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2014年12月16日 13時00分 JST | 更新 2015年02月14日 19時12分 JST

2020年に20万人の中高生がデジタルでモノづくりしている世界を作る - ライフイズテック株式会社 水野雄介

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水野雄介(みずの ゆうすけ)

1982年生まれ。ライフイズテック株式会社代表取締役。慶応義塾大学理工学部物理情報工学科、同大学大学院卒業。在学中に開成高等学校で物理の非常勤講師として2年間勤める。卒業後、人材系コンサルティング会社に入社。教育改革を掲げ、2010年7月、ピスチャー株式会社(現ライフイズテック株式会社)設立。シリコンバレーIT教育法をモチーフとした中高生向けIT教育プログラム「Life is Tech!」を立ち上げる。

http://life-is-tech.com/

OYAZINE(以下Oと略):水野さんのインタビューは他にもWEBにあがっているので、少し変わった角度から質問させていただきたいのですが、起業家になった水野さん、ご両親の方針もチャレンジしろというスタンスだったのでしょうか?

水野さん(以下水野と略):父親は普通のサラリーマンで、転勤族でした。そのため、僕の生まれは北海道ですが、浜松、東京、仙台に住んでいたこともありました。小学校2年生から高校までずっと野球をやっていました。母親はどちらかといえば保守的で、まず東京に憧れがあり住みたいと。僕も塾に入り、いい企業に行ってほしい、公務員になってほしいと思っているような母親でした。

O:起業しようという思いはいつ頃から持っていらっしゃったのでしょうか?

水野:大学の頃から起業したいと思ったのでもなく、とりあえず理系が得意だったので理系で受験し、特に何がやりたいかわかっていた訳ではありませんでした。ただ野球をやっていた経験があったのはよかったと思います。やはり人生には目指しているものがあるといいなと思いますし、甲子園は一つのいい目標だよなと。で、高校卒業して大学入った時に野球部持ちたい。物理も得意だったので物理の先生になって野球部を持つのもいいなと思い、中高の理科と物理の教員免許をとりました。

O:じゃあ大学でも野球漬けという感じで?

水野:いえ、大学時代は野球せず、テニスサークルに入って麻雀して...というような感じで遊んでいました。大学に入って硬式で野球やるほど上手いわけでもなかったので。

O:そうなんですね。でも高校の先生をしながら、野球部の顧問になって甲子園を目指すっていいですよね。どうして高校の先生になろうと思ったんですか?

水野:僕は大学院まで出ているんですが、大学院生(22歳)の時たまたま非常勤講師の募集があって開成高校で2年間、週に2回高校1年生に物理を教えていました。ガリ勉な学校かと思って行ったんですが、全然そんなことはなく自主的で自立した学校ですごくいい学校だなと思いました。正直、自分が行っていた中高がそんなに好きじゃなかったんですよね。だからこそ、自分だったらもっといい先生になれると思ったんですよ。だから先生になりたいと思うようになったと思います。

O:でも結局、先生という道は選ばれなかったんですね。

水野:この2年間の講師を経験してよかったと思っています。学校では物理は教えられるけれど、世の中のことは教えられないなと思ったんです。例えば職業。ライターの仕事ってどういう仕事で、どういう遣り甲斐を持ってやっているのか。どんな人がなっているのか。色んなことを教えてあげたいじゃないですか。卒業してすぐ先生になってしまうと、子供たちに勝る経験っていっても大学時代のものしかないから、旅行行った経験とかちょっとした恋愛の話ぐらいしかできない。それじゃつまらないと思って、先生になる前に3年間だけと期間を決めて社会に出てコンサルティングの会社に入ることにしたんです。

O:コンサル業界っていうのは意外ですね。

水野:院卒から3年間は人材系のワイキューブという会社に入りました。ただ、両親は反対していましたね。そのまま先生になるという道もありましたし、周りはみんな大手行っていましたし。ちょうど僕がワイキューブに入った時はMAXの時で売上げが40億、社員200人くらいでした。中小企業の社長とすぐに仕事ができるというのと、色々と教育系のこともやっているというのと、あんまり大きすぎない組織でやりたかったんです。ワイキューブは僕が辞めてから1.2年後に民事再生し潰れてしまったので、僕自体が何かできたかというと全くできなかったんですが、すごくいい経験をし、学ばせてもらいました。

