それはいつも突然です。昨年のある夏の日、午前4時台の静かなオフィスで緊急地震速報が鳴り響きました。福島県沖を震源とするマグニチュード6.8、最大震度4の地震。津波注意報も発令。東京でも揺れを感じます。「とにかく落ち着かなきゃ」――夜勤を担当していたYahoo!ニュースの編集者はそう自分に言い聞かせながら、一報をYahoo!ニュース トピックスに掲載しました。
こんにちは、Yahoo!ニュース編集部の田中です。いつ何が起こるか分からないニュースの世界。夜中に重大なニュースが飛び込んでくることも多くあります。深夜の編集部ではどんなことが起きるのでしょうか。今回はYahoo!ニュースの「夜の顔」をご紹介したいと思います。
※この記事は2015年4月1日に配信された記事です。
4交代のシフト制、CSも24時間
Yahoo!ニュース編集部の主な役割は、300以上の媒体から1日計4000本ほど配信していただいている記事の中から、公共性や社会的関心の高いニュースを選び、見出しや関連リンクをつけて「トピックス」として掲出することです。
編集部は4交代のシフト制。人員は昼間の方が比較的手厚いですが、仕事の内容は深夜も基本的に変わりません。どんなときも、メディアから配信していただいた記事をより多くの読者に届けるべく、編集者が目を光らせています。またカスタマーサポート(CS)も24時間対応しています。
午前3時は「特ダネ」の時間!?
午後の更新を担当した遅番から、夜勤帯の担当者にバトンが渡るのは午後10時30分。時間の経過とともに仕事の流れをご紹介します。
午後11時
就寝前に布団の中でスマホからニュースをチェックするという人も多いかもしれません。記事はまだまだ多い時間帯なので、随時対応したり、遅番から引き継いだニュースを掲出したりします。
午前1時~2時
記事は徐々に減ってきますが、突発的な重大ニュースにはすぐに対応しなければなりません。特に地震や津波などの災害は人命に関わるため、夜中でも常に気を抜けません。ニューヨーク株式市場や欧州サッカーの結果など、時差のある海外の話題にも気を配ります。
午前3時
新聞各社の朝刊の締め切り後、午前2時30分から午前3時ごろにかけて、朝刊用の記事を配信していただくことが多いです。時には「特ダネ」を配信していただくことも。例えば2009年の首都圏連続不審死事件の一報が最初に配信されたのも深夜3時すぎのこと。当時の担当者によると、この記事は「詐欺容疑で逮捕された女の周辺で複数の男性が相次いで死亡しており、経緯に不自然な点がある」という内容。その時点では、この記事以外に報じられていませんでしたが、今後、他の報道機関が追いかけ、大きく報じられる事件に発展すると判断し、すぐに掲出したそうです。
午前5時
メディア各社が本格的に動き出す時間。午前4時や5時ちょうどには芸能ニュースの「解禁もの」を配信していただくことがあります。「○○が映画の主演に決定」といった、情報を出してよい時間が決められているニュースです。エンタメの話題をいち早くチェックしたい方は早起きすると良いかもしれません。
午前6時~7時
午前6時台になると記事の配信数がぐんと増え、夜勤の担当者はラストスパート。朝番の出勤を待ちながら、優先度の高いものを見極めてトピックスに掲出していきます。午前7時になったら、朝番に夜中の出来事を引き継ぎ、夜勤は終わりです。
夜勤の本質は「災害対応」
ここまで夜勤のさまざまな仕事の流れをご紹介しましたが、なかでも最も重要な役割は、地震や津波などの災害時に素早く情報を届けることだと我々編集部は考えています。2009年から深夜の体制を強化しましたが、それも災害対応のためでした。さらに、2011年の東日本大震災の経験をもとに、BCP(事業継続計画)の強化を進めています。
「災害への対応として最も基本的なことは、何かあった時にすぐにそれに気付くこと」(「3.11を機に問い直す、ヤフーのBCPとは?」より)。「すぐに気づくこと」が大事なのは、もちろん夜中でも同じです。BCP拠点である北九州では「SNSから抜き打ちで送られてきたメッセージにすぐに返信する訓練」が、夜中に突然行われることもあります。
冒頭に書いた昨年7月12日早朝の地震。最大震度4でしたが揺れが広範囲にわたっており、津波も発生していました。担当者が連絡ツールで地震発生を周知すると、自宅で寝ていたはずの非番の編集部メンバーが3人、すぐに業務用のグループチャットに現れました。
津波注意報も発令されたため、夜勤担当者と助けに入ったメンバーで手分けして地震と津波の2本のトピックスを掲出。さらにSNSにも速報を出しました。ほどなくして異変を察知した編集部メンバーが続々と参加。ディレクターやエンジニア、「トップページ」の編成担当者も現れ、対応にあたりました。夜勤担当者は司令塔となって役割分担を整理。避難勧告の情報、原発への影響、被害の有無、交通情報など、分担して続報をフォローしていきました。
災害時はアクセス数が急激に増えるため、その負荷を乗り切ることも極めて重要です。災害時に「Yahoo!ニュース」は決して止まってはいけません。そのため、緊急時は編集部だけでなく、エンジニアやディレクター陣も跳ね起きて、いざという時は対応にあたります。さらに、「トップページ」担当者なども含め、ニュースのみならずオールヤフーで災害に対応していくことなります。
深夜に飛び込む海外ニュース
海外の動きに気を配ることも夜勤の役目です。日本が午前3時ならニューヨークは午後2時。海外の重大ニュースは夜勤中こそ起こりやすいとも言えます。重大ニュースが発生したとき、最初に配信していただく記事は、テレビのニュース速報テロップのように"短いテキスト"のみかもしれません。海外メディアのサイトやSNSでも情報を集めながら、記事をピックアップするかどうかを慎重に判断します。
昨年7月、ウクライナでマレーシア航空機の撃墜事件が起きました。最初に配信されたのは「消息を絶った」という数行の記事。やがて「撃墜」という状況が判明します。対応した担当者はこう振り返ります。「海外のニュースなので最初は情報が少なく、ピックアップ判断は慎重になりました。徐々に記事が増えてきて、深刻な事態になっていると分かってきました」
過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件では、後藤健ニさん殺害とみられる動画が投稿されたというニュースが入ってきたのが早朝5時ごろでした。そのときの担当者はこう話します。「午前6時ごろにはすでに各社が報道していましたが、日本政府の確認が取れていなかったのでトピックスの見出しには注意しました。あくまで分かっている情報は"動画投稿"であり、"殺害"と言い切ることはできない。海外サイトなどで情報を集めつつ、トピックスに掲出しました」
海外スポーツのビッグニュースが夜中に入ってくることもあります。特にワールドカップやオリンピックなど注目度の高いスポーツイベントがあるときは夜勤も特別体制にし、手厚い人員で対応します。注目の試合があるとPV(ページビュー)はいつもよりグンと伸びます。
スマホ時代に備えて
グローバル化が進み、人々の生活が多様化してる今、災害時でなくても夜中に最新ニュースを伝える重要性は高まっています。さらに、スマホユーザーが増えたことで、夜中でも少なくないアクセスがあります。上に載せた6月のPV平均推移を見ると、夜中は昼間より少ないとはいえ、月間合計100億を超えるPVがあると絶対数は決して無視できない数字となります。
深夜も記事を書き、Yahoo!ニュースに配信していただいているメディア各社のみなさまの思いを素早く、より多くの人に伝えたい。それによってユーザーのみなさまのお役に立ちたい。Yahoo!ニュース編集部はそんな思いを持って、これからも夜勤に臨んで参ります。