フローレンスは2017年3月27日、健康増進法改正(通称・受動喫煙防止法)に関して、塩崎厚生労働大臣に要望書を提出しました。賛同者として、慶應大学 総合政策学部 准教授 中室牧子先生、産婦人科医の宋美玄先生、元世界保健機関たばこ規制部長・日本対がん協会参事 望月友美子先生が集ってくださいました。
子どもたちが成長の過程で出会う多くの困難の中で、たばこは最初に遭遇する深刻な健康上のリスクです。たばこは喫煙者本人のみならず、周りのたばこを吸わない人々の健康も損ない、年間14.5万人(受動喫煙1.5万人・能動喫煙13万人)の命を奪います。
また、子どもたちは成長した大人よりも有害物質や有害行動への感受性が高く、自らの意志でそのような環境から逃れることのできない弱く無防備な存在です。これらのことから、子どもたちに健やかな未来を約束するためには、子どもや妊婦を含むすべての人々をたばこから守るための社会環境の整備が不可欠です。
しかし、現在審議中の健康増進法改正においては、そのような観点から次世代の子どもたちを守る方策についてはほとんど議論されておらず、禁煙環境の整備において例外を認めることは、そこに従事する従業員や顧客として訪れる弱者(子どもや妊婦、患者を含む)をたばこの煙という発がん性と有害性において「閾値のない」化学物質の充満する汚染空間にさらすことを容認するものです。
2016年、厚生労働省が発表した「たばこ白書」では、受動喫煙と乳幼児突然死症候群(SIDS)や喘息との因果関係が十分な証拠を持って明らかにされたところであり、これまでの調査研究で示されたリスクの大きさ(両親の受動喫煙による乳幼児突然死症候群の発症は受動喫煙のない子どもに比べて4.7倍、ぜんそくによる入院率は1.43倍〜1.72倍)を裏付ける結果となりました。また、受動喫煙被害によって、子どもたちの知能が低下するという研究もアメリカでは発表されています。
厚生労働省の国民健康栄養調査や21世紀出生児縦断調査によって、子どもを持つ世代の喫煙率は近年低下してきたとはいえ、いまだ父親の約4割、母親の約1割が喫煙を続けています。公共空間における禁煙環境の整備はこのような親の世代の禁煙を促し、受動喫煙を回避できることから、家庭と社会の両面から子どもたちをたばこから守ることになります。
フローレンスでもこうした危険性から、お子さんを安全にお預かりするためにもスタッフは喫煙習慣が一切ないことを採用条件とし、両親が喫煙される場合は病児保育サービスの入会を制限しています。フローレンスは児童福祉を担う事業者として子どもたちの命を守るためにも、「例外のない受動喫煙防止法」の成立を要望します。
(2017年3月27日「駒崎弘樹公式サイト」より転載)