狩りガールブームにおもうこと。

最近、狩猟の話をちょこっとすると「え、狩りガールなんですか!?バーンとか?撃てるの!?」と、言われることが多くなってきた。狩猟ブームにのっかって狩猟免許を取得したとしても、東京都民のわたしたちには大きな壁が立ちはだかっているのです。

わたしにとっての、二度目の猟期がやってきた。

最近、狩猟の話をちょこっとすると「え、狩りガールなんですか!?バーンとか?撃てるの!?」と、言われることが多くなってきた。

「おー!狩りガールめっちゃ浸透してますよ!石崎さんすげーい!」と、石崎さんには敬意を払いつつ、実はとっても複雑なきもち。

狩猟=銃になりがちだけど、狩猟免許には大きくわけて『銃』『網』『罠』と3種類(ちゃんと分けると銃も火薬を使うかどうかで2つに分類されるので計4種類)あって、わたしは『罠』と『網』の免許しか持っていないのです。

そして、銃の狩猟免許を持っていたとしても、銃の所持許可を取るためにはそれはそれは気が遠くなるような複雑で面倒な手続きが待っていて、所持許可がおりるには1年かかることも少なくありません。

しかも、家族や上司や隣人に警察から電話がいったり、家の様子を見に来られたり報告させられたり...山登りを始めるように簡単にはいかないのです。

しかし、ラッキーなことに狩猟免許をとること自体はそんなに難しいことではありません。

車の免許みたいな...筆記と実技のテストをふつうにこなせば、誰でもそれなりに取得できます。ただ、狩猟ブームにのっかって狩猟免許を取得したとしても、東京都民のわたしたちには大きな壁が立ちはだかっているのです。

それは、猟場問題。

どのタイプの狩猟免許を取得したにしろ、猟場がなければもちろん狩るどころかアクションすら起こせないのです。

わたしは、狩猟免許をとった1年前の冬、狩猟をするには「体力」「仲間」「猟場」この3つが欠かせないことを学びました。

そして、逆に言えば、その3つさえ揃っていれば、東京都在住のわたしでも猟ができるかもしれないと、ときめきもしました。

そこで、はず最初に始めたのはハンターをハントすること。そう、「仲間」を見つけることです。

銃猟の方法にはいくつか種類がありますが、山が多い本州でポピュラーなのは「巻狩り」とい方法。

獲物の寝床(前日や当日の朝に山を見回りして、獣道や足跡などをたよりに獲物が山のどのあたりにいるかをチェックしておきます!)を囲むように射手を配置...射手はひたすら待つ。

勢子と犬が獲物を追い、寝床の外側(射手の方)まで獲物を逃げさせて、射手が仕留める...という方法です!

ある日の巻狩りフォーメーション in 檜原村

青 射手がいるポイント

緑 猟犬を離すポイント

赤 基地・集合ポイント

※ 点線はわたしが移動した道筋

つまり、巻狩りにはチームプレーがとっても大切で、山の地形や獲物の習性などを理解していないと、なにもできないどころかただの邪魔者になります。(ちなみにわたしはまだ邪魔者のレベル...だって地形を意識しながら山を歩くだけで一苦労なんだってば。)

ハンターをハントすべく、友人の知り合い、知り合いの親戚、知り合いの知り合いの知り合い...なんて風に、新潟・山梨・長野・奥多摩...たくさんの猟師さんに出会うことに成功しました。

しかし、猟師さんの中には「女を山に連れていくもんではない。」と言う方もいます。

最初はわたしも「狩猟は男の世界だ!」っと言われているようでショックでしたが、よくよく聞いてみるとそれだけではないようで...

1)ノーメイクノーシャンプー!

シャンプーや化粧の匂いは獲物を逃がすどころか、猟犬の鼻を効かなくさせてしまうことも。

果敢で頼もしく賢い猟犬は、猟にはなくてはならない存在...だからこそ、シビアにもなってしまうのです。

2)ハードワイルドデンジャラス!

崖のような急斜面を歩くのは、ベテラン猟師さんでもとっても気を遣います。

そんな山道を、重い荷物を持って、獲物に注意しながら、仲間や猟犬と連携をとりつつ「静かに」移動しなければなりません。

ナイフや銃を扱うことはもちろん、身の危険を感じた獲物はとても危険で、猟犬に怪我を負わすことも少なくないのです。

しかも、獲物が獲れたらとれたで、60〜100キロ以上もある獲物を山から下ろさなければならないのです。

狩猟の楽しさを知っているベテラン猟師さんは、山や野生動物の怖さも知り尽くしているのです。そのことを知ってから「山に女なんて連れていけるか!」っという言葉も「あんな危険な場所に女の子なんか連れていけないよ!なにかあったらどうするんだ!」と、優しい言葉に聞こえるようになりました。

そこで、わたしには山に入る上で決めていることがあります。

1)化粧をせず、お風呂(特にシャンプー)は8時間前に済ませる。

2)初心者は初心者らしく行動し、勝手な行動はゼッタイにしない!

