地球が1年間で再生できる水や食料、清浄な空気など、今年割り当てられている自然資源の「予算」が8月8日には使い果たされることが、国際環境NPO(非営利団体)グローバル・フットプリント・ネットワーク(Global Footprint Network/以下GFN)による報告書から明らかになった。この節目はアース・オーバーシュート・デー(Earth Overshoot Day)として毎年記録されているが、今年はこれまでで最も早く、昨年より5日早くなるとの事だ。
世界自然保護基金(World Wildlife Fund/WWF)フランス支部代表のPascal Canfin氏は、「8月8日の月曜日から、我々は"つけ"で生きていく事になる。なぜなら、我々は地球が1年間で再生産できる自然資本を、この8ヶ月で消費してしまうからだ。」とAFP通信に対して述べている。
年々早まっているアース・オーバーシュート・デー
地球資源1年間分の「予算」を我々が超過して消費する日は年々早まっている。
この「超過日」は1981年には12月14日だったが、1993年は10月21日、2003年は9月22日、昨年2015年は8月13日と、毎年のようにその早まりを見せている。
GFNによると、1960年代には人類は1年間で割り当てられた地球の自然資源の約4分の3しか使用していなかった。しかしながら、経済成長と人口増加を主な理由として1970年代からはこの超過日を迎えるようになり、年々早まるようになっている。
GFNは、「我々人類は、海と森林が吸収できる量よりも多くの二酸化炭素を大気中に放出しており、またその再生産と再成長よりも早く、海の恵みを枯渇させ森林を伐採している。」「エコロジカル・オーバーシュート(Ecological Overshoot=人間の消費量の方が自然の再生産量よりも上回っている状態)を引き起している最も急激な要因は、大気中への炭素の放出である。」と声明を出している。
現在のペースでいくと、地球資源に対する需要を維持し続けていくためには、地球1.6個が必要であるとGFNは見積もっている。また、もし地球上のすべての人がアメリカでの生活と同じような生活をする場合は地球4.8個が必要になり、また日本での生活と同じような生活をする場合は、地球2.9個が必要になる。その一方で、地球上のすべての人がインドでの生活と同じような生活をする場合は、地球の数は0.7個で済むとの事だ。
必要な地球の数を表した図(GFN公式サイトより)
地球人口は現在の73億人から2100年には112億人にまで上昇すると考えられているが、人口の増加は地球資源を食い潰し、食糧生産のため多くの土地が利用されて、森林伐採の速度もますます加速することへと繋がる。水や石油といった貴重な資源を求めた争いが多発することも懸念されている。地球環境に更なる負担がかかることは、避けられない。
人類の希望である「パリ協定」--各国の取り組み
昨年11月30日から12月12日にフランス・パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)。この会議で成立した、2020年以降の温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定が「微かな望み」になると、GFNは主張している。
パリ協定の全体目標として掲げられた「世界の平均気温上昇を2度未満に抑える(1.5度に抑えることがリスク削減に大きく貢献することにも言及されている)」に向けて、世界全体で21世紀後半には人間活動による温室効果ガス排出量を実質的にゼロにしていく方向が打ち出された。
そのために、全ての国が温室効果ガス排出量の削減目標を作り提出することが義務付けられており、その達成のため国内対策を進めていくことも義務付けされた。
GFNは、多くの国が既に具体的対策を取っていることにも言及している。
例えば、コスタリカでは2016年最初の3か月間、97%の電気を再生可能な資源から生産している。一方で中国政府は、市民の肉消費量を50%減らすための計画を打ち出しており、これは中国の家畜産業から排出される二酸化炭素量を2030年までに10億トン減らすことに繋がると見積もられている。
2015年7月、日本は国連に「温室効果ガスの排出を、2030年度までに2013年度比で26%減らすこと」を実現可能な削減目標として提出しており、パリ協定の採択を受けて正式な国際公約となっている。「持続可能な世界」の実現のため、先進国としての役割が今、問われている。
記事執筆者:原貫太
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(2016年8月7日 政治解説メディアPlatnews「「人類は8月8日で今年分の地球資源を使い果たす」--国際環境NPOが警鐘」より転載)