日銀の金融政策決定会合が10月30日に開催されるが、はたして追加緩和に踏み切るのだろうか。
市場関係者の見方は分かれ予断を許さない状況だが、もし追加緩和が決定された場合、市場はどのように動くのだろうか?
本稿では、2013年4月4日と2014年10月31日に決定された過去2回の金融緩和前後の日経平均株価と米ドル円の値動きを振り返ることで、追加緩和があった場合の変動の目安を示したい。
但し、過去の動きがこうだったから、今回もこうなるという予想を本稿で示したいのではない。そもそも緩和後の値動きは緩和内容に依存するし、その時々の環境も異なるため同様の値動きになるとは限らない。
ここで示したいのは投資戦略を考える上で、また緩和後の値動きを分析する上で、比較対象となる一つのものさしである。
まず、過去2回の金融緩和前後の日経平均株価の推移を図表1に示した。
この図表では、縦軸にそれぞれの決定会合前日の終値を基準にした日経平均株価の変化幅を示し、横軸には決定会合からの日数の変化(営業日ベース)で示している。
例えば、縦軸が1,000円、横軸が5営業日となっている場合、決定会合の5営業日後に日経平均株価が決定会合前日から1,000円上昇した水準にあることを表す。
過去2回の動きを比較すると、金融緩和から25営業日後くらいまでは、日経平均株価の値動きが非常に似ていることがわかる。
この動きをざっくりまとめると、緩和直後の上昇スピードは早く、1週間以内に+1,000円超上昇している(第一弾は5営業日後、第二弾は緩和翌日に+1,000円超)。+1,000円をやや上回った後は、いくつかの押し目をこなしながら、上昇トレンドを維持している。
上昇は1ヶ月~1ヶ月半は継続し、最終的に決定会合前日と比較して+2,000〜+3,000円程度まで上昇している。ここから30日に追加緩和後の動きを推し量る上でのキリのいい目安は、1週間以内に1,000円高、1ヶ月で2,000円高といったところであろうか。
一方、初期の上昇スピードにしろ、ピークのタイミングにしろ、緩和効果を織り込む速度は前例があった第二弾の方が早いように思われ、第三弾の緩和があった場合には、市場の織り込み方がさらに早くなる可能性も想定される。
次に、図表2に過去2回の緩和前後の米ドル円の推移を示した。図表の見方は先ほどの日経平均株価と同じだ。
米ドル円相場も過去2回、日経平均株価ほどではないが似た値動きをしていることがわかる。同様に過去2回の値動きをまとめると、2〜3営業日で+6円上昇。
その後、もみ合い、もしくは、じり高の時間帯を迎えた後、緩和から1ヶ月程度経ったところでさらに上昇し、結果的に決定会合前日と比較して+10円程度まで上昇している。
ここから、次回の追加緩和があった場合には、1週間以内に+6円上昇、1ヶ月で+10円の上昇というのを、一つの目安として持つことが出来るであろう。
以上、簡単に過去2回の日銀緩和後の株価・為替を振り返り、次回の追加緩和があった場合の相場変動の目安を示した。
追加緩和があるかどうか予想するのも重要だが、それ以上に重要なのは緩和後にどのように行動するかだと筆者は考える。
迅速な行動には事前のアクションプランが必要だし、そのためには上がるか下がるかだけでなく、いつ、どのくらい動くかというシナリオが不可欠である。
そのシナリオの一つとして、過去の事例を想定しておいて損はないだろう。
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(2015年10月26日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 研究員