新春座談会 初の女性会長誕生 ー地域からの新しい風ー

「初の女性会長」誕生の意義とは。
地方連合会初の女性会長となった連合奈良の西田一美会長、連合宮崎の中川育江会長。「初」の意義をどう受け止め、地域でどんな運動をめざすのか。その思いに迫るべく、座談会を企画した。
地方連合会初の女性会長となった連合奈良の西田一美会長、連合宮崎の中川育江会長。「初」の意義をどう受け止め、地域でどんな運動をめざすのか。その思いに迫るべく、座談会を企画した。
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今期、地方連合会で初となる女性会長が相次いで誕生した。連合奈良の西田一美会長、連合宮崎の中川育江会長だ。地元メディアは「連合の新時代を拓く」存在として大きく取り上げ、連日その動向を追いかけている模様。当の両会長は、「初」の意義をどう受け止め、地域でどんな運動をめざすのか。同じく今期就任の相原康伸事務局長を交え、井上久美枝総合男女・雇用平等局長の進行で座談会を企画した。

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左から西田一美 連合奈良会長、相原康伸 連合事務局長、

中川育江 連合宮崎会長、井上久美枝 連合総合男女・雇用平等局長

労働運動との出会いと原点

井上 地方連合会初の女性会長誕生はメディアでも大きく取り上げられました。まず、お二人の労働運動との出会いから今日に至るまでのご経験をお聞かせください。

西田 原点は単組での取り組みです。1981年に奈良県の室生村役場に入り、村職の組合員になりました。男女雇用機会均等法ができる前で、「お茶汲み」は女性の仕事だったし、配置や昇進では男性が優先される時代でした。1986年に1人目の子どもが生まれたんですが、当時は育児休暇がなくて、出産で仕事を辞めざるを得ない女性が多かったんです。でも、私は働き続けたいと育児休暇を求める交渉を組合が行い、わずかですが産休にプラスして休みを取ることができた。女性が働きやすい職場にしていくことは自分だけの問題じゃない、後輩にはこんな思いをさせたくないと、積極的に組合活動に参加するようになったんです。女性の声を聞こうと「意見箱」を設置したり、女性向けに機関紙を作って全員に配布したり...。そういう現場での活動が、大きな糧となっています。

中川 宮崎県延岡市の出身で、1977年に延岡学園高校から旭化成に入社しました。旭化成では、実業団旭化成旭陽会ソフトボールチームに5年間所属しました。労働組合との出会いは1992年、「旭化成長浜労働組合専従書記」になりました。「連合」を初めて知ったのは、女性委員会です。1993年に連合宮崎女性委員会に、副委員長として参画しました。当時は、男女雇用機会均等法の改正が検討されていた頃で、女性の深夜業の規制撤廃をどう考えるのかなど熱心に話し合いました。産業も職種も違う女性のみなさんと出会い、活動をともにすることで、貴重な経験をすることができました。連合宮崎女性委員会が、私の連合運動の原点です。

—働く仲間の生活を守りたい

井上 強く印象に残っている出来事はありますか。

西田 単組の委員長をしていた時、市町村合併に伴い現業職の賃金引き下げを提案されました。1月1日の合併を前に大晦日まで交渉を続けましたが打開できず、改悪された制度がスタートしてしまった。私は仲間の生活を守りきれなかったことが悔しくて泣きました。今でも、苦しい時、つらい時に思い浮かぶのは、職場で一緒に活動した女性たちなんです。なかなか会えないのですが、時々ホッとするメールをくれて心の支えです。

中川 連合宮崎副事務局長就任翌年の2003年4月、宮崎地方最低賃金審議会委員になりました。当時の宮崎県最低賃金は、全国最下位の605円。最低賃金は、未組織で働くパートの方々の時給に直結します。地方ではその影響はとても大きい。1円でも引き上げたいと深夜まで交渉を続けましたが、結果は「0円」。働く人たちの切実な期待に応えられなかった申し訳なさ、経営側が主張する県内の厳しい経済状況等の交渉結果を事務局長に報告中、涙があふれてきました。

