朝日新聞の伝えるところでは、公明代表、集団的自衛権議論を牽制「まず経済再生を」との事である。
公明党の山口那津男代表は2日、東京・新宿で街頭演説し、「まずは経済の再生、デフレ脱却を最優先課題として力強く進めていきたい」と訴えた。政権として経済を重視すべきだとの考えを強調して、集団的自衛権の行使容認をめざす安倍晋三首相を牽制(けんせい)した。
背景として下記3点が想像されるものの、率直にいってこの発言の真意が良く分らないのは事実である。
第一は、アベノミクスに一定の効果が表れ、結果気が緩み公明党が無責任な従来の野党の体質に先祖帰りしたというケースである。この場合はまだまだ前途多難であり、今一度気を引き締め直して欲しいというしかない。
第二は、衆議院では自民党が絶対多数を確保しているが、参議院では公明党と合わせ何とか過半数を確保している現状を踏まえ、公明党の存在感を自民党に対し誇示したというケースである。この場合は我が党大事の政局ごっこをやっている場合ではないというしかない。
最後は、公明党の支持母体である創価学会会員へのリップサービスの場合である。集団的自衛権行使を想定すれば、最悪の場合同盟国軍を守るために日本の若者が血を流す事もあり得る。一方、経済が良くなれば国民がすべからく幸せになるのは事実である。嫌な話は先延ばしにし、今を楽しむという事である。これは無責任な野党にありがちなポピュリズムであり、国内メディアはこの矛盾を論理的に説明した上で創価学会会員を啓蒙すべきである。
自民党、公明党が本来目指すべきものは「長期的な経済発展により可能となる国益の最大化」である。そして、これが可能となるのは先ず確たる安全保障が構築されている事、更にはアメリカを筆頭に世界が日本を信頼してくれている事が前提となる。そのためには、同盟国の軍隊が危機に際した場合にこれを支援する「集団的自衛権行使の認可」は必然である。
一方、従来の日本さえ平和であればよい、日本さえ豊かであれば良いといった、日本の痼疾ともいえる自己本位な「一国平和主義」では日本が世界の信頼を得る事など夢のまた夢である。内戦状態に陥ってしまった南スーダンでのPKO活動に自衛隊を派遣した様に、世界の平和と安定を達成するために日本は目に見える努力を継続する必要がある。こういった努力を積み重ねた後初めて世界は日本を信頼し、「成長戦略」は可能となる訳である。
日本を取り囲む状況を見誤り、創価学会会員の感情にのみ迎合するための政策を実施する事は、近視眼的且つ視野狭窄に起因する悪しきパフォーマンスに過ぎず、結果として国益を大きく毀損する事になるのは必至である。公明党は今一度原点に立ち返り、アメリカの軍事力にこれ以上タダ乗りする事は許されず、従って、日本にとって、「成長戦略」と「安全保障」は車の両輪である事を理解すべきである。