CD19標的CAR T細胞療法ではTET2の破壊が抗腫瘍活性を誘発する

この知見は、TET2シグナル伝達の調節によって、CAR T細胞の効果を改良できる可能性があることを示唆している。
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キメラT細胞受容体を用いて遺伝的に改変した患者のT細胞(CAR T細胞)によって抗腫瘍応答を誘導できるが、患者の体内でそうしたCAR T細胞が増殖したり存続したりする能力にばらつきがあるため、応答は一定ではない。

今回、CD19 CAR T細胞で治療を受け、完全寛解に至った1人の慢性リンパ性白血病患者の症例が報告された。

予想外なことに、増殖していたCAR T細胞は単一のクローン由来で、このクローンではCAR導入遺伝子の挿入により内在性のTET2遺伝子が破壊されていた。

さらに、その患者では、もう片方のTET2対立遺伝子にハイポモルフ変異があることが分かった。

結果として生じたメチルシトシンジオキシゲナーゼであるTET2の不活性化が、エピジェネティックな変化を誘導し、それによってT細胞の分化と機能が変化して、セントラル記憶の表現型が促進され、抗腫瘍効果が増強することが分かった。

この知見は、TET2シグナル伝達の調節によって、CAR T細胞の効果を改良できる可能性があることを示唆している。

Nature558, 7709

原著論文:

doi: 10.1038/d41586-018-05251-5

doi: 10.1038/s41586-018-0178-z

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