「私は誰かを憎むことを拒む」。タイラー・ペリー、アカデミー賞の力強いスピーチで訴える

「メキシコ人だから、黒人だから、白人だから、LGBTQだから、警察官だから、アジア人だからという理由で、誰かを憎むことを拒みます」
第93回アカデミー賞で、ジーン・ハショルト友愛賞を受賞したタイラー・ペリー氏(2021年4月25日)
第93回アカデミー賞で、ジーン・ハショルト友愛賞を受賞したタイラー・ペリー氏(2021年4月25日)
Pool via Getty Images

映画監督や俳優、作家、慈善活動家など、様々な活躍を続けてきたタイラー・ペリー氏が、第93回アカデミー賞のジーン・ハショルト友愛賞を受賞した。

同賞は、人道的な活動で映画界の発展に貢献した人に贈られる。

ペリー氏は映画や舞台などの創作活動をしながら、警察官に殺された黒人男性の葬儀代を出したり、新型コロナウイルスで困窮する人に食料品を購入したりするなど、社会で弱い立場にいる人たちを助けてきた。

プレゼンターを務めた俳優のヴィオラ・デイヴィス氏は、ペリー氏のことを「人への思いやりを体現する人」と表現。

「近隣住人のために食料品を買ったり、シェルターに避難した女性を助けたり、苦学生に匿名で学費を払ったりしてきた」と紹介した

「誰かを憎むのをやめよう」力強いスピーチで訴える

受賞スピーチで、ペリー氏は人種差別を受けて育ってきた自分の母親が言葉を紹介して次のように訴えた。

「私の母は人を憎んではいけないと私に教えてくれました。母は一面だけで人を決めつけてはいけないと教えてくれました。今の時代、インターネットやソーシャルメディア、アルゴリズムや24時間のニュースなど、ありとあらゆるものが、私たちを一つの考え方に導こうとします。だからこそ私は皆さんに、『憎しみを否定して、誰も憎んではいけない』ということを子どもたちに教えて欲しいと望んでいます」

「私は誰かを憎むことを拒みます。メキシコ人だから、黒人だから、白人だから、LGBTQだから、警察官だから、アジア人だからという理由で、誰かを憎むことを拒みます。私たち全員が憎しみを拒んで欲しい、と私は願っています」

そしてペリー氏は、受賞したジーン・ハショルト友愛賞を、周りの考え方に左右されずに「真ん中に立つ人」に贈りたいと述べ、その理由をこう語った。

「癒しは真ん中で起きるからです。会話は真ん中で起きます。変化が起きるのは真ん中なのです」

「この真ん中で私と会いたいと思う皆さん、憎しみを拒む皆さん、誰かを一面だけで判断することを拒む皆さん、裸足で歩く誰かを助けようとする皆さん、この賞はあなたのためのものでもあります」

映画の作り手としての域を超えた存在

アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーによると、ペリー氏は2019年にジョージア州アトランタに映画スタジオを設立して、多くの雇用を生み出した。

新型コロナウイルスの危機に見舞われた時には、スタジオの安全対策をいち早く講じて働ける環境を作り、従業員が困窮せずに済むようにした。

そんなペリー氏のことを「映画の作り手としての域を超えた存在」で「社会から見捨てられた人を助けてきた」と同アカデミーは讃えている。

ジーン・ハショルト友愛賞はこれまでに、アンジェリーナ・ジョリー氏や、オプラ・ウィンフリー氏、オードリー・ヘプバーン氏、クインシー・ジョーンズ氏なども受賞している

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