O:そこからライフイズテックの起業に至った経緯を教えて下さい。

水野:ワイキューブに勤めて2年半くらいの時にこれからどうしようと考え、その時、先生としてやっていくことも素晴らしいことだとは思ったんですけれど、僕キッザニアみたいな場所がすごく好きでみんな今新しい教育を求めていると思ったんですね。新しいサービス、価値のあるものを作ったほうが教育を変えるには早いんじゃないかと思い27歳の時に起業することにしたんです。僕がキッザニアに興味を持ったのは、あそこはエンターテイメントと教育を掛け合わせたことをやっているんですけど「学びが楽しくなる仕組み」があると思ったから。結局、学びは学びたいから学ぶものじゃないですか。嫌々やっているものは学びじゃなくてそこが上手く仕掛けになって社会のことを子供たちも知りつつ成長・学びの支援をエンターテイメントとして提供しているのがすごいと思いました。このキッザニアの中高生版を創りたいと思ったんです。さらに僕は開成高校で教えていた時に感じたことをプラスして「ITに特化したキッザニア」を創りたいと思うようになりました。

O:ITのキッザニアという発想が面白いですね。

水野:で、IT教育と言えばシリコンバレー。「IT教育・シリコンバレー」でググったら、スタンフォードで最先端のITを教えるキャンプをやっているということを知りました。たまたまスタンフォードに住んでいる日本人のお母さんが息子さんにこのキャンプに行かせたらよかったので日本からの留学生を募集します!といった内容をFACEBOOKで出していて、それでそのお母さんに連絡して会って実際の様子を聞きました。その後、実際にスタンフォードに行き、やはりこのキャンプは面白い、これを日本で展開しようということになりました。最初は全くノウハウがなかったので、社会人向けにやっている方にコンタクトを取ってカリキュラムを貸していただいて中高生にどうカスタマイズできるか勉強しました。あとは大学と連携してやろうということで、東京大学と慶応大学の先生に話をさせてもらったりしました。その時は僕らもお金も全くないので知人から15人くらいにそれぞれ10万〜20万借りてそれを合わせて300万円を資本金にさせてもらいました。自分でも週3回ぐらい早稲田高校で物理を教えながら起業していました。で、実際にその子たちに来てもらってこういうことやったら面白いかとかを何回か繰り返しやって2011年7月からサービスをスタートしました。

O:起業から1年後のスタートですね。最初はどんな様子でしたか?

水野:最初、デモキャンプは3人、スタッフは7人みたいな感じでやっていていました。東大でやったのは7人。そこから2012年300人。2013年に1000人。2014年1400人。キャンプとスクールで延べ8000人に参加数を増やしてきています。

O:8000人!すごい伸びですね。

水野:8000人といってもキャンプは春夏冬とやっていますし、あとは4000人ぐらいが無料で、残り4000人ぐらいが有料。毎月無料体験会というのを行っています。あと学校へ行って今年も30校以上行って1000人以上やっていますけど、無料で学校の授業としてアイフォンのアプリを作ったりしていてそれらを含めて延べ8000人に参加してもらいました。

O:学校へも出張イベントをされているんですね。

水野:学校だけでなく、最近では福岡市や徳島県海陽町でもやっていて、地域復興という意味でITができる子供たちを増やすことは結果、そこでの起業が増え経済効果を生むんですよね。あとITは地域によらないでできるのでやりたい子が多いんです。デジタルネイティブでスマートフォン持っている子たちが多いので、僕らのところに来ているのはオタクみたいな子ではなくて、バレー部や、バトミントン部いますというような子がアプリ作れるなら作ってみたいといって来てくれています。

O:なぜ小学生向けのイベントはやらずに、あくまで中高生なのでしょうか?

水野:小学生向けにはサイバーエージェントさんとジョイントベンチャーを作って「TECH KIDS CAMP」を行っています。僕らがノウハウを提供してサイバーエージェントさんがお金とヒトを出してくれて小学生向けに展開しています。ただ、僕が中学生高校生の教員免許を持っているということもあって、やはり中高生の教育をもっとよくしていきたいんです。キャンプだけでなく色々な仕組みを整えたりまだまだできることがあると思っています。当然、オンラインなどを見て大人や大学生からもやってみたいと話を受けたりしていますが、これもまたあえて受け入れていません。あと中高生はぐっと伸びるから面白いんですよね。はまったときの伸びが中高生は全然違うんですよ!

