今日は何曜日?-地球が宇宙の中心だった頃からの守護星の日:研究員の眼

普段特に何も考えはしなかったのだが、ふとした機会があって、いつも当たり前のように使っている「曜日」について、立ち止まって考えてみた。

普段特に何も考えはしなかったのだが、ふとした機会があって、いつも当たり前のように使っている「曜日」について、立ち止まって考えてみた。

そもそも「日月火水木金土」って何だろう。周りの人に試しに尋ねてみたところ、星の名前に由来することは全員わかったが、この順番については誰も意識していなかった。そこで興味本位に調べてみた。

曜日・週の考え方は、紀元前1000~2000年ともいわれる古代バビロニアで生まれ、エジプト・ローマを経て、その間ユダヤ教やキリスト教の影響を受けて完成されたらしい。

誰しも思っている通り、これは太陽系の星の名前からきているものである。太陽(日)、月、火星、水星、木星、金星、土星である。

太陽は恒星、月は地球の衛星で、あとの5つは太陽系の惑星である。空を見上げた時、大多数の星は天を東から西に動き、季節によって見え方がズレながらも、相互の位置関係は固定されたようにみえる。

5つの星は、そうしたいわゆる星座の間を、ふらふらと動いているように肉眼で見える惑星である。いや、大昔には、星とは何かということすら、わかっていなかっただろうが、夜空に輝く何かというくらいにしておこう。(天球に開いた小さな穴からその向こう側の光が漏れている、という捉え方もあったらしい。)

ではその順番は?

地球が宇宙の中心であると思っていた時代、それら7つの星の、星座を背景とした位置の動きの速さによって、地球からの距離の違いが推測された。ゆっくり動く惑星ほど地球から遠い、と。その順番は、遠いほうから地球に近づく順に

土星、木星、火星、太陽(日)、金星、水星、月

であるとされた。現在判明している地球からの距離の順とは違うが、それはよしとしよう。なお、「地球」という表現をしたが、まだ丸いかどうかすらわかっていない時代の話だろう。

次にくるのは、これらの星たちは1日24時間を1時間交代?で順番に支配(守護)しているという考え方である。そして最初の1時間は地球から最も遠い土星が支配し、つぎの1時間は木星、次は火星・・・と地球に近づく順番に交代していく。

(そうすると、1日はなぜ24時間とされたのか、ということまで遡らなければならないが、とりあえず先に進む。)

(第1日)1.土星 2.木星 3.火星 4.太陽 5.金星 6.水星 7.月 8.土星・・(略)・・24.火星

以降は、その続きから同じことを繰り返す。

(第2日)1.太陽  2.金星  3.水星  4.月   5.土星 ・・・(略)・・・  24.水星

(第3日)1.月   2.土星  3.木星  4.火星  5.太陽 ・・・(略)・・・  24.木星

(第4日)1.火星  2.太陽  3.金星  4.水星  5.月  ・・・(略)・・・  24.金星

(第5日)1.水星  2.月   3.土星  4.木星  5.火星 ・・・(略)・・・  24.土星

(第6日)1.木星  2.火星  3.太陽  4.金星  5.水星 ・・・(略)・・・  24.太陽

(第7日)1.金星  2.水星  3.月  4.土星  5.木星 ・・・(略)・・・  24.月

これで、あとは同じことの繰り返しとなる。

ここで、その日最初の守護星は、その日一日の守護星にもなると考えられた。この場合、第1日は土、第2日は太陽、第3日は月。以下、火、水、木、金、と見慣れた順序となる。これが曜日の順番の起源だそうである。

この考え方でいくと、一週間の始まりは土曜日である、ということになるが、のちにユダヤ教、キリスト教の教義などが入ってきて、そう単純ではないようだ。今まわりに見える限りでは、カレンダーの最初は日曜日のものしかないが、土日は「週末」という言い方もする。

もっとも、これは有力ではあるがひとつの説に過ぎないとも言われる。さきにあげた地球からの距離の順番を3つ飛ばしで数えると、曜日の順序になることから、音楽における音階やコードが起源、という別の説も見かけたが、今回は省略する。

日本には、平安時代に弘法大師・空海が唐から持ち帰った「宿曜経」なる経典によって、曜日の概念が伝わってきて、時の権力者である藤原道長の日記には、曜日まで記載されている箇所があるという。

ただし、この頃は吉凶判断すなわち占星術に用いられたようで、その後江戸時代までは実用としてはほとんど使われなかった。明治になってから、太陽暦の採用などの際に復活し、それ以後は生活になくてはならないものになってきた。

(余談だが、この原稿を書くために、暦関係の本を大書店で探したのだが、自然科学・天文学コーナーにあるのかと思いきや、星占いのコーナーにあったりして、まさか自分が占いコーナーを物色することになろうとは思わなかった。なお、暦の本が民俗学コーナーに充実している書店もあった。)

本当は、星の話だけできれいに終わりたかったのだが、現実世界のことも話さねばなるまい。 

曜日は日本の法律で定められているのだろうか。もしかして正式には使われていないのではないか?もちろんそんなことはなくて、曜日がでてくる箇所はいくらでもある。ほんの一例だが、

「行政機関の休日に関する法律」では、行政機関の休日が、日曜日と土曜日。国民の祝日に関する法律に規定する祝日、12月29日から1月3日までの日とするとある。

「銀行法」では、銀行の休日は、日曜日その他政令で定める日に限る、等とある。

「国民の祝日に関する法律」では、いわゆる振替休日の規定に日曜日が登場するし、近年の祝日は連休を意識して、第○月曜日というのも多いのは周知のとおりである。

(最も筆者に関わりある「保険業法」にも曜日はでてくるが、あまり重要ではなさそうだった。)

曜日ではなく、「週」という用語になると、「○週間以内に」など、期限を定めるところにいくらでもでてくる。

遡れば、どこかに曜日そのものの定義もあるのだろうと思い、少々探してみたが、意外なことにすぐにはみつからないので、今後の課題とする。

思うに、曜日というものは少なくとも明治以降は連続したものであろうから、明治初期頃に定められ(だからこそ、見つけにくい)、現在でも生きている法律があるのだろうと思うのだが。

今回は、曜日に限り、ほんの一部を調べて紹介したに留まるが、もっと広く「暦」というものは、天体の動きなど科学的な事実を基礎にしつつ、政治的・歴史的な経緯、宗教・文化との関わりがある。

もちろん、現在の法律にも関係するし、それらのために地域によって異なるなど、かなり膨大な関連分野があることがわかった。だから天文学にも民俗学にも、そして星占いにも関係するということか。また機会があれば、そのあたりの話題を紹介することにしたい。

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(2016年9月20日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

保険研究部 主任研究員

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