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2018年03月09日 10時29分 JST | 更新 2018年03月09日 10時29分 JST

「世界一危険」な台湾「ロケット花火祭り」を体験!--野嶋剛

台湾一危険なお祭り。

A participant wearing a motorcycle helmet gets sprayed with firecrackers, during the 'Beehive Firecrackers' festival at the Yanshui district in Tainan, Taiwan March 2, 2018. REUTERS/Tyrone Siu     TPX IMAGES OF THE DAY
Tyrone Siu / Reuters
A participant wearing a motorcycle helmet gets sprayed with firecrackers, during the 'Beehive Firecrackers' festival at the Yanshui district in Tainan, Taiwan March 2, 2018. REUTERS/Tyrone Siu TPX IMAGES OF THE DAY

 3月1日、台湾南部の台南市塩水で行われた「塩水ロケット花火祭り」(3月1~3日)に出かけた。発射されるロケット花火の総数は60万発、放たれる爆竹は数え切れない。「台湾で1番危険なお祭り」「世界10大危険イベント」などと評される激しいお祭りで、近年、台湾内外の人気を集めており、人口3万人の小さな町に台湾中から数十万人の怖いもの知らずが駆けつけるほどの過熱ぶりである。

疫病落としの縁起かつぎ

塩水は「意麺」と呼ばれる乾燥麺の産地として知られる古い港町。お祭りは、新年の最初の満月にあたる元宵節に行われ、夕方から翌日未明まで続く。古くは町で流行したコレラなどの疫病落としの縁起をかついで始まったもので、町中を練り歩く神様に向けてロケット花火を打ち込むことで、疫を神様に預けてしまおうという願いが込められている。もともとは爆竹だったのが、いつの間にかより派手なロケット花火に切り替わったところが台湾らしい。

 塩水は台南市だが北側にあるので、台南の北にある嘉義から行った方が近い。台南の友人が案内してくれることになり、台湾新幹線の嘉義駅まで車で迎えにきてもらった。そこから30分ほどで塩水の市街地に入れる。

 午後7時ごろに到着すると、すでに町中がロケット花火と爆竹と打ち上げ花火によって燃え上がるような不夜城の輝きを見せており、あちこちで爆発音が鳴り響いているなか近づいていくと、いやが応にもテンションが高まる。

 祭りは、まずは「武廟」という『三国志』の英雄「関羽」を祀る町の信仰の中心になっている場所から、何体かの神様が出発して市内を練り歩く。その神様をめがけ、各地区の人々が作り上げた砲台(発射台)から無数のロケット花火が発射される。その様子は、かつて私が従軍取材したアフガン戦争で見かけたゲリラによる小型ロケット砲の一斉発射を思い起こさせた。

 お祭りは、基本的にとてもシンプルだ。やることと言えば、町中のあちこちで住民が備え付けた砲台から、神様を乗せたお神輿をめがけてロケット花火を発射させるだけ。

 ただ、その本数が桁違いなことと、ロケット花火に当たるとこの1年の厄除けになると信じられているため、台湾中からそのご利益をもとめて駆けつける。さらに最近は怖いもの見たさの若者や外国人観光客も多い。

被弾覚悟で

 ロケット花火の発射台は、高さ2~3メートルほどの台座を数層に分け、それぞれの層にロケット花火を挿し、導火線を巻き付けていく。ロケット花火がきちんと飛ぶためには45度の発射角が望ましい。1つの層に挿すロケット花火の本数は決められており、健康で長生きを象徴する120本だという。

発射台には荷台型と人形型の2タイプある。荷台型だとロケットは予想される方向に飛んでくれるのだが、人形型になると、ロケット花火は四方八方に散っていくのでさらにエキサイティングになる。

 このお祭りには、2つの楽しみ方がある。

 1つは、ある程度の安全距離を図りながら、ロケット花火と爆竹の炸裂を見て楽しむことだ。つまり、一歩下がって観客として楽しむ方法だ。

 もう1つは、被弾覚悟で砲台にできるだけ接近することだ。フルフェイスのヘルメットを被り、首にタオル、口にマスク、長袖、長ズボンに軍手をはめた完全装備に身を包む。会場に近づくと、観光客目当ての大きなナイトマーケットがあり、これらの装備をセットで買うことができる。1セットで500元(2000円弱)あれば十分だ。言わば、お祭りの参加費のようなものだ。

 私はもちろん、この被弾覚悟のスタイルで参加した。

怪我人が続出

 初めての参加なので、最初は少し甘く見ていたのだが、すぐに間違いであることに気づいた。ロケット花火を打ち上げる前に、爆竹が鳴らされる。まずあまりの爆竹のうるささに耳が遠くなった。フルフェイスでないと鼓膜が破れる人が出るというのもわかった。

 面白かったのは、ロケット花火がぶつかってくる場所にいる人たちがみんな小刻みに体を動かしていることだ。止まっている状態だと、当たりやすいうえに当たったら衝撃がしっかり伝わってくるので、動いている方が痛くないのだという。本当かどうかわからないが、私も一生懸命、体を揺すって耐えた。

 荒れ狂うように飛び交うロケット花火が体にぶつかり、火花で目の前が見えなくなる。頭部や上半身はかなりしっかりガードしていたので大丈夫だったが、薄手のトレーナーをはいていた下半身は火花で火傷したかと思うほど熱かった。衣服は上下とも火薬や火花で黒いシミがあちこちについており、その激しさをうかがわせた。

 夜のニュースでは、今年も怪我人が続出したことを報じていた。死者が出ないだけまだ良かったと言うべきか。

 混乱のなかで、「うわあ」「あちい」「やべえ」といった日本語もあちこちで耳にした。近年はこの「塩水ロケット花火祭り」の知名度が上がり、このために台湾を訪れる人も増えているという。確かに、こんなにスリルを感じられるお祭りは、日本ではなかなか体験できないだろう。台南市政府観光旅遊局による日本語のホームページも、今年から設けられている。

 塩水へは、日本から朝の飛行機で台北か桃園に飛べば、夕方には楽々、到着することができる。新幹線駅から現地までは、タクシーかレンタカーがオススメだ。近くの嘉義や台南に泊まってもいいし、塩水からは台湾新幹線嘉義駅まで車で30分ほどなので、その日のうちに台北に戻ることもできる。来年の「台湾一危険なお祭り」に、安全には万全の配慮をして参加してみてはどうだろうか。

 なお、私が撮影した動画はこちらのサイトで見られる(視聴の際は激しい点滅と爆音に注意)。(野嶋 剛)


野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
関連記事 (2018年3月8日フォーサイトより転載)