~日中関係改善を背景に日本企業の対中投資は一部に積極化の動き~<北京・武漢・上海出張報告(2015年7月20日~7月31日)>
◇ 第2四半期の実質成長率は前年比+7.0%と、前期比横ばいだったが、成長率に寄与した要因は、プラス要因、マイナス要因とも、昨年第4四半期以降大きく変動した。
◇ 昨秋発表された地方政府債務の管理強化に関する行政命令により、地方政府の資金調達が突然困難となり、大半の地方政府が財源調達難に陥ったことから、多くの地方プロジェクトが一斉に停滞した。
◇ 中央政府はこの状況を深刻に受け止め、4月以降、習近平主席、李克強総理等も地方を訪問し、金融機関貸出の促進、地方政府に対する財政支出実行の働きかけなど、過度に慎重化した地方政府および金融機関のマインドの解きほぐしに注力している。
◇ 地方プロジェクトの落ち込みをカバーするため、中央政府は昨年11月以降、4回にわたる利下げ、高速鉄道建設の前倒しなど金融財政両面から景気テコ入れ策を実施した。しかし、これらはいずれも小粒の施策であり、小幅の景気刺激効果しか持っていなかった。この間、最も大きなプラス要因として成長率の押し上げに寄与したのは、昨年11月以降の株価の急騰だった。
◇ 先行きの見通しについては、6月半ば以降の株価の大幅下落により、金融面の寄与度が低下する一方、地方プロジェクトの回復がプラスに寄与する。それに加えて、不動産開発投資もわずかながら回復方向に向かうことから、下半期の成長率は上半期を若干上回り、7.1~7.2%、通年では7.1%前後との見方が一般的。ただし、一部には地方プロジェクトの回復の遅れによる下振れリスクを懸念する見方もある。
◇ 上海株急騰の背景は、昨秋以降不動産も理財商品も投資対象としての魅力を失ったため、行き場を失った大量の余剰資金が株式市場に向かったことによるものと見られている。マクロ経済情勢や企業収益の低下を考慮すれば明らかに異常な急騰だった。
◇ 6月中旬以降の株価暴落に対して政府が介入して買い支えているため、足許の株式市場は表面的には安定を回復している。しかし、市場本来の機能は失われてしまっている。中国の株式市場が元の正常な状態を回復するには2~3年を要するとの見方もある。なお、実体経済への影響は軽微なものにとどまるとの見方が大勢である。
◇ 日本企業の対中投資について、上海現地のメガバンク幹部によれば、4月の日中首脳会談以降、日本企業の対中ビジネスに対する姿勢が徐々に積極化している手応えを感じるようになった由。上海周辺、武漢、重慶等で具体的な動きが見られている。
全文はキヤノングローバル戦略研究所のHPよりご覧ください。