O:なるほど。今後、ライフイズテックとして、こんなことにチャレンジしていきたいということはありますか?

水野:今後やっていきたいことは沢山あるんですけど、まず2020年に20万人の中高生がデジタルでモノづくりしている世界を作るというのが僕の目標です。高校野球をやっている子の数を超えたいんです。高校野球をやっているのが18万9千人。高校野球ってすごくよくできている仕組みだなと思っているんですよ。みんながプロ野球選手に憧れを持って野球を始めて、一つ甲子園という大舞台がある。上から青田買いの仕組みになっていてちゃんとプロとしても活躍ができる。できない子たちにとっても色々なものを学べる環境があると思っていてそれを超える仕組みを作りたいんです。すると結果的に、地域一回戦で負ける子が出てきますし、田中マー君やイチローといったトップも出てきて、それってまぁITで言うとザッカ―バーグみたいな人ですよね。世界のトッププレイヤーが出てくるなと思っています。経済的にも効果を生みますし、子供一人ひとりの可能性が伸ばせるような環境づくりが大事だと思っています。そのためにしなければならないのが教育の「入口・中身・出口」を変えることが必要だと思っています。

O:好きな高校野球をベンチマークにしているところが水野さんらしいですね。確かに一握りかもしれませんが、高校野球は結果として、就職先が決まるという一面がありますね。

水野:ジャニーズがすごくうまいことやっていると思っているんです。若くてかわいい子をとって、そのあと歌とダンスを教えて、出口のところも作っていてちゃんとまわる仕組みができているんです。で、キャンプは初めての子を増やす入口。キャンプにはじめて来た子たちがどうしたら育つのか。しっかり活躍していけるのか。親がパソコン好きならがんばりなさいよと言ってあげられる環境をどうしたら作ってあげられるかが大事なんですよね。そのためにドラフトで起業に入れる仕組みだったり、たとえばスーパー高校生がグーグルと東大とスタンフォードからオファーがあってクジを引くみたいなことがあってもいいと思っているんです。

O:それに向けた具体的な取り組みがもうすでにあったりするのでしょうか?

水野:「Life tech Stars★」といって実績を残している中学生・高校生を「STAR」と定義し、応援していく仕組みを作りました。まずストアに出してみて、その後起業の支援もしていきたいんです。子供たちは開発することはできるけれど、そもそも投機したりアライアンス組んだりチームを作ったりはできないのでそのあたりのことを全部やってあげたり、あとはそのまま大学に行けるようにAO入試を支援したりしています。僕らがやっている大学生が中高生を支援する仕組みでやっているのでどれだけ優秀な大学生が来るかがポイントなんです。

O:確かに、お話を伺っていて、その中高生を支える側のスタッフの確保が大切だろうなと感じていました。

水野:技術力があってコミュニケーション能力のある大学生って企業としてもやはり欲しいんです。中高生を導くITリーダーを作ろうということで年間2回募集をかけて採用しています。これは、アメリカのNPO法人Teach for Americaがモデルにあって、優秀な人材を取るだめに10社の企業を巻き込んで60時間研修して今300人くらいの大学生がいるんですがその子達をライフイズテックが採用し、その子達が企業に指名されるようなリーダーのドラフト会議も行っています。これ実は今年もやるんですけど今年は高校生も出ます。

O:ライフイズテックにかかわった大学生にとっては、就職先まで見えてくるということになりますよね。これは画期的ですね。

水野:2014年3月に初めて「ITドラフト会議」というものをやったんですけど、野球が好きなので、野球のドラフト会議と同じように品川プリンスホテルを借りてめちゃめちゃ本格的にやりました。ドラフトと言えばクジなんでもちろんこのクジも取り入れて。これもイベントとしてというよりも、IT業界にもプロ野球のようなヒーローを作りたいという思いでやっています。わかりやすく今ある仕組みをそのまま使って、親としてもそのままパソコンができればわが子もグーグルのようないい会社に入れるんだと知れば支援しやすいじゃないですか。あとはIT版のキッザニアみないな感じで、名作ゲームタイトルを次々と生み出す『スクウェア・エニックス』と中高校生のITキャンプがコラボレーションした中高校生のためのゲームクリエイター開発キャンプをやったりしています。他にもいろいろあるんですが、こういうもの一個一個が仕組みになってい企業さんと一緒にやって、しっかりと社会につながる出口のところを作っています。

O:学ぶだけじゃなくて、その後の社会につながる出口が用意されているのが素晴らしいですね。中核事業であるキャンプについても、チャレンジしていきたいことはありますか?