「初の女性会長」誕生の意義

井上 相原事務局長は、「男女平等のフラッグ(旗)を高く掲げていく」と表明されています。初の女性会長誕生をどう受け止めていますか。

相原 今、お話を聞いて、お二人とも、なるべくしてなられたのだとあらためて思いました。そのひたむきに努力を重ねる姿に感銘を受け、啓発された方たちがたくさんいた。そうした人と人とのつながりを大切にし、それを糧に労働の尊厳や労働組合の存在意義を強く認識させる確かな運動につなげてきた。そんなお二人の存在は私にとっても非常に心強い。

 今回、女性会長誕生は大きなニュースになりましたが、めざすべきはそれがニュースにならない社会だと思うんですね。つまり職場でも、労働組合でも、女性がどんなポジションに就いてもあたりまえであり、女性の社会的地位が確立されている社会です。

 ところで、会長の仕事にはもう慣れましたか。

—連合をアピールするチャンス

中川 会長就任直後は、挨拶や取材の依頼が続きました。連合の存在を知ってもらえるチャンスなのでありがたく受けています。先日、労働相談のために事務所を訪ねてきた女性たちから、「テレビで観ました」と声をかけられました。連合宮崎は、専従役員、職員、労働相談アドバイザー全員が同じ事務所で活動しています。私は声が大きいので、すぐわかると思います(笑)。

西田 同じく、連日挨拶ですね。メディアには女性記者が増えていて、特に地元メディアは、追いかけて取り上げてくれる。私自身、「女性会長ってこんなに珍しい存在だったの」と驚いたんですが、連合をアピールするために、これを利用しない手はないと...。

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紙面掲載

会長就任にあたっての抱負

井上 会長に就任されての抱負は?

中川 連合宮崎で副事務局長を11年、事務局長を4年務めて会長に就任しました。専従役員として、15年間積み重ねてきた運動を大切にして一歩一歩進んでいきたいと思っています。会長に就任した時、歴代の会長から「働く人たちに常に寄り添える連合であってほしい」との激励メッセージをいただきました。働き方改革が社会的に大きな課題にある中で、すべての働く人たちの連合への期待は大きいと感じています。その思いを活動に活かしていきたいと思います。

西田 私は会長就任の挨拶で「機敏で、柔軟で、魅力ある連合奈良の運動をつくりたい」と申し上げました。社会で起きたことに対する連合の反応や行動がスピード感に欠けると感じてきたからです。社会の動きは目まぐるしい。何か事が起きた時、中央の情報をいち早くキャッチして、間髪入れず組合員や地域の人たちに「連合はこう考えている」という見解を示していくことが重要だと思うんです。もちろん組織として即断が難しい問題もありますが、機敏に反応することで、柔軟で魅力ある運動をつくっていきたいと思います。

井上 相原事務局長はいかがですか。

相原 連合は来期結成30周年を迎えます。まさに伸び盛りの時期に連合事務局長という任に就く機会を得たので、自分のカラーをしっかり出していきたい。連合の良さは、カッコ良く言えば、「多様性」なんです。官民を問わず、産業の枠を越えて、多様な発想や考え方に触れることができる。私は、30歳の時に単組の専従になって以来、27年間労働運動に携わってきましたが、連合事務局長という立場になってみて、これまでに自分が接することができた職場の一人ひとりは、日本で働く多くの仲間のほんの一場面なのだと再認識しています。連合のステージの大きさ、深さを体感するために、今は、何事にも興味を持って、いかなる立場の人ともオープンマインドで接していくことを自分に課しています。連合に来たのだから「この多様性の力を活かさない手はない」と...。

地方連合会における運動と課題

井上 地方連合会では非常に幅広い活動を行っていますが、課題は?

