ヴが世界の国から消える。その理由とは? 外務省に聞いた

4月1日から公文書の国名表記が変わる。セントクリストファー・ネーヴィス ⇒ セントクリストファー・ネービス / カーボヴェルデ ⇒ カーボベルデ
Huffpost japan

4月1日から、ヴが消えることになった。

といっても、国内でヴの表記が禁止されるわけではないので、ヴィッセル神戸ヴィレッジヴァンガードのファンも慌てなくて大丈夫だ。

日本政府の公文書で、世界の国名の表記から「ヴ」の表記が消えることになったのだ。「セントクリストファー・ネーヴィス」と「カーボヴェルデ」という2カ国の名前が、それぞれ、セントクリストファー・ネービスとカーボベルデに変更される。

この2カ国以外に「ヴ」が使われている国名はないため、世界からヴが消えることになるのだ。

■「ヴを使用しているのは1冊のみだった」

政府が外国の国名を表記する際は、大使館の名称に沿うのが基本だ。この大使館名を変更する「改正在外公館名称位置給与法」が3月29日午前、参議院本会議で全会一致で可決され、成立した。

なぜ「ヴ」が消えたのか。ハフポスト日本版は、今回の法改正を担当した外務省官房総務課の八幡浩紀さんに取材した。

―― 今回、ヴが消えたのはどんな理由ですか?

国名の表記に関しては「現地の発音に合わせる」のが基本ですが、その一方「わかりやすさ」も重視しています。両国の外相が2018年に数年ぶりに来日したことがきっかけで、特に先方から要請があったわけではないですが、名称を再検討することになりました。

国民にとって馴染みのある表記を調べるために、流通している辞典など9冊の資料を参照したところ、「ヴ」を使用しているのは1冊のみで、残りの8冊は使用していませんでした。それで表記を変更する必要があると判断しました。

―― 地図帳など民間での国名表記も変更が必要になるのですか?

今回の法改正は、飽くまでも在外公館の名称を変更するものです。そのため、民間での国名表記定めるものではありません。ただ、政府としての呼び名が変わるので、一つの判断材料にはなるかなと思っています。

―― 両国の政府には通知したのですか?

飽くまでも日本国内での発音表記の変更なので、両国には通知していません。ヴに関しては2003年にも「ヴェネズエラ」が「ベネズエラ」に、「ヴィエトナム」が「ベトナム」に変更するなど、外務省としても使用する国名が少なくなっていました。そうした流れによるものと理解していただけると思っています。

■「ヴ」が消えるのは2カ国、どんな国?

ちなみに今回、国名表記が変わる両国はどんな国だろうか。

セントクリストファー・ネーヴィスの首都「バセテール」の写真
セントクリストファー・ネーヴィスの首都「バセテール」の写真
mikolajn via Getty Images

まず、セントクリストファー・ネーヴィスは、カリブ海に浮かぶ島国だ。セントクリストファー島とネイビス島の2つの島で構成されており、面積は260平方キロメートル。日本の西表島ぐらいのサイズで「ミニ国家」と呼ばれること多い。

1983年にイギリスの自治領から独立。サービス産業中心経済だが、好調な観光業や建設業に後押しされ,経済成長を続けている。

日本の外務省によると公用語は英語で、国民がアフリカ系が9割を占める。2017年の人口は5万5000人。同年10月現在の在留邦人は5人だ。

国土内には日本の大使館はなく、隣国の在トリニダード・トバゴ大使館が兼務している。

カーボヴェルデのサン・ヴィセンテ島にあるミンデロの町
カーボヴェルデのサン・ヴィセンテ島にあるミンデロの町
Franck Guiziou via Getty Images

次にカーボヴェルデだが、アフリカ大陸のセネガルの沖600~900キロの大西洋上にある島国だ。

10の島(そのうち 1島は無人島)といくつかの小島からなるという。面積は4033平方キロで、日本の滋賀県ほどのサイズだ。2015年の人口は52万1000人。

ポルトガル領だったが、1975年に独立した。ポルトガル人とアフリカ人の混血が、国民の約70%を占めている。経済は農業・漁業と大陸間航路の中継補給地としての港湾サービスを柱として、コーヒー、バナナ、魚などを輸出している。

日本の外務省によると2017年10月現在の在留邦人は0人だという。こちらも国土内には日本の大使館はなく在セネガル大使館が兼務している。

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