依然として遅れをとる若年雇用

現実の生活が充実していることを「リア充」というのは、わりと有名だと思うが、そこから派生して、一人の生活が充実していることを「ソロ充」というらしい。

-若年層で「リア充」「ソロ充」が増えるのはいつ?-

現実の生活が充実していることを「リア充」というのは、わりと有名だと思うが、そこから派生して、一人の生活が充実していることを「ソロ充」というらしい。

ソロ(一人)で、自由気ままに、趣味や食事などを楽しんでいる様子を指し、一人でいることを前向きにとらえた言葉だ。

確かに、現在の日本は「ソロ充」を楽しむような未婚層が拡大している。2010年の生涯未婚率は男性が20.1%、女性が10.6%。男性の5人に1人、女性の10人に1人は一生未婚という世の中だ(*1)。

そんな中、「おひとりさま」を意識した商品やサービスも増えている。

例えば、飲食業界では「一人焼肉」や「一人鍋」などのサービスが出ているし、家電業界では一人暮らしで利用しやすい「プチ家電(*2)」が人気のようだ。また、雑誌不況の中で、40歳前後の独身女性をメインターゲットとしたファッション誌も創刊されており、「おひとりさま」マーケットには注目が集まっている。

しかし、今後も未婚層が拡大していくのかというと、必ずしもそうとは言えないようだ。

現在、18~34歳の未婚者の9割は「いずれ結婚したい」と思っており、この10年で「ある程度の年齢までには結婚したい」という意識も高まっている(*3)。若年層の大半には結婚の意識があり、しかも、結婚に対する先延ばし意識は薄まっている。

それでは、なぜ結婚しないのかというと、その大きな要因の1つには、近年の経済環境の厳しさがある(*4)。

若年層では1990年代から非正規雇用者が増えている。正規・非正規という雇用形態によって恋愛や婚姻の状況は異なり、男性の既婚率は年収に比例する。年収300万円未満では既婚率は1割に満たないが、300万円を超えると一気に3倍に跳ねあがる。なお、非正規雇用者の平均年収は、いずれの性年代でも300万円を下回る。

必ずしも経済状況が精神的な充実につながるわけではないが、もしかしたら「おひとりさま」でも「ソロ充」を楽しめていない若者も多いのかもしれない。

実は、「おひとりさま」マーケットには、充実した日常生活を送るための商品やサービスだけでなく、「脱法ハウス(*5)」といった厳しい経済状況が起因する問題のあるものも存在する。都市部の「脱法ハウス」には、職に恵まれずに住む場所を確保できない若者が多いそうだ。

「おひとりさま」であれ家族を持つ生活であれ、将来を担う若者たちが充実した生活を送るためには、厳しい状況にある若年層の雇用対策が喫緊の課題だ。

昨年から日本経済は活気づいている。春の労使交渉では正規雇用者の賃上げだけでなく、非正規雇用者の待遇改善もみられた(*6)。また、失業率も改善傾向にあり、昨年末の有効求人倍率は1.03で、6年3ヶ月ぶりに求人数が求職者数を上回った(*7)。しかし、若年層で依然、失業率が高く、非正規雇用者が多い状況は変わっていない(図1・2)。むしろ非正規雇用者は、やや増えているようだ。

まずは「ソロ充」な若者が増えるためにも、若年層の雇用環境の改善が強く望まれる。

(*1) 国立社会保障人口問題研究所「人口統計資料集(2014)」 なお、生涯未婚率は50歳時点での未婚率であり、厳密には生涯未婚者ではない。

(*2) 「パナソニック、食器洗い乾燥機「プチ食洗」(ロングセラーに挑む)」(2013/10/17 日経産業新聞8面)他多数。

(*3) 国立社会保障人口問題研究所「出生動向基本調査」

(*4) 久我尚子「若年層の結婚観~未婚化・晩婚化の一方で若者たちは結婚を望んでいる」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2012/12/25)

(*5) 建築基準法や消防法に違反しているようなシェアハウス。経済的な理由から、一般的な賃貸住宅を契約できない若者などの利用が多い。(参考:「(都知事選2014 論点を問う)貧しき若者の憂い」(2014/02/04 朝日新聞 朝刊 38面)他。)

(*6) 「三菱UFJ銀:非正規5000人が労組加入 待遇改善目指し」(2014/04/05 毎日新聞 朝刊7面)、「ユニクロ1.6万人正社員化 地域限定 雇用改善、囲い込み」(2014/03/20 産経新聞 朝刊2面)、このほか日本郵政や全日本空輸の報道も有り。

(*7) 総務省「労働力調査」

株式会社ニッセイ基礎研究所

生活研究部 准主任研究員

(2014年4月14日「研究員の眼」より転載)

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