西田 地域における連合の影響力は大きいと実感しています。自治労では、首長とは労使の関係でしたが、連合では、首長や議員、経営者の方たちとも、地域の課題について率直に話し合えますし、民間労組の発想や考え方にも学ぶところがあって刺激的です。

 連合奈良では、環境、自然保護、平和、人権など、全県的な課題に取り組んでいますが、県内の4つの地協も、経験豊富なO‌Bの事務局長を中心に活発に活動しています。女性のネットワークづくりにも取り組んでいます。生活者という視点からも女性を運動に巻き込んでいける工夫ができればと思っています。

中川 「地域活動」「若者雇用創出」も大きな課題です。連合宮崎は、現在4地協5地区会議体制で、「地域に根ざした顔の見える運動」を推進し、工夫を凝らし、地域の実情に応じた活動を展開しています。また、2017年10月より、宮崎大学で、「労働・雇用リテラシー講座〜人間らしくはたらくこととワークルール〜連合宮崎寄付講座」を開設し、学校現場の労働法等の普及に取り組んでいます。宮崎県は、高卒者の就職率が最下位ランクで、東京や福岡に就職する若者が多く、離職率も高い。若年者の雇用創出、労働条件の向上等を、県に対しての政策制度要求や、春闘キャラバンで県内すべての自治体、経営団体に毎年要請をしています。

—女性委員会が出会いの場に

井上 次世代の女性リーダー育成については?

中川 地方連合会の女性委員会や青年委員会は、単組の組合役員や組合員が連合に出会うファーストステージであり、人財育成にも重要な役割を果たしています。各地協に女性・青年委員会を設置して、いろいろな行事を企画し、活動の輪を広げています。地域に集まって話し合える場があることは大変重要です。地協の存在意義もそこにある。自分たちが経験したことが大きな財産となり、育っていくと思います。役員を担うリーダーの方々には、出身組織・単組にあたたかな理解をしていただくことが大事です。常日頃からの、構成組織との連携を大切にしています。

西田 一昨年「女性の未来塾」を開講しました。テーマは「伝え方」だったのですが、講師が驚くほど、参加者のレベルが高い。力量のある女性がこんなにたくさんいるのだから、どう活かしていくのか、もっと考えないといけないと思いました。

 もう一つ大事なのは、女性リーダーを「特別な存在」にしないこと。ポジションが上がると、どうしても現場と距離が生じてしまう。「特別な存在」だと思われると、その距離が広がる。これからも現場の声を聞くことを心がけていきたいと思っています。

井上 リーダーシップのカギは何だと思われますか?

中川 「チームワーク」だと思っています。組合の合は「愛」。みなさんとともに、情報と認識を共有し、めぐりあい、支えあい、助けあい、話しあいを大事に、一つひとつの運動を進めたいと思います。

西田 私が責任を持つことを伝えた上で、「任せる」ことがリーダーシップのカギ。女性も男性も、任せると、自ら動いてその能力を発揮してくれます。

—一緒に新しい扉を開こう

井上 これからの連合運動については?

中川 一人ひとりと丁寧に向き合いながら、「連合があって良かった」と思ってもらえる運動を進めたいと思います。一人でも多くの仲間を増やしていきたいですね。

西田 東京と地方の温度差を調和させるような関係性を築いていければと思います。女性会長誕生を取り上げた地元紙の記事は「連合が今、新時代を迎えようとしている」と締めくくってくれました。その期待に応えられる運動をともに進めていきたいと思います。

相原 一つひとつの言葉が刺激的で啓発されました。「女性と男性」「東京と地方」「産業と地域」「トップと現場」。それぞれは対立するものではなく、互いにクロスするところにエネルギーが生まれる。そして、それをクロスさせることができるのが、連合の最大の強みです。一緒に新しい扉を開いていきましょう!

井上 ありがとうございました。

連合男女平等推進委員会からのメッセージ!

 ー女性参画は次のステップへー

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(左)芳野友子 連合男女平等推進委員会委員長、連合副会長

(右)大北隆典 連合男女平等推進委員会副委員長、生保労連委員長

国際労働運動の世界では、女性参画率30%は最低基準で、今は組織トップの女性を増やそうという次のステップに入っています。そういう中で、今期、2つの地方連合会で女性が会長に就任したことを非常にうれしく思いますが、お二人はトップになると思っていました。これを女性全体の底上げにつなげ、次に続く女性たちが途切れることがないようにしなければいけません。これを機に連合第4次男女平等参画推進計画への取り組みを強化し、職場や地域における女性の人材発掘・育成、男女の役割を固定化する社会的規範の払拭を着実に進めていきたいと思います。

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