本田圭佑を現地紙が「不可解なオブジェ、UFO」などと酷評する3つの要因

8日ナポリ戦で招集メンバーから外れた本田圭佑。期待値が高い選手だけに、現地紙では特集が組まれた。そこにあるのはあまりに厳しいものだった。だが、なぜ彼はそこまで評価を下げたのだろう。ガゼッタの文脈から読み解いていく。

8日ナポリ戦で招集メンバーから外れた本田圭佑。期待値が高い選手だけに、現地紙では特集が組まれた。そこにあるのはあまりに厳しいものだった。だが、なぜ彼はそこまで評価を下げたのだろう。ガゼッタの文脈から読み解いていく。

■要因(1):パフォーマンス「ミサイルのようにスタートしたが...」

8日付のイタリア最大紙「ガゼッタ・デロ・スポルト」紙は胃腸炎でナポリ戦の招集メンバーから外れたACミラン本田圭佑の特集を行い、ここまでのチームへの適応具合とパフォーマンスを酷評している。

紙面の見出しは「本田のミステリー 今日はウィルス、明日は数多くの疑問が」とネガティブなものだった。記事の内容は更に薄暗いものとなる。

論調は以下のものだ。

本田圭佑は(彼のせいではないが)ミランに数ヶ月遅れて加入してきた。何十人もの記者を引き連れ、何かの野望を持っていた。最近ではイタリアを訪れる記者も減り、新聞の一面の見出しもほとんどなくなった。彼の野望は困難の壁によって打ち砕かれた。

こんなに高い壁だとは彼も想像していなかった。本田はミサイルのようにスタートした。(デビュー戦の)サッスオーロ戦では小さな悪夢の中にいるミランで、問題を解決できる選手だと思えた。数日後にはイタリア杯のスペツィア戦でゴールを決めたが、その後無名の選手となった。昨日、数日前にはカカがかかった胃腸炎になった。

大きな期待を寄せ、移籍前から大幅な紙面を割いていた新加入選手を加入わずか1ヶ月で「無名の選手」と断罪してしまうのは、毀誉褒貶激しいイタリアメディアと言わざるを得ない。最近の公式戦で本田は確かにパフォーマンスの低下を露呈していたが、それは戦術面の問題もあるという。

■要因(2):ポジション「カカと本田はサイドが最適ではない」

「問題」と題された次の段落では、クラレンス・セードルフ監督の標榜する4-2-3-1システムについてメスを入れていく。

本田の胃腸炎がミランの戦術的な疑問が顕在化することをストップした。セードルフ監督はナポリ戦でも(前節機能不全だった)トリノ戦のようなクリエイティブなトリオ(右本田、中央カカ、左ロビーニョ)を起用することは実際に疑問だった。

このトリオは自然とはいえない。チームの守備面にも大きな影響を与えている。まさに本田とカカのポジションはお互いに気をつかわなければいけない。カカのポジションはサイドが最適ではないし、本田も同じこと。

しかし、2人のうち、どちらかはサイドにしなければならない。適応と連動には時間がかかる。セードルフのチームはまだ工事中だ。目指しているのは、ベニテス監督の実践するような魅力的なサッカー。

とてもポジティブでアイデアに満ちあふれたサッカーが目標だが、しかし今このプロジェクトには、本田は不可解なオブジェになっている。UFOはあちらこちらに着地し、適切なポジションがまったくみつからない。セードルフは継続性を追求しているので、いいニュースではない。クラブの強化部も監督を協力しながら支えるというのは強い決定事項であるから。

今度は、不慣れな右サイドで不確かなポジショニングから、そして、日本代表で務めるトップ下の役割を与えられないことから、本田は未確認飛行物体「UFO」扱いされている。1トップ下に3選手が並ぶ現行のシステムは時に流動性を見せている。

トップ下のカカがサイドに流れ、本田が中央に進出することもあるが、残念ながら効果的な崩しにはつながっていない。カカと本田はどちらもサイドアタッカーではないし、ディフェンスな労力を割くタイプではない。セードルフ監督には看過できない戦術上の問題となっている。

■要因(3):セードルフ構想の変化「本田ら4人で1つのポジションを争う」

そして、最後の段落では「環境」というテーマで本田の今後を占っている。

胃腸炎が治ったら、セードルフの圭佑に対する処遇と構想は、よりはっきりするだろう。しかし、現在の彼の株価は下がった。セードルフのミランは具現化されつつある。就任当初のメンバーでは構想を前進させることができないことはもはや明確である。

1トップを変え、中盤も変える。モントリーボが2ボランチから出て、トップ下のトリオに入る可能性がある。キャプテンとナンバー10を排除することはいささか重いテーマだ。しかし新システムで、この2人のポジションの疑問は残る。

サポナーラはモントリーボよりも有利な位置にいる。ウィルスから治ったカカのポジションで出番を得ることからもそれは自明だ。(トップ下の3人で)唯一アンタッチャブルなのはカカ、そして(新加入の)ターラブはセードルフから祝福を受けて獲得した選手。

ロビーニョ、本田、サポナーラ、モントリーボは1つのポジションを巡り、毎試合競争しなければならない。このシナリオは本田の頭にはなかっただろう。本田はすでにCSKAモスクワで今季プレーしているのでチャンピオンズリーグには出場できない。

今日は胃腸炎で外れた。明日は様子をみよう。本田は金の幌馬車に乗ってミランに来たが、今は自転車に乗って、坂道を登らなければならない。

■評価高いターラブはナポリ戦に先発か

本田の厳しい現実がひたすら綴られている。ガゼッタはやはりカカだけは不動のレギュラーと見ている。そして、最近のすっきりとしないパフォーマンスで本田株は下落したという。

セードルフ監督の肝いりで獲得したモロッコ代表MFアデル・ターラブは本田よりも優先順位が上がったとも分析している。ガーナ代表のマイケル・エッシェンの加入により、イタリア代表MFリカルド・モントリーボもボランチからはじき出され、攻撃的MF要員となる可能性も指摘している。

当初は話題にも上がらなかった、本田のレギュラー争いはもはや現実なのだろう。鳴りもの入りでミラン加入した当初が「金の幌馬車」というなら、背番号10の現実は「自転車」。状況的にはかなりの急降下である。カルチョの世界ならでは残酷な論評を封じこめるには、やはり文句なしの活躍しかない。今は重いペダルを必死にこぎ続けるしかないだろう。

【トリノ戦 スターティングメンバー】

アッビアーティ

デ・シリオ ボネーラ ラミ エマヌエルソン

ムンタリ モントリーボ

本田 カカ ロビーニョ

パッツィーニ

【ナポリ戦 予想スタメン】

アッビアーティ

デ・シリオ ラミ メクセス エマヌエルソン

エッシェン デ・ヨング

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(2014年2月8日「フットボールチャンネル」より転載)

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