<要約>
米国株の急落を受けて日経平均も大幅下落となった。きっかけは米金利上昇とされるが、より本質的には米国株のミニバブルが崩壊したことだろう。今後の展開は日米で大きく異なることが予想される。米国株は過熱感が解消しても2万3000~2万4000ドル程度の一進一退が続く一方、日経平均は早期に2万3000円台を回復することが想定される。
■米国株急落の本質はミニバブルの崩壊
2月5日、米NYダウ平均株価は史上最大となる1,175ドルの下落を記録した。前営業日と合わせて2日間で1,840ドル(7.0%)の急落だ。
この煽りを受けて6日の日経平均は一時1,500円を超える大幅下落となった(終値は1,071円安の21,610円)。米国株が急落した理由は、「米国の金利が急上昇したため」などとされるが、本質的には米国株のミニバブルが弾けたことに尽きる。
図1のとおり米国株は適正水準を大きく超える状態が続いていた。適正水準は企業業績から算定したもので、株価の割高/割安を示すPER(株価収益率)15倍に相当するが、16年11月の米大統領選以降、堅調な景気や業績拡大期待を理由に高値更新を続け、株価が適正水準から乖離する"独り歩き"が助長された。
そうした中、2日に発表された米雇用統計が良好な内容だったことをきっかけに米国の金利が上昇したため、米国債と比べて投資魅力度が薄れた米国株が一斉に売られた格好だ。
などといえばもっともらしく聞こえるが、端的にいえば米国株の投資家にとって大事なのは"売るタイミング"であって、"売るきっかけ"など何でも良かったのだろう。これまで十分に値上がりした株を、他人より先に売ることが何より重要だからだ。これこそが"バブルの終焉"なのだろう。
■日経平均は割安な状態になった
方や、日経平均は米国株急落に付き合う格好で大幅下落となった。肝心なのはリーマン・ショック(2008年9月)やチャイナ・ショック(2015年8月)とは状況が全く異なることだ。
今回は国内外の景気や企業業績の悪化が懸念されるわけではなく、単に市場心理が極端に冷え込んだに過ぎない。米国株の急落を目の当たりにした日本株の投資家が恐怖感からパニック売りを出したり、米国株で損失を被った投資家が利益の出ている日本株を早めに売ろうと動いたのだろう。
その結果、図2のように日経平均は適正水準を大きく下回った。しかも、足元で進む第3四半期決算で通期の業績見通しを引き上げる企業が相次ぎ、株価の適正水準そのものは上昇している。つまり、今回の大幅下落で日経平均は一気に割安な状態になったとみられる。
円高による業績悪化を心配する向きもあるが、主要企業の想定為替レートは1ドル110円~111円がほとんどだ(図3)。現在の1ドル=109円なら乖離は1~2円なので、業績への悪影響は軽微とみてよいだろう。
■当面の見通し~米国株は一進一退、日経平均は2万3000円を回復~
今後は日米ともに株価は落ち着きどころを探ることになる。まず米国株についてはミニバブルが弾けた格好なので株価の戻りは鈍いだろう。
トランプ減税が米企業の業績を後押しするものの、それを考慮しても当面の落ち着きどころは2万3,000~2万4,000ドル付近とみられる。1月26日につけた直近高値の2万6,616ドルを回復するには相当の時間を要するだろう。
一方、日経平均については明るい見通しが描ける。先に述べたように今回の大幅下落は米国株急落を受けた市場心理の冷え込みが主な理由で、経済のファンダメンタルズは何ら変わっていないからだ。
今夜(6日)の米国株が大幅続落とならなければ明日にも2万2,000円を回復し、早ければ2月中、遅くとも3月末までに2万3,000円台を回復すると想定される。
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(2018年2月6日「基礎研レター」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 主任研究員