先日当ブログで、Yahoo!ニュースアプリにおけるバナー集客事例をご紹介いたしましたが、ユーザーの皆様からも記事へ多くの反響をいただきました。
今回は、先日の記事でご紹介したバナーテストで他のアプリ機能よりも圧倒的に需要のあった「都道府県ニュース」(下の画像参照)のタブが、実際にYahoo!ニュースアプリ上でどのようにユーザーの皆様にご利用いただいているのかを分析してみました。
※この記事は2015年9月18日に配信された記事です。
「都道府県」はエンタメを超える需要
Yahoo!ニュースアプリは、「主要」「速報」「テーマ」「都道府県」「エンタメ」「スポーツ」「国内」「経済」「海外」......など、計15ジャンルのニュースがご覧いただけます。上記画像のように、タブを切り替えて閲覧することができます。ジャンル別に、利用時間の割合を比べてみました。
アプリ起動後に必ず表示される「主要」ジャンルの割合が最も高く、次に「都道府県」ジャンルの割合が高くなっています。わずかですが、「エンタメ」ジャンルの利用時間を上回る結果となっていました。
Yahoo!ニュースに限らず、インターネットのニュースサービスを担当されている方は一度は実感したことがあると思いますが、「エンタメ」「スポーツ」といったやわらかめの話題は、いわゆる「数字を持っている」ジャンルとされ、一方で硬めの話題についてはいわゆる「数字を取るのが難しい」とされています。「エンタメ」、「スポーツ」ジャンルを上回って「都道府県」ジャンルが利用されているという結果は、スタッフにとっても予想外の結果でした。
「詳しく知りたい」割合もエンタメより上位に
さらに、ジャンル別のアクションUB(ユニークブラウザ)、つまり、そのジャンル上で個別記事をタップしたり、画面下まで深くスクロールして読み込んだり、といった何らかのアクションを起こしたユーザーの割合をジャンル別に比べてみました。
こちらも先ほどと同様、「主要」ジャンルに次いで「都道府県」の割合が多いことがわかりました。それぞれユーザーが個別に設定している地域、つまり自分にとって身近な地域の情報については、他のニュースに比べて「深く知りたい、詳しく知りたい」という欲求が大きいといえるかもしれません。
自分の「ふるさと」を設定している人も?
それでは、ユーザーの皆様が設定する都道府県には、どのような傾向があるのでしょうか。各都道府県別にアプリユーザーの構成比率、「都道府県」ジャンルの設定比率、人口分布率を地図に落とし込んで、色の濃淡で比べてみました。
まず、アプリユーザー構成比率上位(5%以上)の都道府県(東京・大阪・神奈川・埼玉・愛知・福岡・北海道・千葉)から見てみます。(※マップの見方:比率が高いほど色が濃く、比率が低いほど薄い)
東京・大阪・神奈川・埼玉・愛知・福岡・北海道・千葉で「都道府県」ジャンルの地域設定をしているユーザーの割合(右)の分布は、アプリユーザー(中央)に比べて、人口分布(左)に近い傾向がありました。また、インターネットユーザーが多い東京都・大阪府は、アプリ利用者とジャンル設定の比率(濃度)に差がありました。
上記以外のそのほかの府県をみてみると、「都道府県」ジャンルの地域設定をしているユーザーの分布は、アプリユーザーの構成比率よりも人口分布と似ている傾向がありました。
これらのデータから、どのようなことがみえてくるのでしょうか。Yahoo!ニュースのデータ分析チームに聞きました。
ニュース事業本部企画部アナリシス リーダー 山崎潤 まずアプリユーザー構成比率上位(5%以上)の都道府県を示したグラフですが、グラフのアプリユーザーの割合は、Yahoo! JAPAN IDを元に算出しています。つまりユーザーの居住地がそのまま反映されているということになります。スマホの所有率や高齢者率の関係で、インターネットの利用は都市圏に固まる傾向があるため、アプリユーザーの分布は予想通りの結果といえます。
