Deep増上寺 ~増上寺でお会いしましょう!

歴史好き、仏像好き、お寺好きにはたまらないプログラムですが、通常の参拝と「Deep増上寺」、最大の違いはお坊さんが説明をしながら一緒にまわってくれるという点でしょう。
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昨年に引き続き「向源」のメイン会場となる増上寺。浄土宗の大本山で徳川将軍家の菩提寺であり、東京タワーを背にしたビジュアルはあまりに有名です。

その増上寺の普段非公開の場所にも入ることのできる特別拝観プログラム「Deep増上寺」は昨年の向源でも実施され、人気を博しました。歴史好き、仏像好き、お寺好きにはたまらないプログラムですが、通常の参拝と「Deep増上寺」、最大の違いはお坊さんが説明をしながら一緒にまわってくれるという点でしょう。

当日、増上寺でみなさんを案内するのは、浄土宗東京教区青年会のお坊さんたちです。「Deep増上寺」を始めとするさまざまなワークショップで昨年の「向源」を支えた北川琢也さんにお話をうかがいました。

■お坊さんがご案内する「Deep増上寺」

寺の敷地内にある大殿、安国殿、三解脱門、経蔵、徳川家霊廟などをめぐる「Deep増上寺」。見どころはどこになるのでしょうか。

「徳川家墓所と三解脱門の内部は普段公開していない場所です。とくに三解脱門の内部には仏像が安置されおり、楼上に出ることもできます。外から見るとただの門ですが内部に入るとかなり広いスペースが出現するんですよ」

「また増上寺で普段行われている法要の見学もプログラムに盛り込んでいます。観光でお寺に参拝にきて、本堂をのぞいたら法要を行っているという場に遭遇したことがある人も多いと思います。でも長くても5分位くらいもいれば『そろそろ、行こうか』という感じになりますよね。今回のプログラムでは、午前と夕方の法要の最初から最後までをご覧いただいています。」

せっかくお坊さんがご案内するのですから、ただの観光にとどまらず、お寺という場所で日々行っていること、特別なものではないお勤めを見て感じてもらいたいという思いが込められたプログラム構成になっているわけです。このあたりが「Deep」なのかもしれません。

じつは青年会のお坊さんたちは、増上寺の職員ではありません。普段は、それぞれのお寺でお坊さんとしてのお勤めをしています。しかし、増上寺は修行道場という成り立ちをもっている大本山のひとつ、多くのお坊さんが修行したことがある思い入れのある場所なのだそう。

では、そんな若いお坊さんたちにとってこの「増上寺」とは、どんなお寺なのでしょうか。北川さんは「象徴的存在」と答えました。

「自分たちが信じ、伝えようとしていることを象徴した場所のひとつ。そういうところに多くの方が訪れてくれるのは、シンプルにうれしいことですね。たとえば4月はじめのお花見のシーズンのときもたくさんの方が訪れていましたが、正直なところ、桜が咲いているからというだけで、ここがお寺だという理由で来ているわけではない人も多かったと思います。でもこの『向源』というイベントで来てくれるのはここがお寺だと分かっている人で、そのなかにはここが浄土宗のお寺だと分かってくれる人もいるわけです。それはさらにうれしいことだと思っています。」

■「向源」にはたくさんの入口と出口がある

普段お寺とはあまり縁がない人も「フェス」という気軽さからか、昨年の向源にはたくさんの人が訪れました。北川さん率いる浄土宗東京教区青年会も、「Deep増上寺」の他にも「念仏と礼拝」「雅楽」「写経」「写佛」「ウルトラ木魚で人形供養」など多くのワークショップに協力しました。

しかし、仏教の世界は伝統やしきたりが重視される保守的な世界。浄土宗青年会という組織として参加するにはかなりの苦労があったそう。それでも「向源」というイベントにお坊さんたちが参加するのはどういった理由があるのでしょうか。

「僕らは毎日活動しているのですが、檀家さんや信徒さん以外と接点がないんです。内向きの活動なんです。そこで『向源』というイベントを通じて、外に向けて少しでも僕らがやっていることを知ってもらいたいというのが最初の目的でした。今まで接する機会のなかった人に対しての入口をつくるというイメージです」

そう言われると「向源は布教活動?」「檀家を増やそうとしているんじゃないか」などと考えて、行きにくいと感じる人もいるかもしれません。それに対して北川さんは、これは個人的な考えと断った上で、

「出口が一個しかないとなると、それは強い布教活動になる。これでは来てくれる人が気持ち悪くなっちゃうのは当然です。でも向源には、僕ら浄土宗だけでなく、さまざまな宗派が参加しています。仏教には興味あるけど、まだ選ぶ段階ではない、もっといろいろ見てみたいという方にいいですよね。」

確かに向源では、仏教のみならず、伝統文化を気軽に体験したり、お坊さんをはじめ伝統を受け継ぐアーティストに直に会ったりとそれらを実感することができます。また触れてみた結果、当然、自分には合わないとか、共感できないという感想をもつことも自由なわけです。

「入口も出口も多ければ多いほどいい。そしてその中のひとつとして、自分たちの思いもしっかり伝えていきたい。押しつけるつもりはない、とにかく体験して欲しい。そして、もしも出口のひとつとしてうちを検討してもらえるなら、そのときはきちんと案内をしていきたいですね。」

■まずは祭を楽しもう!

昨年の向源が終わった後、参加した青年会のお坊さんたちは一様に「楽しかった」と言ったそうです。これには北川さんも「あんなに忙しくて大変だったのに」と驚いたそう。

そして、やはり昨年一般参加者として向源を体験した筆者も同じく、「とにかく楽しかった!」という感想を持ち、さらには「来年はボランティアスタッフで参加するぞ」とまで決意しました。

その理由は、第一に楽しいお祭りは、スタッフとして参加した方がもっと楽しめるというのが、学生時代の文化祭に燃えた私の持論だから。第二に残念ながら仏教への信仰という境地にまではいたらなかったのですが、向源というイベントが体現する仏教や日本文化の大らかで豊かな精神性に惹かれたからです。本で読むだけでは解らないことをもっと知りたい、もっと感じてみたいという気持ちがむくむくと大きくなりました。

向源というフェスは、参加する側も迎える側にとっても気持ちの垣根をぐっと下げてくれる効果があると思います。構えることなく互いに好奇心を持ち寄って集まれば、非日常の出会い、新鮮な体験と感動をシェアすることができるはず。

今年も向源で「Deep増上寺」は実施されます。ぜひあなたの興味を持ち寄ってみてください。出会いを楽しみにしているお坊さんたちが待っています。きっとなにか新たな発見があるでしょう。(柳舘由香)

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