市民の視点から裁判員制度を見直す

10年目を迎える裁判員制度は、法曹三者だけではなく、市民の視点をどのように制度に反映するのかが問われているのです。
paylessimages via Getty Images

1 裁判員法の改正(2015年)

2009年に始まった裁判員制度が改正されていたことをご存じでしょうか?裁判員法は附則で施行3年後に見直しを検討するよう規定していました。政府は2014年10月に改正案を提出し、2015年6月5日、見直しを受けた改正裁判員法が国会で可決、成立しました。改正裁判員法は2015年12月12日に施行されました。

2015年の改正では、①裁判員裁判の対象事件について「審理期間が著しく長期で、裁判員の確保が困難と裁判所が認めるとき」に除外可能となる理由が加えられました。ただし除外の基準となる審理日数などは定められておらず、裁判員の負担を考えて事件ごとに判断するとされています。

また、②性犯罪の裁判員選任手続で被害者のプライバシーに配慮する規定を新設するとともに、③東日本大震災のような大規模災害の被災者は裁判員候補から外せるようにすると裁判員法に明記されることになりました。

これらに加えて、重要な改正点として、④2015年改正から3年後に再び制度の見直しを検討することが盛り込まれました。これは政府が提出した改正案にはなかったもので、衆議院法務委員会で新たな見直し規定を盛り込む修正案が可決されたことにより加えられたものです。

<2015年改正のポイント>

①著しく長期の裁判を裁判員裁判の対象から除外可能

②性犯罪の裁判員選任手続で被害者のプライバシーを配慮

③大規模な災害の被災者を裁判員候補から除外

④改正から3年経過後(2018年12月)から再度の見直し検討

2 守秘義務のあり方などは改正から3年経過後に検討

衆議院法務委員会では、「本法の附則に基づく3年経過後の検討の場を設けるに当たっては、国民の視点からの見直しの議論が行われるよう、裁判員経験者、犯罪被害者等の意見が反映されることとなるように、十分に配慮すること」、「本法の附則に基づく3年経過後の検討に当たっては、死刑事件についての裁判員制度の在り方、性犯罪についての対象事件からの除外などの犯罪被害者等の保護の在り方、否認事件への裁判員参加の在り方、裁判員等の守秘義務の在り方等、当委員会において議論となった個別の論点については、引き続き裁判員制度の運用を注視し、十分な検討を行うこと」との附帯決議が可決され、上川法務大臣(当時)が「附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます」と答弁しました (※1)。

3 今年は市民の視点から裁判員制度を見直す年

今年は、改正裁判員法が施行されてから3年後にあたります。裁判員ネットでは、守秘義務の緩和や裁判員の心理的負担への対策などをまとめた『市民からの提言』の最新版を発表します(※2)。これまで8万人を超える市民が裁判員制度に参加しています。多様な立場から制度のあり方について議論が進むことが望まれます。裁判員制度は、開始から5月21日で丸9年となります。10年目を迎える裁判員制度は、法曹三者だけではなく、市民の視点をどのように制度に反映するのかが問われているのです。

注目記事