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2016年04月14日 14時17分 JST | 更新 2017年04月11日 18時12分 JST

美しい海岸を守るために イタリアの自然を脅かす「石油掘削」問題で押さえるべき論点

4月17日に、イタリアでは、イタリア周辺海岸での石油掘削を阻止することを目的とした住民投票が行われる。

イタリア政府は、石油の輸入量を減らす代わりに、新たな国内掘削を断行しようとしている。一方で他国からの石油輸入量を増加させながら、他方で近隣での石油掘削に反対するのは、近視眼的である。

これにより、環境、経済、宗教関連のグループが、フランス南西部の都市ポーで4月5日から7日に開催される深海底掘削開発のための石油企業の大規模国際会議(MCEE - Marine, Construction and Engineering Deepwater Development)に抗議することを呼びかけている。

気候とエネルギーに関する主要国際機関によれば、もし、(20世紀に上昇した0.8℃でもダメージが多く起こったことを念頭に置きながら、)全球平均気温が2℃以上になる可能性を減らすことを望むならば、化石燃料(石炭、石油、ガス)の既知の埋蔵量の80%を開発せずにそのままにしておくべきだ。

にもかかわらず、気候変動に対する公共政策の不手際を当てにして、数千億ドルが深海底掘削の開発と増加のための投資に流入している。このことを英エコノミスト誌は2013年5月4日の記事で「ナンセンス」と呼んだ。

沖合の掘削装置や掘削船には、非常に高い技術が見られる。

最も優れたものは、海底3000メートルに達している。数十億ドルが掘削経費として費やされれば、数百億ドルは収益となるはずだが、万一事故が発生した場合には、その地域が被る損害の額になり得る。

これは「ベンチャー・キャピタル」と呼ばれ、収益はプライベートに分配されるが、損害は公共の問題になることを考えると、沖合での石油・ガスの掘削は、特に高い関心を集める案件である。

公共財への損傷は、2010年に、BP社の石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」からメキシコ湾への原油流出事故として、既に、発生してしまった。これによって明らかになったことは、水深3000メートルでの原油流出による大惨事をどのように防ぐか、誰も知らないということだ。

原油流出事故は、化石燃料ビジネスが引き起こす四つの損害のうちの一つにすぎない。

この損害は深刻だが、地域規模であり、比較的まれであり、また、多くの場合、原状回復が可能だ。原油流出事故と比較すると、他の三つの損害は、地球規模で、且つ、殆ど避けられないものだ。

第二に挙げる損害は地球温暖化の加速だ。これは、環境、数十億人の人間、そして経済そのものに悲惨な結果をもたらすことから、最悪な損害である。

第三の損害は、世界経済への脅威である。この脅威に関して英エコノミスト誌は「各国政府は気候変動に真剣に取り組んでいないか、或いは、化石燃料企業が過大評価されている」と述べた。世界経済は巨大なカーボン・バブルに脅かされていると言うアナリストもいる。

最終的にこのカーボン・バブルがはじけてしまったら、化石燃料業界は、保有している化石燃料資産の価値を急速に失い、倒産の危機に瀕することもあり得る。それは、業界に数兆ドルを預けてきた投資家に非劇的な結果をもたらすだろう。

ロンドンの経済シンクタンクであるカーボン・トラッカー社は、この「カーボン・バブル」のリスクを詳細に研究し、機関・エシカル・その他の投資家に、手遅れにならないための化石燃料からの撤退方法をアドバイスしている。

カーボン・トラッカー社のジェームス・リートン氏は「貴方がたがバブルを手にしてしまう理由は、皆が自分のことを最高のアナリストだと考えるからであり、他の皆が熟考している時に自分は崖の端まで行ってしまっても、引き返すことができると考えがちだからだ」と述べた。

ロックフェラー財団(元石油王)やゲイツ財団といった投資家の化石燃料ビジネスからの撤退は、「化石燃料からの脱却」ムーブメントが深刻に捉えられていることを示している。

昨年パリでCOP21が裁定した「地球温暖化を2℃以下に、理想的には1.5℃までに抑えるための行動」を国際コミュニティが実行すれば、まさに、カーボン・バブルは破裂してしまうだろう。

しかし、これは、大気中への二酸化炭素の排出が570ギガトン(GtCO₂、1ギガトン=10億トン)以下になることを意味する(アンバーナブル・カーボン2013レポート参照)。これは、気候学研究者が「カーボン・バジェット」と呼ぶものであり、気候変動による最悪の結果を避けつつ、私達が排出してもよい二酸化炭素の量を意味する。

採掘会社のフィールドにある全ての化石燃料(これらの会社の経済価値を決定している化石燃料資産)が燃やされたら、その際の二酸化炭素排出量は、およそ2800ギガトン(GtCO₂)にも及ぶだろう(アンバーナブル・カーボン2013レポート参照)。

それ故に、これらの炭化水素の四分の三以上は、「その価値が実現することのない回収不能資産(ストランデッド・アセット)」と見なされ、「燃やせない炭素」なのである。

最後に、化石燃料使用に関連する第四の損害は、社会に関することだ:汚職・戦争・クーデター・独裁政治・大量虐殺・暗殺(国営石油会社ENIの設立者のエンリコ・マッテイが思い浮かぶ。彼の死は謀殺だったと疑われている)・化石燃料ビジネスの一部に関連する他の犯罪などと比較すれば、イタリアの避けられない石油事情から生じる昨今の汚職や犯罪は、ほんの僅かである。

確かに、4月17日にイタリアで実施される住民投票に勝てば、イタリア周辺での海岸掘削を食い止めることができるかもしれない。ここで私達イタリア人が認識すべきことは、国内石油生産を諦めることが、より多くの石油を消費することに繋がることだ。

なぜなら、他国からの石油の輸送船に更なる石油が消費されるからである。加えて、この遠方の石油のなかには、中東地域などで見られるように、戦争や政変の引き金になるものもあり、また、ナイジェリアやエクアドルなどで見られるように、環境破壊や人間の荒廃をおこすものもある。

これらの惨事を防ぐ最良の方法は、再生可能エネルギーへの移行を加速すること、エネルギー効率を上げること、私達のライフスタイルの物質依存度を下げることを通して、劇的に化石燃料の消費量を削減することだ。実際、私達の業務用エネルギーの約80パーセントは、化石燃料からきている。

事実上、私達が使用する全ての製品とサービス(いくつかは他のものより集中的に)は、石炭・石油・ガスの直接的或いは間接的な利用と浪費に、依存している。

確かに、私達イタリア人はイタリアの海岸を大切に思っている。しかし、海岸を守る上で重要なのは、海岸での石油掘削事業を阻止するだけでは十分ではない、と認識することなのである。

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