3)「重たい」「疲れた」など弱音は禁句!どんなときも笑顔を絶やさず、真摯に行動する。

4)しかし女は女...できないことは「できない」とハッキリ伝えて助けを求める。

それと、もうひとつ。イチバン大切なこと。

★)どんなことが楽しくて、どんな風にワクワクしたかをキチンと伝えて、感謝する。

50〜75歳ほどのベテラン猟師さんたちにとって、狩猟はもはや日常。

そんな日常にひょっこり飛び込んできた都会育ちの小娘(しかも変わり者)が考えてることなんて、まったくの未知だと思うから。未知こそが不安のはじまりだから。

だから、「こんなことしてみたい!」「あんなモノ食べたい!」「おいしい!」「たのしい!」ってシッカリすぎるくらい伝える。そして、わたしなりの表現でいいから、ちゃんと感謝する。

感謝は「ありがとう」の言葉だけじゃ足りなくて、「お中元」になったり「絵ハガキ」になったりする。

お中元には「冬はありがとう!夏だけど、みんなのことちゃんと覚えてるよー!次の冬もよろしくねー!」って想いがつまってる。絵はがきには「感想」をカタチにする大切な役目がある。

そうやってイロイロしながらここまできたけど、ベテラン猟師さんから言わせれば、まだまだ「体験入学」レベル...「狩りをする」という表現すら身の丈に合っていない気がするし、「狩りガール」なんてキャッチーさともほど遠い。

だって、息をのむような残酷な場面に遭遇したり、崖から滑り落ちて内心死ぬかと思ったり、持ち帰った狩猟肉に家族から批判を浴びたり...都心実家暮らしのハンター見習いには山あり谷ありなのです。

最近の狩猟ブーム。

火付け役の方にお世話になって今のわたしがある。

猟師さんの高齢化を目の当たりにして、この素晴らしい文化や情熱を絶やさないために、若いヒトにもっと参入してほしいって気持ちが今まで以上に強くなってきた。

有害鳥獣駆除のことを考えても、若者の参加はやっぱり必要不可欠だとおもう。

だけどね、たくさんのヒトの理解と、動物の命をいただくことで成り立っている文化なんだってこと、忘れないでほしい。

わたしが仲間に入れてもらってる桧原村の猟師さんたちは、どんな険しい山の谷底に獲物が落ちようと、何時間もかけて山から引きずり出して、何時間もかけて解体して、肉はもちろん内臓まできれいに処理をして、食べる。

獲物の心臓の先はほんの少し切り取って、十字に切り込みを入れて木の枝に刺し、山の神様にお供えする。

毎回行われる宴(獲れなかったときは反省会)では、神棚に日本酒をお供えして、解散のときにはそのお酒を「お下がり」としてみんなで一口ずつ口をつけて、感謝と供養をする。

わたしがまだ銃の免許取得に踏み切っていないのは、都心に住んでいるからこそ慎重にならなければならない一線があると思っているから。

見知らぬ小娘が銃を持って山をウロウロすることに、里山のひとたちはどう思うだろう?

まずは、猟場での信頼関係を気付くこと。山や野生動物を知ること。自然の厳しさに慣れること。

これが、わたしにとって必要なステップ。

檜原村の猟師さんたちは、「若い猟師がひとりでも増えれば...」それだけの想いで、よそ者のわたしたちを日常的に暖かく迎えてくれる。

そんな猟友会、わたしは今まで見たことがなかったし、きっと少ない。

だからこそ、そんなご厚意をムダにしないためにも、きちんと理解してほしい。

マナーや決まり、自然の厳しさを理解した上で狩猟をはじめてほしい。

猟師を増やすために奮闘してるひとたちがいる。

だからわたしは、「狩猟」「狩猟肉」を正しく理解してもらうための何かをしていきたいです。

2014.1.13 イノシシ ♂

猟期が終わったら、狩猟肉をつかったスペシャルパーティーがしたい。

部位によっていろんな調理法を試して、大好きなワインも料理に合わせてチョイスして、集まった友人に今期の学びをシェアする場をもうけたい。

(2014年1月22日「夢 中 毒」より転載)

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