今年のゴールデンウィークは日の並びもよく、遠出をする人も多いだろう。一方、人ごみを避けて家でのんびりするのも悪くない。
休日も仕事以外の予定をびっしり埋めないと落ち着かない人もいるかもしれないが、何の予定もなく過ごす休日もいいものだ。今日は大型連休を家でゴロゴロ過ごす人のために、退屈を凌ぐ「左」と「右」にまつわる「閑話」をお届けしよう。
先日、ネットで「尾頭付きの魚を皿に盛り付ける場合の向き」が話題になっていた。普通は頭を左側にするが、それは日本では左が右より上位という概念があるからだそうだ。舞台も左側(客席から見て右側)が上手、右側が下手だ。講演会などでは、講演する人が上手から、司会者は下手から登場する。
雛人形は元々、左側(向って右側)の上座が男雛だったが、今日では国際的な慣習からか逆の並びが多い。今でも地方によっては男雛が左側だが、結婚披露宴等では男性が右側に座るのが一般的になり、今日の男女の力関係を表しているのかもしれない。なお、太政官制の左大臣は右大臣よりも上位だ。
また、人間は右利きの人が多い。その結果、様々な道具が右利きを前提に作られている。カメラのシャッターボタンや鉄道駅の自動改札機は、左利きの人には使いづらいのではないか。
ゴルフクラブもレフティ用は少なく、腕時計は利き腕ではない左手用にデザインされている。ただし、時計の針が右回りなのは、アナログ時計の起源の日時計が北半球で考案され、日影の動きが右回りだったからだ。
一方、車両の通行は日本やイギリスでは左側通行だが、より多くの国では右側通行だ。私が初めてアメリカで路線バスに乗るために停留所で待っていると、突然、バスが左側から現れて驚いたことを覚えている。
その他にも、エスカレーターの立ち位置は東京では左、大阪では右だ。ちなみに洋服や和服の右前と左前については、下記の「研究員の眼」をご覧いただきたい。
ユニークな解説で知られる新明解国語辞典には、「左」は『人の背骨の中心線と鼻の先端とを含む平面で空間を二つの部分に分けた時に、大部分の人の場合、心臓の搏動を感じる場所のある方の部分』と記されている。心臓は実際には体のほぼ中央にあるのだが、確かに拍動を感じるのは左胸部分だ。
普段あまり真剣に考えることもない「左」と「右」にまつわる「閑話」だが、そこを起点に社会の様々な事象を眺めると意外と面白いことが見えてくるものだ。
あなたも暇に任せて身の回りの「左」と「右」に関する話題を集めてみてはいかがだろう。閑話休題、大型連休で心身と頭をリフレッシュし、次には現代社会を読み解くための政治の「左」と「右」についてもしっかり考えてみたいと思う。
関連レポート
(2016年5月2日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
社会研究部 主任研究員