プラン・インターナショナルが2014年より実施している、ウガンダにおける南スーダン難民支援活動に携わっています。このプロジェクトは、ジャパン・プラットフォームなどの助成を受けてすすめられ、プランの日本事務局からも職員を数名派遣しています。難民の人たちへの支援は、紛争が終わり、彼らが自分の国や故郷に戻るまで、もしくは避難先で自立した生活が営めるようになるまで継続することが一般的です。私も2014年、2017年そして2018年1月と延べにして3~4カ月ほど現地の活動に参加しています。
生理用品がないと起こる2つの課題
私が担当した活動の中に、難民となってしまった女の子や女性たちに生理用品キットを配る支援がありました。プランが昨年ウガンダ北部の難民居住区で実施した調査によると、生理用品がない場合、古布や新聞紙などの古紙を代用する人が多いようです。まれにですが、小枝を芯にして乾燥させた葉を巻き付け、それを小さな布で包んだ簡易タンポンでその場をしのぐ人もいるとのこと。このような対処法は、衛生の観点からすると最善とは言えません。古紙や古布から雑菌が繁殖し、炎症や尿路、性器の感染症につながります。ナプキンなどを頻繁に交換できないことも問題です。
生理用品がないことは、女の子や女性が社会生活を送るうえでも問題です。代用品では経血がもれやすく、学校に通うことも難しくなるでしょう。例えば、月経のために1カ月のうち3日間、学校に行けないとすると、1年間で30日以上も学校を欠席することになります。
(ウガンダでは、政府や国際機関、多くのNGOの支援により、難民の子どもたちが学校に通えるようになっています。またプランも難民の子どもたちが通う学校の建設や運営などを実施しています)
生理用品キットの中身は?
月経は毎月のことなので、生理用品はいったん配ってそれでおしまい、というわけにはいきません。とはいえ、月経年齢の女性全員に対して使い捨てタイプのものを毎月配布するのは、費用や労力の点からも現実的ではありません。そこで、ウガンダにおける難民支援では、布製のナプキンを配布するのが主流となりつつあります。
2015年に実施された調査*によると、「必ずしも毎月定期的に支給されるとは限らないので、布ナプキンの方がいい」という難民の人たちが多かったとのこと。一方で、「布ナプキンを洗うところを見られたくない」といった理由で、学齢期の女の子たちの間では、使い捨てタイプへの要望が高い傾向にあるようです。また、安心してナプキンを取りかえるためのプライバシーの確保、洗濯用のバケツ、経血が漏れたときに腰に巻くためのキテンゲと呼ばれる布を希望するという意見も聞かれました。
*ICRC and Red Cross societies, Menstrual Hygiene Management (MHM) in Emergencies: Consolidated Report, March 2016
このような声を反映し、プランは布ナプキンと下着に加え、石鹸、ナプキンを洗うためのバケツ、そしてキテンゲなどが入った生理用品キットを配布しています。アルア県の難民居住区では、これが標準的な「生理用品セット」とされ、プランだけではなく、ほかの団体も同様のものを配布しています。
活動の意義
日本の災害支援の現場では「生理用品を女性たちに届けること」は、水や食料の配布と同じくらい重要であるという考えが徐々に定着してきていると思います。『生理用品は月経時の"不快"を取り除くもの』と思われた時期もありましたが、生理用品は個人の衛生状態を維持し、非常時であっても心の落ち着きを取り戻し、通常の社会生活を続けるために必要な生きるための必需品です。
それは、アフリカの難民支援の現場であっても同じ。南スーダン難民の女の子や女性にとっても生理用品の配布はとても重要な支援活動です。生理用品キットを受けとり、安心した顔をして家路につく女性を見たとき、難民支援における生理用品配布は、ぜいたくな活動でも、あと回しにしていい活動でもないと強く実感しました。
プランは、女の子や女性の月経衛生を改善するため、生理用品キットの配布に加え、世帯トイレの設置、安全な水の確保、月経時の衛生管理に対する理解を促進する活動を、他の支援団体や国際機関とも協力し合いながら実施してきています。また、紛争から逃れてきた子どもたちが恐怖を感じることなく元気いっぱい遊び、笑い、子どもらしさを取り戻す時間を提供するための「子どもひろば」*の設置と運営、難民の子どもたちの栄養改善や教育機会の確保などさまざまな活動をウガンダで複合的に継続していきます。
*「子どもひろば」
災害・緊急時に、子どもの保護と心のケアのために設置・運営されます。被災地(または現地)では、混乱のなか、子ども、とりわけ女の子は虐待や搾取の対象となる危険性が高まります。子どもたちが一日もはやく日常を取り戻せるよう、遊びや学習を取り入れることで、子どもたちが抱えるストレスを軽減させ、自尊心を育み、自分を守れるようになることも視野に入れて活動します。また、保護者も含めた子どもの保護への理解を深める場としても重要です。
道山 恵美(みちやま めぐみ) プラン・インターナショナル プログラム部
1999年大学卒業後、商工会議所と高校(商業科)での勤務を経てNGOの世界に。ボランティア、インターン時代を合わせると国際協力NPO/NGOでの活動歴は14年。うち3年はケニア駐在。複数のNGO勤務を経て2013年3月からプラン・インターナショナル勤務。現在はジェンダーや教育などの開発事業に参加する一方、水害などの自然災害や南スーダン難民支援などの人道支援などにも携わる。