NHK『クロ現』やらせ NHKは民放よりも甘い!(2)民放ならすぐにバレたはず

今回の『クローズアップ現代』でのやらせ・捏造疑惑。同じことをやろうとしても民放では難しかっただろうと思われる。多くの人は疑問に思うだろう。一体なぜだろうか?

『クロ現』のやらせ疑惑で、NHKが民放よりも甘い点 第2弾。

今回の『クローズアップ現代』でのやらせ・捏造疑惑。同じことをやろうとしても民放では難しかっただろうと思われる。

民放では難しく、NHKだからこそできたのではないのか、と思う。取材を行なったN記者が週刊誌で報道されている通りにやらせを主導したとしても、民放であればかなりの確率で周囲にバレていたといえる。

民放では、多くの場合は事前にバレて、やらせの放送は実現しない。

多くの人は疑問に思うだろう。

娯楽番組を流している時間の方が圧倒的に多い民放の方が「やらせ」が難しいなんてー。

実際、BPOが審議するような「やらせ」などの問題になる放送の多くはNHKよりも民放で起きているのも現実だ。

だが、報道の現場に関する限り、少なくともこの数年以内の間であれば、今回の『クロ現』のような大胆なやらせ行為は民放局では相当に実行が難しい。

一体なぜだろうか?

周囲のスタッフが止めるからだ。

民放ではこの数年ほどの間に、一人が「やらせ」「捏造」を意図したとしても、他のスタッフによる牽制や監視によって、それが防止しようとするメカニズムが働くように次第になってきた。

特に、関西テレビ、東海テレビ、日本テレビなど、比較的最近、BPOで審査されたり、その結果として「放送倫理違反」などを 指摘されたような局は、再発防止策をきちんと立ててあり、同じようなことがあった場合にどうすべきかを繰り返し研修している。

もちろん、それによって「2度と手は出しません」というふうに100%やらせがなくなるわけではない。

しかし、ある程度の効果は出てきてもいる。

2007年に関西テレビ『発掘!あるある大辞典2』で、データなどの情報が誇張されていたり、捏造されていたりしたことがわかった。

そこで関西テレビでは、この事件後に二度とやらせや捏造などをしないように、他局に比べてもくわしい「番組制作ガイドライン」を作成している。そこでは、

やらせと虚偽・捏造

などについて、過去の実例が出ている。

また関西テレビでは外部講師などを招いて、報道や制作にかかわる社員やスタッフの放送倫理の向上を目的とする研修会を時折、開いていて意識の向上に努めている。

2012年11月末、同社のニュース番組は、大阪市の職員が規定に違反して兼業しているという実態を、そうした実態を知る告発者の

匿名インタビューを元に特集で放送した。ところがこのニュースのVTRに出てくる告発者のインタビューは、声は当人のものであったものの、その姿は撮影スタッフの1人のものであることが判明した。

外見だけであっても虚偽の映像を使ったものとして、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会から放送倫理違反とされた。

この事案は、あの『発掘!あるある大辞典』で問題を起こした関西テレビが再び不祥事、という意味ではかつての事件の教訓が生かされていないという批判を受けたが、他方で、撮影について違和感を抱いて問題を最初に指摘したのがカメラマンであったことから、'''『あるある事件後の教訓や研修が生きた、という評価する放送関係者も少なからず存在する。'''

他の民放でも記者やディレクターによる取材が放送倫理上、問題があると思われる場合、カメラマンならカメラデスクなどに報告するように指導されているテレビ局は多い。

つまり、NHK『クローズアップ現代』のようなケースで、仮に記者が確信犯で「やらせ」行為に加担していたとしても、カメラマンら他のスタッフがチェックして「おかしいのではないか?」と声を上げるケースが民放では実際に多いのに、なぜ今回『クロ現』ではそうならなかったのか、という疑問が生じることになる。おそらく民放、なかでも関西テレビだったら、記者が同じようなことをしてもカメラマンが上司に告発して、放送前に問題になって、止められていただろうと想像される。

筆者もNHKの報道番組制作におけるチェック体制の厳しさは民放の比ではなく、何重ものチェックが行なわれている実態を知っている。

それにもかかわらず、今回、『クロ現』でやらせや捏造にあたる行為が発覚したのはなぜなのか。

なぜNHKが放送前にチェックできなかったのかを今後も検証していかねばならない。

ただ、当該のN記者に関しては、以前、行なっていた取材についても疑わしい点が少なからず出てきている。

そうした点で、過去のN記者の取材に関しては、カメラマン、音声マンなどの撮影スタッフや関与した制作会社も含めて、徹底した調査をしていく必要があると思う。

ひょっとして、N記者に協力した制作会社があるのではないか。

そうしたところまで調査を広げないと、『クロ現』やらせ事件の全貌はわからないと思う。

(2015年4月16日「Yahoo!ニュース 個人」より転載)

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