2020年10月02日 19時59分 JST | 更新 2020年10月02日 19時59分 JST

“商用車の日本代表”ハイエースが、若者のアイコンに?トヨタが提案する、新しい車のカタチ

ファッションや音楽、アートを展開するプロジェクト「Drive Your Teenage Dreams.」を手がけるSTARBASEの狙いとは?

「車を単なる移動手段ではなく、ライフスタイルに根付く“娯楽”に」
日本を代表する自動車メーカー・トヨタ自動車が、車の新しいあり方を発信するプロジェクト「Drive Your Teenage Dreams.」が、開始1年を迎えた。  

トヨタは、車でどれだけ人を楽しませることができるだろうか? そんな思いから始まったプロジェクトが、ファッションや音楽、アートを手法として発信するのは、一体なぜ?    

STARBASE提供

トヨタ自動車株式会社では、創業以来こんな言葉が受け継がれている。

「車は、人々が集まるきっかけになってほしい」

車の流行や生活における役割が時代とともに変化すれど、トヨタでは、創業者の思いが脈々と受け継がれている。この言葉が生まれた当時の日本では、まだまだ車は珍しい存在。自然と、人が集まるきっかけになっていたのかもしれない。しかし、車のある生活が当たり前となった今では、どうだろうか?

車が、再び人々の集まる空間になることを目指し、令和における“新しい”車の一面を発信したい──。そんな思いをカタチにするべく、トヨタと共同でプロジェクトを立ち上げたのが、株式会社STARBASEだ。クリエイティブディレクターを務める、同社代表取締役の日高良太郎さんに話を聞いた。

誰もが知る企業なのに、「一番遠い」存在だった

「Drive Your Teenage Dreams.」は、2019年にトヨタとSTARBASEによってスタートしたプロジェクト。同社は、東京を拠点に活動するグローバルな総合エンターテインメント企業だ。

YASUHIRO SUZUKI
株式会社 STARBASE代表取締役の日高良太郎さん

「トヨタは、車の事業が今のまま続くとは思っていないようです。単なる移動手段ではなく、新しい価値を提供していかなければという危機感があります。その課題に対して、当社として何ができるのか、というところから始まりました」と日高さんは話す。

車をきっかけに、何かを楽しみたい人が集まり、車が楽しい場所、瞬間を生み出す場になる。カスタムをしたり、車があることで新しい場所に出かけたり...。「車が遊び道具であり、車が秘密基地。」そんなワクワクする車の楽しみ方を表現するのが、このプロジェクトのコンセプト。

今回の“主役”に抜擢されたのは、商用車としてメジャーな「ハイエース」。トヨタの中でも指折りのロングセラーだ。

STARBASEの手にかかった「ハイエース」は、ある時は若者に大人気のファッションアイテムに、ある時は音楽を作るサウンドスタジオに。全く新しい形で、若者に届けられた。

YASUHIRO SUZUKI
「Drive Your Teenage Dreams.」1年目のプロジェクト

「トヨタって、日本では誰もが知ってる企業なのに、ファッションやアートのコラボ相手として候補に上がることがほとんどないんです。国内でも増えてきたスマートシティ構想を見ても、車はもっとライフスタイルの中に根付いていく必要があるのに、実はトヨタが、カルチャー、エンタメからはるか遠い存在であることがひとつの課題でした。」

そこで日高さんは、トヨタとカルチャー分野に“橋をかける”ことをプロジェクト1年目のテーマに掲げた。

若者に“バズる”クリエイティブを駆使したグッズを展開。「トヨタって、こんなことするんだ」「なんで、ハイエースが?」大人世代の関心も集める、全く新しい企画を発表した。 

さらに、ハイエースを選んだ理由について、「ハイエースって、スペースが広いだけでなく、アーティストが楽器を運ぶときに使われたり、ブランドが洋服を運ぶときに使われたり、カルチャーの分野で非常に出番が多い車なんです。」と話す。

