前に設置された看板。佐藤方博さんのTwitterより
光が丘公園の池の前に設置された看板。佐藤方博さんのTwitterより
Twitter/hatomasahiro

可愛いらしいイラストで「子どもはヒキガエルが好き」と訴える看板がSNS上で話題だ。「大人が悲鳴を上げると、カエルを気持ち悪いものだと思ってしまいます」「苦手な人は、離れて見てください」と注意書きが続いている。

自然観察施設の活用を推進する認定NPO法人「生態工房」が、東京都立「光が丘公園」に設置したもの。同法人で事務局長を務める佐藤方博(さとう・まさひろ)さんが3月12日にTwitterで紹介したところ、4万件を超える「いいね」を集めた。

「こういう看板はとても良いと思う」「子どもが興味あるものを大人が奪っちゃダメ」などと反響が広がっている。

■「大人も無理のない範囲でカエルに興味を持ってほしい」と看板を設置した佐藤さん

光が丘公園内に設置されたヒキガエル観察用の別の看板
光が丘公園内に設置されたヒキガエル観察用の別の看板
佐藤方博さん提供

佐藤さんがハフポスト日本版の取材に対して、看板を設置するきっかけになったのは、3月初旬の出来事だったと振り返った。

野生生物を保護する「バードサンクチュアリ」の入り口にある小さな池にヒキガエルが産卵に集まっていた際に、付近で作業している佐藤さんの耳に、カエルを見ている人の声が聞こえきた。

「がんばれー!」と応援しながら喜んでいる子どもたちの声と同時に、「イヤだー何コレー?」といった大人の声が聞こえてくることがあって気になり、啓発用の看板を設置することにしたという。

看板の趣旨は「子どもの興味を止めないでほしいということ」としつつも、嫌がる大人を「イヤだったら見るな」と突き放すのではなく「無理のない範囲でカエルに興味を持ってほしい」という気持ちを込めましたと、振り返っている。

■佐藤さんとの一問一答

光が丘公園内で産卵するヒキガエル
光が丘公園内で産卵するヒキガエル
佐藤方博さん提供

―― 生態工房は、光が丘公園でどんな活動をされていますか?

バードサンクチュアリは、地域の生物多様性を保全している区域で、観察舎があります。私たちの会は、公園の指定管理者からの委託で、区域内の自然環境の維持管理と、来園者に自然情報を提供したり、学習の手助けをしています。

―― こうした看板を生態工房で設置するのは初めてですか?

自然観察施設なので、季節の自然情報や動植物の生態について解説する掲示、観察や施設利用のマナーを呼びかける掲示を普段から行っています。今回のポスターは、分類としてはマナーの呼びかけ(生物に迷惑をかけない、他の利用者に迷惑をかけない)かもしれませんが、人間形成に関する呼びかけという点で、これまで行っていた掲示とは違うものかもしれません。

―― この看板は、光が丘公園のどこに設置されたものですか?

バードサンクチュアリ入口の門の脇にある、2畳くらいの小さな池の前に掲示しています。園路に接していて、よく目に付く場所です。

―― この場所でのヒキガエルの産卵シーズンと、孵化の時期はいつごろでしょうか?

産卵シーズンは気象状況によって異なりますが、おおむね2月中旬前後です。今年は少し遅めでした。産卵から約1週間でオタマジャクシになります。

―― この場所のヒキガエルの産卵は例年、どれくらいの数の群れが集まる感じでしょうか?

バードサンクチュアリでは、大きな池も含めると産卵のピーク時には同時に60頭程度が観察されています。実際の生息数はもっと多いと思われます。そのうち入口の小さな池には10頭程度が来ています。

―― この看板を設置しようと思ったきっかけは?

前週にヒキガエルが産卵に集まっており、付近で作業している私の耳に、カエルを見ている人の声が聞こえてきました。喜んでいる子どもたちの声と同時に「イヤだー何コレー?」といった大人の声が聞こえてくることが何度かあり、気になりました。ポスターに書く文言は、けっこう考えました。本題は、子どもの興味を止めないでほしいということですが、「キャー」と反応をする大人に対しても「イヤだったら見るな」と突き放すのではなく、無理のない範囲で興味を持ってほしいという気持ちを込めました。我慢して観察しなくてもいいのですが、カエルはそんなに変なものじゃないかもしれないよ、と軽くお伝えしてみたかったのです。

―― 子どもが興味深くヒキガエルを観察する一方で、大人は悲鳴を上げるなど嫌悪感を示すという状況があると書かれていましたが、そのようなことになる原因には何があると思いますか?

私は子どもの発達に関しては専門ではありませんが、例えばヘビや毛虫のように、気持ち悪いと言われている生物に対する態度の形成には、その子どもの周辺にいる人が示す反応や、テレビや本などでの扱われ方が影響していると言われています。「○○という生物は、気持ちが悪くて、悲鳴を上げる対象なのだ」と学習するというのです。私は上記の根拠となる学説などを知っているわけではなく、上記のように言われているのを何度か見聞きし、自分の経験からもそういう認識をもっています。

―― 今回のツイートには5万件を超える「いいね」が寄せられています。「虫などもそうだけど、大人が嫌っているのを見て学習してしまう」「大人による好き嫌いの押し付けはやめよう」などの声がありました。こうした反響をどう感じていますか?

私が感じた問題意識に共感してくれた人がとても多くいたことをうれしく思いました。

―― ヒキガエルのイラストが可愛らしいですが、どなたが描いたものでしょうか?

フリー素材のいらすとやを利用しました。いらすとやは、本当によくできています。当会(NPO生態工房)にも自前のイラストはありましたが、今回はほんわかとしたかわいらしさを重視してフリー素材を選びました。

注目記事