水野:キャンプに関してはディズニーランドに勝ちたいと思っています。ディズニーランドは競合といった意識も社内にあります。中高生にはディズニーランドよりもそれだったら夏休みにLife is Tech! に行きたい!そう言ってもらえるような場所を作りたいと思ってやっています。今年のクリスマスキャンプも全国から300人近く来るんです。3泊4日で山中湖に集まってやるんですが80%くらいがリピーターなんです。メルマガにしかリリースしていないんですけど、楽しいからキャンプに来るんですよね。開発もちゃんとやっているんですが、運動会やったり夜はクリスマスパーティやったり、キャンプファイアーをしたり、結構楽しい感じでやっています。それから、今後グローバル化が進むと、海外の子たちとライフイズテックで一緒に学び合えるということが絶対に起こってくるんです。その時に大事なのが、向こうでリアルにコミュニティを持っていることが大事になのでそれで今、シンガポールでもキャンプをスタートさせています。あと僕ずーっとキッザニアさんと何かやりたいと思っていたんですけど、ついに今年10月から僕が大好きなキッザニアさんと一緒に新規事業をスタートさせ、中高校生の起業家精神を習得する『Be Startup』というプログラムも行っています。これの一番面白いところって事業計画作るとかPL作れるようになるとかじゃなくて、やはり新しいサービスを作ってそれを人に使ってもらうところが一番面白いんですよね。新しい商品を作ろうということで、全6回で販売計画とか企画を作って、3Dプリンタ使ってデモ作ってHPも自分たちで作って最後社長にプレゼンしてよかったら商品化されるということをやっていて、最初にやりたいと思っていた中高生版キッザニアみたいなものができそうだと思っています。

O:ついに、起業アイディアの原点だった、キッザニアとのコラボレーションが実現したわけですね。ちなみに、まだ始まっていないサービスや取り組みがあれば、ぜひここで教えて下さい。

水野:教育変革においてやはり学校の先生がカギだと思っています。僕自身の講師時代の経験でもあるんですけど、学校の教材を作るのってすごく大変なんです。とりわけ情報って最先端の分野なので、自分で学んで生徒たちに還元するのって難しいんです。その先生向けのサービスを展開したいと思っています。

O:どうしてまた学校の先生を巻き込んでいこうと思ったのでしょうか?

水野:そもそもの僕の目標である「20万人がデジタルでモノづくりしている世界を作る」ことを考えたとき、高校って今5000校あって平均1校につき40人学んでいる子がいないと20万人いかないんです。それはキャンプだけじゃ無理だと思ったんですよ。そのためには学校を巻き込むしかないなと思っていて。まず授業で最低限のものはできる。そこから部活にしたり、夏休みになるとキャンプに来るといったそういった流れを作りたいんです。現在のキャンプをやっていて、経済格差、情報格差、地域格差による教育格差をどうにかしなきゃいけない、というのはずっと思っているので、学校で最先端のものが学べる。そして先生がもっと楽に、できるだけいらない業務を減らしてシェアできるものはシェアしてしっかりと子供たちと向き合える時間を作ってあげるということがポイントだと思っています。

O:プログラミングという言葉の響きだと今はモニターってイメージがまだ強いですが、これからはモノづくりという意味も含んでいきそうですね。

水野:これからはIOTの時代なので、ソフトウェアと何かを掛け合わせるということが出てくると思います。デジタルファブリケーションのコースも来年は本格的につくります。たとえばBe Startupの中で中高生が出したアイデアは、料理のときに使う温度計を、スマートデバイスで自動管理できるようにしたほうがいいんじゃないか、とか。そういうったことを子供たちが考えて作っていくということがあればいいと思っています。

O:最後になりますが、ライフイズテックの拡大の先に、いつか学校の先生になろうという想いも持っていらっしゃったりするのでしょうか?

水野:僕は中高一貫校の学校を作りたいと思っています。自分も先生やって、それこそ野球部の監督か部長をやって甲子園に出たいです。だいたい50歳くらいですかね。実現させたいですね(笑)。

(この記事は、2014年12月のインタビュー内容をもとに構成されています。)

ライター/編集 青柳 愛

聞き手/撮影 川辺 洋平