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2017年08月30日 13時00分 JST | 更新 2017年08月30日 13時00分 JST

アジアの二都物語:「北京・上海」「デリー・ムンバイ」「ハノイ・ホーチミン」-各国の発展を牽引するライバル都市

それぞれの都市の歴史・文化・言語・気質といった特色や違いを十分に踏まえ尊重することが大切

アジア新興国では、都市化(人口の都市への集中化傾向)が進行しており(図表-1参照)、従来の大家族制から都市在住の核家族化が進む中で、生活様式の近代化と耐久消費財やサービス商品の購買がさらに増加すると考えられている。その傾向において各国を代表する大都市への人口の集中や都市規模の拡大が予測されている。

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アジア各国には、それら大都市の典型例として、日本における東京と大阪のように、首都と大商業都市という代表的な都市のペアがみられる。本レポートでは、(1)中国の北京と上海、(2)インドのデリー(ニューデリー含む)とムンバイ、(3)ベトナムのハノイとホーチミンを事例に挙げて、その特徴点などについて考えてみたい。

上記3つの都市ペアに共通して見られるポイントを総論的に挙げてみよう(図表-2参照)。

第一に、各都市の一人当たりGDP(国内総生産)(*1)は、各国の平均よりも高水準であり、消費市場としての重要度も大きい点が共通点といえる。

第二に、北京・デリー・ハノイは各国の首都で政治・行政の中心地であり、上海・ムンバイ・ホーチミンは大規模な商業都市である。その点から、前者は、町や建物の雰囲気も重厚で落ち着きが感じられ、後者は、高層ビルも多く、町により活気があり喧騒も感じられる。さらに後者には、各国のファッションやトレンドをリードする場所との印象もある。

第三に、上記の各都市ペアは、気候の面での違いに加え、いずれも長い歴史のある都市でもあり、言語・料理など文化面や住民の意識・気質等の違い、二大都市相互間のライバル意識がみられる。

次に、ジェトロの資料などを参考にして、各国別に各都市の特徴点等をみることとする。

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1.北京・上海

一人当たりGDP(2015年)は、北京17,101ドル、上海16,667ドルと、国の平均値である8,113ドルの二倍を超える高水準となっており(*2)、巨大な消費市場としても知られている。

歴代王朝の首都であった北京の住民は、首都のプライドを持ち、社会的地位・名声・権力への興味や政治・教育への関心が大きいといわれる。一方、国際都市としての歴史が長い上海の人々は、個人主義が強く商才に長け、流行・ファッションに敏感といわれる。北京では重厚で落ち着いた建物が多いのに対して、上海(特に浦東新区)には斬新なデザインの超高層ビルが立ち並び好対照の印象がある。

2.デリー・ムンバイ

インドというと、常夏との印象があるが、北部に位置するデリーでは年間における寒暖の幅が非常に大きい。筆者が始めて同地を訪問した際にコートやセーターを持参せず困った経験もある。

これに対して、ムンバイは通年高温多湿な日が多い。また産業も、デリー周辺では大企業の本社や工場などが多い。ムンバイには、商業・金融・貿易・海運等サービス業が多く、中央銀行(インド準備銀行:Reserve Bank of India)の本店が、首都ではなく同地に所在しているのは珍しいケースである。

映画製作の拠点「ボリウッド」も有名である。デリーを中心とするインド北部の気質は、保守的でプライドが高く、見栄っ張り、家族重視の価値観が強いとされる。一方、ムンバイは、経済観念が発達しており、個人主義が強く、海外の文化に開放的といわれる。

3.ハノイ・ホーチミン

かつての南ベトナムの首都でサイゴンと呼ばれていたホーチミンが、人口や産業・企業活動の面では、政治・行政の中心地であるハノイに対して優位にある。気候もハノイは四季があり、寒暖の差が大きいが、ホーチミンは年間を通じて暑い日が多い。

ハノイでは集団主義の傾向が強く、家族・周囲・メディアの意見・提案を重視する。プレミアム商品志向で、熟考して購入するし、貯蓄意欲も高い。ホーチミンは、個人主義の傾向が強く、新しいもの・サービスに敏感で、目立ちたがり、見栄っ張り、衝動買いの傾向があるとされる。

以上、中国・インド・ベトナムの首都・大商業都市のペアについて、その特徴点等をみた。同じ国の大都市といっても大きな違いや魅力がある。今回取り上げた各都市はいずれも、日本企業にとっての重要な進出地となっているが、各市場での成功を期す上では、各社の狙いや戦略に基づき、それぞれの都市の歴史・文化・言語・気質といった特色や違いを十分に踏まえ尊重することが大切であると考えられる。


(*1) 都市については、より正確な用語として、域内総生産(Gross Regional Product: GRP)があるが、ここでは、慣用的にGDPの用語を用いている。

(*2) 中国では、一人当たりGDP が1万ドル以上の省市は、北京市・上海市に加えて、天津市、江蘇省、浙江省、福建省、広東省、遼寧省などがある。

<主要参考文献>

外務省 (2016) 『海外在留邦人数調査統計:平成28年詳細版』

経済産業省(2016)『通商白書2016』

日本貿易振興機構(ジェトロ)による下記資料

 北京スタイル(2011年3月)

 ハノイスタイル(2016年10月)

 ホーチミンスタイル(2016年10月)

 デリー・ムンバイスタイル(2011年3月)

United Nations (2014), World Urbanization Prospects

United Nations (2016), The World's Cities in 2016

The Brookings Institution (2016), Redefining Global Cities: The Seven Types of Global Metro Economies (Metropolitan Policy Program| 2016)

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(2017年8月15日「研究員の眼」より転載)

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