ニューヨークの地元紙「デイリー・ニュース」電子版が、ヤンキースの田中将大投手がメジャーリーグに早期適応するために乗り越えなければいけないハードルについて特集し、話題となっている。
■田中将大が乗り越えなければならないハードル
ニューヨークの地元紙「デイリー・ニュース」電子版が、ヤンキースの田中将大投手がメジャーリーグに早期適応するために乗り越えなければいけないハードルについて特集した。
この特集では日本のプロ野球で助っ人としてプレーしたことがあり、かつ、ヤンキース在籍経験を持つ2人の投手の証言を紹介している。
2004年にヤンキースに在籍し、2007~08年にソフトバンクでプレーしたクリストファー・ニコースキー元投手は、日米両国の異なるピッチング哲学に対応するために、気持ちの切り替えの必要性について指摘した。
「たとえ、ヒットを1本も許していなくても100球程度でマウンドを降りなければいけない状況を受け入れなければいけない。日本の野球では悔しくて恥ずかしいことかもしれないけれど、メンタルを切り替える必要がある」
楽天で鉄腕の名前をほしいままにした田中は、昨年の日本シリーズ第6戦で160球を投げた直後の第7戦でリリーフを務め、楽天の日本一に貢献した。しかし、メジャーの球団では危険な連投は許されない。ローテーションを守ることが至上命題なため、完封ペースでもベンチに下がる場面も出てくる可能性もある。その際は悔しさや歯がゆさもあるかもしれないが、メジャーでは次の登板をすぐに見据える必要があるという。
さらにニコースキー氏は日米投手陣の習慣の違いにも触れている。日本では「投げ込めば投げ込むほどいい」と指導されたと振り返り、「ブルペンで一番投げた選手が世界一のタフガイとされる」と大げさに日本流を紹介。球威と精度を高めるために投げ込みの重要性が高い日本とは対照的に、メジャーでは肩は消耗品というポリシーから、なるべく投球回数を制限しており、その違いを鮮明にした。
広大な面積を誇るアメリカでは、試合後に待ち受ける移動にも気をつける必要もあるという。日本には時差はないが、アメリカ国内には存在する。チャーター機を持たない日本の球団と異なり、メジャーの球団は試合直後に空港に直行。夜間飛行で次の試合に旅立つことが常だ。
「日本ではナイターの試合の翌朝に飛行機移動することになるので、午前3時にどこかの空港に到着するということもない。メジャーでは新しい経験をするだろう。最初は慣れないかもしれない。ただ、彼は若いし、そこまで影響はないと思う」
ニコースキー氏はそう分析する。
■元同僚・ラズナーが指摘するマウンドの違い
一方、06年から3年間ヤンキースでプレーし、昨年までの5年間楽天で活躍したダレル・ラズナー投手は日米のマウンドの違いを指摘している。「日本のマウンドは単に砂が堆積しているだけ」と日本のマウンドの柔らかさを証言。対照的に、アメリカのマウンドは固い。その違いのために、投球時の踏み込みに相当な違和感がありそうだが、「田中はMLBのマウンドで球速が上げることができると思う。彼のピッチングは日本にいた時よりも良くなると思う」とラズナーは新天地でのピッチングにプラスに働く可能性を指摘する。より力強く踏み込めることによって、球威が増すという効果が望めるのかもしれない。
また、ラズナーは日米の公式球の違いについても指摘した。「日本のボールの方がメジャーよりも扱いやすい」とラズナーは語る。メジャーの公式球の方がわずかに大きく、滑りやすいというが、ラズナーは昨年楽天で共闘した田中がロッカールームで座りながら、「メジャーリーグ公式球を握り、感触を確かめたりしていたのを見た」と証言。新天地に挑戦する準備を進めていたようだ。
「彼自身もメジャーに対する知識を持っていたし、挑戦する準備はできていたと思う」
昨シーズンまで田中とロッカールームなどで話す機会も多かったラズナーはかつての戦友の新天地適応に太鼓判を押した。
ヤンキースのラリー・ロスチャイルド投手コーチも、ラズナーに同調している。イチロー外野手と黒田博樹投手というプロ野球からメジャー挑戦という同じ道を歩んできた日本人選手2人の存在を挙げながら、「彼がヤンキースにやってきた時に、適応するには何をすればいいのか、手本にできる存在がいる。適応の時間は短くなると思う」とも語っている。
確かに、偉大な先輩の普段の振る舞いや会話から学ぶことは多いだろう。田中には一刻も早くメジャー文化に適応し、7年1億5500万ドルという条件に相応しいピッチングを見せてもらいたいものだ。
【関連記事】
(2014年2月8日フルカウント「【米国はこう見ている】日本球界とヤンキースを知る2人の投手がマー君の前に立ちはだかる「壁」を指摘」より転載)