この1年、オリジナルのペイントを施されたハイエースが現れる場所で様々なプロジェクトを展開。狙い通り、人の視線が、声が、存在が、自然と集まる場所になっていった。

“無駄なこと”が、トヨタの求心力に

もし、トヨタがこのプロジェクトを“売上”につなげたいのであれば、ターゲットを若者にするのは間違いだっただろう。車を買う人が決して多いとは言えない若年層に向けたプロジェクトを、日高さんは「無駄なこと」と笑う。

YASUHIRO SUZUKI

「僕がやろうとしていることは無駄です。という言葉から始まったプロジェクトです(笑)。すぐに売上につながるわけでもないし、どれくらい時間がかかるかもわからない。ただ、この無駄なことに、僕たちは必ず意味や価値があると思っています。それでも、やりますか?と」

その問いに、トヨタは意外な対応をしたそうだ。

「歴史ある大企業ならではの葛藤もあったのかもしれません。今までできなかったことに挑戦したい、何か面白いことができそう、という気持ちが求心力になったようです。各所に協力を募るなど、とても熱心に社内調整をしてくれました」 

昨年サマーソニックの会場に登場したオリジナルハイエースや、トヨタのロゴ、ハイエースのグラフィックを使用したファッションアイテム、さらにトヨタ初のベアブリックとのコラボレーションは若者だけでなく、トヨタファンやコレクターの大人からも大きな反響を得た。

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プロジェクト第一弾の地・サマーソニック2019の会場で展示され、大きな話題を呼んだファッションアイテム。後に販売されると、人気商品となった。日高さんは「ありそうでなかった、トヨタのファッションアイテムは、トヨタ社員にも人気です」と話す。
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同プロジェクト第2弾の企画“TOY_OTA(トイ-オタ)”では、トヨタが初めてBE@RBRICK(ベアブリック)とコラボし、数量限定で発売された。ハイエースのボディと同じ高級感のあるマットブラックの塗装が施されている。

ハイエースのクラクションやウインカーの音を集め、ハイエース車内を作曲スタジオにして楽曲を作り上げた「HIACE SOUND STUDIO」も、その一つ。今年1月、トヨタのInstagramアカウントにその様子がアップされると、同企画内で最多視聴数を叩き出した。

トレンドへの感度が高く、固定概念にとらわれずに「トヨタ」「車」と接することのできる若年層にあてることで、純粋に「車が好き」「トヨタというブランドが好き」という存在が生まれる。それにより、未来のファンが増えるだけでなく、車の新しいあり方に対するアイデアにもつながり、「車で人を楽しませる」というトヨタの目標にも近づく。

さらに、エンタメが持つコミュニケーションを生む力と、若者が持つ発信力によって、大人世代にも“橋”を渡る人が増えていく。「子どもの頃に好きだったものを見ると、大人でも自然と無邪気な感覚に引き戻される。そんなエンタメを提供していく思いも込めて、“Drive Your Teenage Dreams.”なんです」と日高さん。

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「世界のファッションの殿堂」とも称され、2017年末に惜しまれつつ閉店したパリのブティック「Colette」。そのドキュメンタリー映画「Colette Mon Amour」とのコラボ企画が2020年9月末の渋谷パルコで開催され、オリジナルハイエースがゲストに限定で配布された。

今回のプロジェクトの主役・ハイエースが紡ぐストーリーは、まだまだ続く。

「このプロジェクトが成功すれば、トヨタは車を売ること以外でもビジネスができるようになると思うんです。車が単なる移動手段ではなくて、ファッションの一部になったり、趣味になったり、音楽や映画の素材に使われたり...。娯楽になってライフスタイルの中に車が根付くことが、今見えているゴールです」。

2年目に突入する「Drive Your Teenage Dreams.」。次なる目的地に向かうこのプロジェクトは、どんな景色を見せてくれるのだろうか? 

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