エレベーターに乗り合わせた短い時間で自分を売り込む方法~エレベーター・ピッチ

エレベーターに乗り合わせた短い時間で、自分の製品や自分を売り込むことを意味しており、どこで読んだか忘れてしまったが、たとえば、バフェット氏はそうやって知り合った相手に後日大きな投資をしたことが実際にあるそうだ。

photo by Gideon Tsang  

 最近まで知らなかったのだが、『エレベーター・ピッチ』という言葉があるそうだ。

 エレベーターに乗り合わせた短い時間で、自分の製品や自分を売り込むことを意味しており、どこで読んだか忘れてしまったが、たとえば、バフェット氏はそうやって知り合った相手に後日大きな投資をしたことが実際にあるそうだ。

 そういえば、僕にも何度か、そういうチャンス、いわゆるビッグマンに自分のやっていることを売り込むチャンスがあった。

 だが、うまくそのチャンスを活かし切ったとはとても言えない。もともと口下手で、話すときの自分の印象があまり良くないということに加え、極力短い時間で伝えきるという練習をしたことがなかったために、みすみすチャンスを逃してしまった気がするのだ。

 チャンスは不意に訪れる。

 今度のチャンスは必ずモノにしたいものだ。そこで、自分のためにも、いわゆる『エレベーター・ピッチ』について知ったことをまとめておきたいと思った。

 僕の好きなGeoffery Jamesさんも何度かエレベーター・ピッチについて書かれており、この記事がまとまっていてわかりやすい。

 そのノウハウが三点にまとめられている。

 1.ベネフィット

 2.差異(The Differentator)

 3.ASK

 「ベネフィット」とは、一言でいえば、話す相手にとって「どんなオトクがあるのか」ということだ。

 それをできれば、数値などを織り込んで具体的に述べる。

 たとえば、もっとも簡単な例で言うなら、「うちの◯◯を使えば、電気代が8%削減できます」のようなセリフである。

 エレベーターで乗り合わせたような短い時間で相手の興味を惹きつけようとするなら、たしかに、相手にとってどんなメリットがあるのかということを、簡潔に、説得力をもって伝える以外にない。

 そして、僕は最近気がついたのだが、この項目のうち、「話す相手にとって」と言うところも重要なポイントなのだ。

 相手が顧客である場合と、たとえば、相手がメディアの人である場合、相手に期待することも変わるし、相手にとってのメリットもまた異なる。

 上に挙げたトークの例も、相手がメディアの編集者などであれば、心に響かない。相手の感心は、電気代を削減することではなく、自社メディアにふさわしいネタ探しに向いている。だから、正しいトークの入り方は、「まだメディアで報道されていない方法で、電気代を8%削減できる製品を売っていて、お客さんの反響が凄いんです」というようになる。

 「差異」というのは、Jamesさんがおっしゃるように、「それがほかの製品やほかの人とどこが違うのか。なぜ、ほかの製品、ほかの人ではなく、あなたの製品、あなたなのか」を伝えることだ。

 競合相手とどこが違うのか、ほかの誰かではなく、自分を選んでもらうメリットがどこにあるのか、をベネフィットと同じように具体的な数値をもとに説明できるのがベストだ。

 「ASK」のところが、Jamesさんのこの記事のなかで、一番気づかされた点だ。

エレベーター・ピッチで最悪の間違いは、販売までもっていこうとすることだ。いくらなんでも、早すぎる

 Jamesさんは、たとえば、エレベーター・ピッチの最後に、「興味をもたれたら、ここにお電話ください」と言って名刺を渡したり、「では、プライスリストを送っておきますね」と言うようなことを、間違いの例にあげておられる。

 わずか2,3分喋っただけで、販売のクロージングにもっていこうとするのは、あまりに早計であるというのである。

 正しい方法は、「ASK」(訊ねる、お願いする)という方法だという。つまり、名刺を渡す代わりに、「お話の続きをさせていただきましょうか?いつでしたらお電話してもいいですか?」とASKする。

 たしかに、名刺を渡して連絡してくださいと言ってしまうと、ボールは相手に渡ってしまい話は途切れてしまう可能性が高い。

 だが、連絡してもよいという承諾を得ることに成功したら、エレベーター・ピッチを手がかりに、さらに詳しい商談に入っていくことができるのである。

 Jamesさんの記事を読んで、なるほどと思った。

 たとえば、僕がエレベーターでほんの少し面識のある女性と乗りあわせて、彼女がたまたま和服を着ているとする。

 エレベーター・ピッチの理想形はこんな感じだろうか。

「素敵なお着物ですね!加賀友禅でしょう?」

「あら、おわかりになる?」

「はい、リサイクル着物屋ですから。ああ、お高かったんでしょうね、これほどの仕事!うちはリサイクルですから、その何分の一で(ベネフィット)しか売ってませんけど」

「何分の一なの?」

「そうですね~新品とかわらないような、状態がとっても良いものでも、中古とか在庫処分品ならそんなもんです。僕がこんな性格なんで、傷みの状態なんかもどこよりもわかりやすく多くの写真で(差異)紹介してますよ」

「あら、それなら、こんど見せていただこうかしら」

 エレベーターとまる

「◯◯さんが、お好きそうなの選んでメールしてみてもいいですか?あっ、でもその前に、お電話でどんなお着物がお好きかお尋ねしてもいいですか?(ASK)」

「ええ、いいわよ。会社の方に電話してみて。じゃあね」

 うん、うまく行きそうな気がする!

 来年からやっと始めることができそうな、Kimono Archiveも、コレクターやディーラー、染織の専門家など、それぞれの相手によって異なるエレベーター・ピッチを考えておこうと思っている。

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