■「孫に話さなければならないのに、ボールがないなんて...」
ヤンキース・田中将大投手のメジャー初登板となった1日のオープン戦、フィリーズ戦で、マー君から初ヒットを打ったダーリン・ルフ一塁手が名投手から記録した初安打の"偉業"を孫の代まで語り継ぐことを明かした。ESPNが報じた。
日米のテレビ局で生中継された田中のデビュー戦。5回からマウンドに上がった田中と最初に対峙したルフは2ストライクと追い込まれた直後、センター前に詰まりながらヒットを打ち返した。7年1億5500万ドルの大型契約で楽天からヤンキースに加入したゴールデンルーキーにメジャーの洗礼を浴びせた格好だ。
「あの時はそこまで歴史的なことだと思わなかったんだ。なんてこった、打ったボールも持っていない。孫に話さなければいけないのに、ボールがないなんて......」
ルフは冗談を交えながらも、残念そうだった。
結局、2イニングを投げ、2安打、3奪三振、無失点と上々の出来だった田中について、ルフはこう語っている。
「個人的にはいい経験だったよ。スプリングキャンプでのメジャー初登板で相当、注目されていたと思う。全世界が見ていることも分かっていた。5回の半分ぐらいはそんな感慨に耽っていたよ。打席でもワクワクしていた。スプリングキャンプ中の打席ではそうそう興奮することなどない。でも、(田中にとっては)メジャーで初めて投じる打者だったのだから、いつもの打席よりもすごく注目されていたと思う」
■「あのスプリットはすごかった」
昨年、楽天で記録したリーグ戦24勝無敗という数字のインパクトのせいか、あるいは、メジャー投手史上5位の大型契約のせいなのか。いずれにしてもマー君がすでに対戦相手から絶大なリスペクトを受けていることは間違いないようだ。
一方、6回に三振に切って取られたドモニク・ブラウン外野手は「彼がいいことは分かっていた。理由もなしにあんな大金をゲットできるわけがないからね。正直、球界の誰もが以前から田中についてよく知っていたと思う。どうしようもないことだけれど、冬の間は彼の話題で持ち切りだったから」と語った。
メジャーで一番の話題となっていた田中の決め球については、「あのスプリットはすごかった。ストライクのように思えるけど、プレートの手前で急に落ちる。私のようなスタイルの打者は、あのボールを十中八九、振ってしまうと思う」とお手上げ状態だった。
田中のあまりの前評判の高さゆえに、打者も多少なりとも浮き足立っていたようだ。5回にレフトフライに倒れたキャメロン・ラップ捕手は「1球目に何を投げたのか、さっぱり分からなかった。ボールも見えなかった。(空振り直後)頭はレフトを見ていたよ」とマー君のオーラに飲み込まれたかのようだった。
また、「彼は相当、気合が入っていたように思えた。だから、こちらもギアを入れたけど、少し遅かった」と闘志を前面に押し出すそのピッチングスタイルに気圧されたことを告白しながらも、「日本のテレビにちょっと出ることができたね」と日本球界への露出は嬉しそうだった。
メジャーの打者すら平常心ではいられないのだから、"マー君現象"とでも言うべきか。マー君のメジャー初マウンドを振り返る対戦打者の証言は、いずれも興味深いものだった。
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(2014年3月3日フルカウント「【米国はこう見ている】オープン戦初登板の田中将大と対戦した打者の証言 初安打のルフは孫の代まで語り継ぐ?」より転載)