ここ最近ぐんぐん愛好者を増やしている「トレイルランニング」。
トレイルラン&ランニングのギアショップを経営する桑原慶さんと、トレラン仲間である小松俊之さんを迎えた連載「How to トレイルランニング」、最終回となる第5回は、前回に続き、原宿のDESCENTE SHOP TOKYOで行われたお2人のトークショーをお届けします。
――トレイルランニングをはじめたら、そのうちレースにも出てみたいんです
桑原 まずは15~20km程度のレースから始めてみるといいでしょう。トレイルランニング経験が無くても、数か月あれば20kmのレースに、ちょっとしたロードランニングの経験がある人なら50kmレースにだって頑張れば間に合います。意外と走れちゃう。
小松 無理だと思ってたことができちゃうんです。大人になってからそういう経験ができるなんて、そうそう無いですよね。
桑原 しかも、完走したら皆がヒーロー。そこがトレイルランニングのレースのいいところ。ランナー同士に、タイムの早い遅いに関わらず"厳しいコースにともにチャレンジする仲間"と言う意識があります。
小松 僕は2012年のSTY(静岡から山梨の山を駆ける82kmのレース)で桑原さんを応援したとき、同時開催していたUTMF(富士山の周りをぐるり一周100マイル=約160kmを走る日本最大級のレース)を目の当たりにして「来年走る!」と思えてしまった。自分でも不思議なんですけど。そこから40kmレース、110kmのレース、と段階を踏んで挑戦したら本当に完走できました。
桑原 トレイルランでは頭のネジを外してみることも大事。「山を走るなんて自分には無理」という決めつけを捨てることが最初の一歩です。とはいえ、レース経験が無くて1年でUTMFを完走するというのはかなりハイペースで誰でもできることではないと思いますが(笑)
小松 とにかく「出たい」って気持ちが強かったんですよね。あきらめが悪かっただけ。長い距離がエラいわけじゃないけれど、100マイルレースは欧米ではロングディスタンスのスタンダードとなっているんです。160kmって聞くと途方もないですよね。でも、たとえばオリンピックは限られた人しか出られませんが......
桑原 100マイルは努力すれば誰でも走れる可能性がある。100メートルを10秒で走るのは無理でも、UTMFはアスリートじゃなくても完走できるんです。僕がトレイルランニングをやっていて思うのは、人間の長距離走ることに対するポテンシャルのすごさ。UTMFの完走者も年齢・性別様々ですし、元々運動をやっていた訳では無い方も大勢います。大多数の人が最初は1km走るのだってひぃひぃ言っていたのに、経験を積み重ねて山を160kmも走れるようになったって考えると「人間ってすごい!!」って思いますね。
桑原 ただ、トレイルランニングは競技ではなく、山でのアクティビティの一つだと思います。そもそも、長く走らなきゃダメ、速く走らなきゃ恥ずかしいっていうのが無いんですよ (笑)
小松 始めたばっかりの人といっても楽しいんですよ。各々自由なペースで進めばいいわけで。ロードを走る=トレーニングだけど、山へ行くのは「山を楽しみに行く」感覚。
――テント泊を組み合わせたり、ということもあるんですよね
桑原 昔ながらの山登りに比べて比較的軽量なパック、テントなどのギアを背負い、トレイルランを組み合わせながら縦走する、ファストパッキングと呼ばれる楽しみ方もあります。
小松 タイムレースだけではなく、ロゲイニングという宝探し感覚のイベントだったり、意外やゆるいランもあったり。
桑原 神奈川県・鍋割山の山荘に鍋焼きうどんを食べに行く!といった食べ物をテーマにしたランもオススメです。楽しみ方は自分次第。トレイルランニング、一回やってみたら絶対に楽しいですよ。
これまで五回に渡って連載してきた〈How to トレイルランニング〉も今回で最終回。トレイルランニングの楽しさと山に入る心構えの大切さをわかっていただけたでしょうか。
桑原さんと小松さんが教えてくれたトレイルランニングの心得は、「楽しく」、「自分に合った目標を立て」、「自分のペースで」。まさに、様々な「からだにいいこと」の基本とも言えるような大切なことばかりでした。ここからがまだまだ奥の深い「トレイルランニング」の世界、覗いてみてはいかがでしょうか。
編集/磯村真介
桑原慶
●くわばら・けい
1975年、静岡県生まれ。フットサルカフェなどの経営を経て、2013年3月に、トレイルランニングやランニングのギアショップ〈Run boys! Run girls!〉をオープン。
小松俊之
●こまつ・としゆき
1969年、新潟県生まれ。2009年、岩本町に〈OnEdrop cafe.〉をオープン。店内外で新たな「出逢い」を生み出す各種イベントを開催している。
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(「からだにいい100のこと。」より転載)