BLOG
2018年05月21日 12時23分 JST | 更新 2018年05月21日 12時23分 JST

裁判員制度「市民からの提言2018」<提言⑤>裁判員候補者であることの公表禁止を見直すこと

「市民からの提言」は、裁判員制度の現場を見た市民からの提案です。

裁判員制度は5月21日でスタートから丸9年となり、制度開始10年目を迎えます。裁判員ネットでは、これまでに345人の市民モニターとともに650件の裁判員裁判モニタリングや裁判員経験者からのヒアリングを実施し、裁判員裁判の現場の声を集める活動を行ってきました。この「市民からの提言」は、裁判員制度の現場を見た市民からの提案です。裁判制度の現状と課題を整理し、具体的に変えるべきと考える点をまとめました。今回は提言⑤を紹介します。

<提言⑤>

裁判員候補者であることの公表禁止を見直すこと

1 現状と課題

(1)裁判員候補者であることの公表禁止

裁判員法は、裁判員候補者が、自らが候補者であることを公にすることを禁じています(裁判員法101条1項前段 以下「公表禁止規定」といいます。)。これは、裁判員候補者のプライバシーや生活の平穏を保護するための規定です 。

Getty

(2)公表禁止規定の弊害とこれを見直すことの利点

裁判員法が禁じるのは、インターネット上のホームページ、ブログ及びSNS等で公表するなど裁判員候補者であることを不特定多数の人が知ることのできる状態にすることとされています。一方、休暇を取ったり、相談をしたりするために会社の上司や同僚、家族に話をし、書類を見せることは問題ないとされます。

しかし、裁判員候補者にとって、その線引きは容易ではありません。たとえば、友人に対して話して良いかどうかわからず、裁判員候補者であることを話せないと思い、裁判員裁判について話すこと自体を躊躇してしまう人もいます。公表禁止規定には、裁判員候補者を萎縮させ、裁判員制度から遠ざけるという深刻な弊害があるのです。

Getty

他方、公表禁止規定を見直せば、自分が候補者となったことを周囲に伝えることができ、裁判員裁判について知る機会が増えることが期待できます。また、裁判員経験者と裁判員候補者、あるいは裁判員候補者同士が交流することが行いやすくなります。このような交流を通じて裁判員裁判について理解を深めることができるようになるはずです。

Getty

2 具体的な提案

裁判所から具体的な日時が指定された呼出状を受け取るまでは、裁判員候補者が実際に担当する事件は特定されません。また、裁判員候補者の数は、年間約20万人から30万人です。そのため、呼出状を受け取る前であれば、裁判員候補者になったことが分かっただけで、不当な働きかけがなされる恐れは殆どありません。実際に、制度開始からこれまでの間に266万4以上の人が裁判員候補者になっていますが 、不当な働きかけがなされた事例は報告されていません。

そうだとすれば、呼出状を受け取るまでに、裁判員候補者であることを公表しても、裁判員候補者のプライバシーや生活の平穏を保護するという公表禁止規定の趣旨には反しないはずです。

そこで、裁判所から具体的な日時が指定された呼び出し状を受け取るまでは、本人の同意があれば裁判員候補者であることを公表してもよいと規定を改めることを提案します。

裁判員制度「市民からの提言2018」

1.市民の司法リテラシーの向上に関する提言

<提言①>無罪推定の原則、黙秘権の保障などの刑事裁判の理念を理解できるような法教育を行うこと

<提言②>無罪推定の原則、黙秘権の保障などの刑事裁判の理念を遵守するように、公開の法廷で、説示を行うこと

2.裁判所の情報提供に関する提言

<提言③>裁判員裁判及びその控訴審・上告審の実施日程を各地方裁判所の窓口及びインターネットで公表すること

<提言④>裁判員だけではなく、裁判員裁判を担当した裁判官も判決後の記者会見を行うこと

3.裁判員候補者に関する提言

<提言⑤>裁判員候補者であることの公表禁止を見直すこと

<提言⑥>裁判員候補者名簿掲載通知・呼出状の中に、裁判を傍聴できる旨を案内し、問い合わせ窓口を各地方裁判所に用意すること

<提言⑦>裁判員候補者のうち希望する人に「裁判員事前ガイダンス」を実施すること

<提言⑧>思想良心による辞退事由を明記して代替義務を設けること

4.裁判員・裁判員経験者に関する提言

<提言⑨>予備時間を設けることで審理日程を柔軟にして、訴訟進行においても裁判員の意見を反映させる余地をつくること

<提言⑩>裁判員の心のケアのために裁判員裁判を実施する各裁判所に臨床心理士等を配置すること

<提言⑪>守秘義務を緩和すること

5.裁判員制度をより公正なものにするための提言

<提言⑫>裁判員裁判の通訳に関して、資格制度を設けて一定の質を確保するとともに、複数の通訳が担当することで通訳の正確性を担保すること

<提言⑬>裁判員裁判の控訴審にも市民参加する「控訴審裁判員」の仕組みを導入すること

<提言⑭>市民の視点から裁判員制度を継続的に検証する組織を設置し、制度見直しを3年毎に行うこと