後生動物細胞での遺伝子の転写調節は主にプロモーターの近傍で起こり、そこでは、mRNAの伸長を行うRNAポリメラーゼII(Pol II)の停止や、停止の解除が能動的に制御されている。今週号に掲載された2つの論文で、P CramerたちはPol IIの停止、停止の解除および伸長活性化を再現できるin vitro系を、ヒト因子の組換え体を使って確立したことを報告している。1つ目の論文では、負の調節因子[NELF(negative elongation factor)およびDSIF(DRB sensitivity-inducing factor)]と結合し、停止した不活性な状態にあるPol IIのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造が決定されている。2つ目の論文では、伸長複合体中の正の調節因子[DSIF、PAF1c(PAF1 complex)およびSPT6(suppressor of Ty6)]と結合し、停止が解除されて再活性化状態にあるPol IIのクライオ電子顕微鏡構造が報告されている。これら2つの構造の比較により、Pol IIの停止解除と活性化の機構の基盤が示され、PAF1cがPol IIとの結合に関してNELFと拮抗する仕組みや、P-TEFbによるリン酸化が活性化を引き起こす仕組み、SPT6が動員されてRNA合成につながる伸長が促進される仕組みについての手掛かりが得られた。
Nature560, 7720
原著論文:
doi: 10.1038/s41586-018-0442-2
doi: 10.1038/s41586-018-0440-4
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