それに対して、都道府県ジャンルの設定比率の分布は人口の分布に似た傾向になっていました。また東京・大阪は特に他の道府県よりも、アプリ利用者とジャンル設定の比率(濃度)に差がありました。これは言い換えると、「東京・大阪をはじめとした都市圏に居住しているユーザーは、自分の住んでいる場所と別の地域を設定しているケースが多い」と捉えることもできます。
――では、都市圏居住のユーザーのうち自分の住んでいる場所以外を都道府県ジャンルで設定しているユーザーは、一体どの地域を設定しているのか。
都道府県ジャンルの設定率の推移が人口分布と一致してきていることから、どこか特定の地域に過度な人気が集中している......というわけでもなさそうです。となると、ここからはあくまでも推測の域に入ってしまいますが、自分の出身、実家がある地域で設定している可能性が有力かと思われます。実は私も以前から実家のある長野県を設定しておりまして......結果を見てなるほど、と思った人間の一人です。今回のデータを受けて周囲のスタッフにも聞いてみたのですが、多くは居住地を設定していましたが、一方で自分の出身地を設定していた、という人も複数いたので、自分のふるさとの情報を欲しているひとは一定層存在するのかもしれないですね。今後は、各都道府県の設定ユーザーが実際にどこの地域からアプリを利用しているのか、といった分析もさらに進めて行きたいと思います。
アプリでは「身近な危険」「イベント」などのニュースに需要
――アプリで読まれているニュースの傾向は。
山崎 都道府県ジャンルのニュースには、その地域のブロック紙・地方紙が表示される頻度が高いのですが、いくつかの地域のブロック紙・地方紙を抽出してブラウザ版での記事PVとアプリでの記事PVを比較してみたところ、いくつかの傾向が見えてきました。
アプリ版でも、ブラウザ版でも、もちろんその地域で全国的な注目を集めるイシューや事件事故がそろって上位を占めているものの、ブラウザ版に比べてアプリで特徴的に読まれている記事を抽出してみると、以下の傾向が共通してみられました。
- 身近な危険を教えるもの
- 地域のイベントの様子を伝えるもの
- 地域の都市計画に関するもの
- 心あたたまるいい話
例えば、「身近な危険を教えるもの」ですと、災害に関するニュースや感染症、不発弾の処理を知らせる話題などがあげられます。そのほか「地域の都市計画に関するもの」では、例えばその地域に全国的に有名なチェーン店が進出する話題や、新しい道路の開通に関する話題などが読まれていました。
また東日本大震災の被災地域では、避難者向け住宅の建設に関するニュースや、魚などから放射性物質が検出されたニュースなども、ブラウザに比べアプリでの需要が高い傾向にありました。
地元の球団を応援したいニーズも?
山崎 そのほか、同様の方法でアプリで読まれているスポーツ記事を調べてみたところ、人気上位球団 の巨人・阪神よりも、西武(埼玉)、日ハム(北海道)、ソフトバンク(福岡)といった球団ニュースの需要が高いという特徴がみられました。人気上位球団については記事本数も多めになるため、その分記事にたどりつくための動線も、スポーツジャンルをはじめ多岐にわたってきます。
一方でそのほかの球団については、地元の情報のひとつとして、アプリの都道府県ジャンルにピンポイントでその地域の球団に関するニュースが上がってくるため、地元の応援球団の記事にアクセスする手段として、アプリの「都道府県」ジャンルをご利用いただいているのかもしれません。
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前回のアプリバナーA/Bテストの事例では、都道府県ニュースの需要の可能性をお伝えいたしましたが、今回のデータ分析ではその可能性を裏付ける分析結果をご紹介させていただきました。
Yahoo!ニュースでは今後も、今回ご紹介しきれなかった地域ごとの特徴などの研究・分析を進めて地域ニュースの摂取傾向を探るとともに、こうしたさまざまなデータを活用しながら、スマートデバイス時代における最適なニュース体験を追求して参ります。