東洋経済オンラインでブランドコンテンツの原稿を書いた。「動画革命進行中!」と題した記事だ。
もし「まだ読んでない」と言う人がいたらぜひ読んで欲しい。この手の対談記事としてはなかなかない面白さだと思う。→東洋経済オンライン・ブランドコンテンツ「動画サイトこそブランディングだ!〜テレ東プレイとコクヨチャンネルが次に目指すもの」
ブランドコンテンツとは、東洋経済がつくった新しい広告枠。この記事で言うと、ブライトコーブ社の広告枠、ということになる。確かにタイトル部分に「東洋経済とブライトコーブが考えた」と入っていて、記事の中身もブライトコーブ社の主業である動画配信についてだ。ただ、ブライトコーブのサービス内容に触れた部分はほんの少しで、文章の中に無理のないカタチで企業名が登場する程度。こういう手法はネイティブ広告ということになるのだろう。
それはともかく、そういう土台の上に、テレビ東京で「モヤさま」のプロデューサーとして活躍中の伊藤隆行氏と、コクヨで動画サイトを運営する佐藤詠美氏の対談という、けっこう画期的な企画が実現した。この記事を読むだけでも十分面白いと思うが、記事では伝えきれなかった事柄を、書いた本人として解説的にブログに書いておこうと思う。
まず、"攻めてるテレ東"というのがある。その象徴的存在が"モヤさま伊藤P"だ。自分の番組で顔出しもするその存在感は、"電波少年T部長"こと日テレ土屋さんを彷彿とさせる。"攻めてるテレ東"では、伊藤Pに続いて面白い制作者が出てきていて、もやもやとムーブメントが起きつつある。
"攻めてるテレ東"の"攻めてる感"はもうひとつ、テレ東プレイという動画サイトを立ち上げたことにも表れている。「TVチャンピオン」や「ギルガメッシュ」など、テレ東らしさを形成してきた番組をネット上で復活させている。その時点で"攻めてる"のだが、どうもそれだけでは終わりそうにない感じを漂わせていて油断がならない。
そんな"攻めてるテレ東"の象徴である伊藤Pに、文具メーカー・コクヨのマーケッター佐藤詠美氏を対談相手にお願いしてみたのは、全然縁遠いお二人に見えて、がちゃんことぴったりハマるにちがいない、と読んだからだ。なぜならば、佐藤氏が運営するコクヨチャンネルも、文具メーカーの動画サイトとして十分"攻めてる"からだ。
ぜひ見て欲しいのだが、コクヨチャンネルには例えば「コクヨGメン」というシリーズがある。そこには、立派なお笑いタレントであるケンキ氏がキャスティングされているのだ。ケンキ氏はR1グランプリで準決勝まで進んだ実力の持ち主。
しかし対談の中では・・・
伊藤 「ザ・コクヨGメン」がやっぱり面白くって。この方はタレントさんですか?
佐藤 そうです。ケンキさんといってサンミュージック所属で。
伊藤 サンミュージックならカンニング竹山さんの後輩?
佐藤 いや先輩なんですけど(笑)
というくだりがあって、つまり伊藤Pが知らなかったことも笑えるポイントになっているのだが・・・。
そういう、"攻めてるコクヨチャンネル"なのだから、佐藤氏は伊藤Pときっと意気投合してくれると確信していたのだが果たして、対談はぼくの想定以上に盛り上がった。最後のフォトセッションではこんなポーズまで・・・
もちろん東洋経済のカメラマン氏にたき付けられたからだがそれにしても、ここまでやってもらえるとは。
さて盛り上がっていく対談の中でひとつポイントだなあと思った部分がある。
佐藤 テレビ的なものとネット的なものの違いってどこにあるんでしょう?
伊藤 ぼくが思うのは・・・プロの仕業だなというものがありありと出ることは確信を持って避けた方がいいと思っています。
伊藤Pがさらりと答えたように見えるだろうが、実際にはけっこう間があった。佐藤氏の質問にしばし考え込んで出てきたのがこの言い方だったのだ。そして「プロの仕業だなというものがありありと出ることは確信を持って避けた方がいい」という箇所はわかりにくい表現かもしれないが、大事なひと言だと思ったので伊藤Pが言ったそのまんまを文章にしている。
テレビは完成度が求められる。番組の収録や生放送の現場に立ち会うと、ほんとうに完璧だなと思う。何から何まで、すべてが完璧だ。
例えば、「生放送を10時53分ちょうどに終わらせる」のは簡単にできることではない。60年の歴史の中でそれが普通にできるように最適のスタッフィングと体制とワークフローが組まれてきたのだ。ある人に聞いたのだが、中国の放送は時間通りに進まないことが多くて愕然とするそうだ。
ネットで流す番組にはどう取り組むのか。ネットでは10時53分に終わらせる必要は多分ないのだ。でも、テレビマンたちはきっと、完璧に決められた時間に終わらせようとするだろう。そういう、自分に設けた枠を意図的に外す必要がある、と伊藤Pは言っているのではないか。
テレビマンたちが、テレビマンとしてのプロらしさは保ちながらも、自分が培ってきた枠から自由になれれば、これまでにない面白さに出会えるのかもしれない。
それからもうひとつ、最後の「YOUはどう使うこの道具?」という見出しで描かれたやりとりが面白かった。
伊藤 あと、突然頼んでもないものが届く番組ってどうでしょう?
佐藤 文房具が突然届くんですね?
伊藤 そう大量に入ってる。「これどうしたらいいの?」って悩んでるのを番組にするんです。
佐藤 あたしも似た企画を実は考えていたんです。外国人にコクヨの商品を渡してどう使うかっていう企画。空港で外国の方を待って商品を渡して・・・
伊藤 「YOUは何しに日本へ?」みたいな?「YOUはどう使うこの道具?」
なにやら企画会議のような展開になったのだった。横で聞いていて可笑しくて仕方なかった。もちろん冗談なのだが・・・
いや、冗談なのだろうか?いますぐには無理かもしれないが、ゆくゆくそういうことが起こるんじゃないだろうか。
つまり、コクヨチャンネルの番組を、テレビ局のスタッフがつくる、ってことはゆくゆく起こるかもしれない。あるいは、テレビ局が放送する番組にスポンサーの社員が企画を提供するとか。放送が難しければ、テレ東プレイで流す番組にコクヨが提供して制作するとか。
あれ?コクヨが提供してつくったテレ東プレイの番組をコクヨチャンネルでも放送する、なんてこともありなのかな?
ぼくたちが予感すべきなのは、そういうことではないだろうか。いままでは、テレビはテレビ、ネットはネットだった。広告は広告、番組は番組、だった。でもこれからそこは垣根がどんどん低くなってどこからどこまでがこっちとそっちなのか、わからなくなる、どうでもよくなるんじゃないだろうか。そういう姿に向かっていく前提でぼくたちは、これからメディアとコンテンツをとらえるべきなのだろう。
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